2000年4月1日発売
ただ、寄り添っているだけで家族でいられたらー夫の不在、子どもたちだけとの日々が、次第に「私」を不安定にさせていく。主婦としての平穏な暮らしの中でふと抱く漠とした孤独。現代家族の危うさともろさを浮かび上がらせた、著者のデビュー作。他4篇を収録。
デザイナーの卵・アマンダはあるとき母親から、出生時に産院で別の赤ん坊と間違えられたことがあると、聞かされる。見ず知らずの「間違えられた」相手に惹かれた彼女は、それが著名な画家ギャリスンの息子ソーンだと知る。「もしや私の本当の父親は…」ロマンチックな興味からギャスリン家を訪ねた彼女は、彼の莫大な財産をめぐる巧妙な殺人計画に気づくが、殺人者の魔手は彼女に伸びてきた!サスペンスの女王渾身の傑作。
登場いたしますは、せめて十年早く入門してりゃ…の遅れてきた落語家たち。対立候補を同時に応援させられる破目ンなるわ、お客求めてアフリカ遠征までするわ、アイドル歌手への道はきっぱりと捨てるわ、あげくにキテレツな女と運命的に遭遇しちまうわ。時流がわからネェ絶対に売れネェ、要するに談四楼の分身みたいな連中の、落後しそうに不器用な日日を、情熱的な軽妙さで語る。
女は毎日、まだみずみずしい花束を捨てていたー古典的探偵小説を連想させる殺人現場と、緻密な計画が意表を突く「花を捨てる女」、家出から戻った妻が別人だと親友が通報する「アイデンティティ」、次々と現れる遺言書に状況が翻る「三通の遺言」など、絶望に迷路から女たちが仕掛ける、繊細で大胆な殺人事件の数々。愛に迷う女たちの心のひだを鮮やかに編んだ推理短編集。
ニック・ビレーンは、飲んだくれで、競馬が趣味の超ダメ探偵。ところが、そんな彼に仕事が二つ転がり込む。ひとつは死んだはずの作家セリーヌをハリウッドで見かけたから調べてくれという“死の貴婦人”の依頼、もうひとつは“赤い雀”を探してくれという知人の依頼。突然の仕事に大張り切のビレーンは、早速調査にのり出すのだが…。元祖アウトロー作家の遺作ハードボイルド長編。
論理的で現実派の歴史学者マイクは、教え子である感覚的な妻ギャリーと、ロンドン郊外の田舎にマイホームを捜していた。数百年前の廃屋に惹かれたギャリーは、修繕改築費を心配する夫を説きふせ、この館を手に入れた。ふたりの前に突然現れた老人ファーニー。ある日老人はギャリーに、この館の秘密と1300年前から自分たちが夫婦であることを告げ、奇妙な愛の年代記を語り始めた…。
かつて青春にいたひとに、そしていま若いひとに贈る-。1960年代初期。彷徨い、漂よう青春の日々を清潔な文体で描いた小説。1970年代から90年代終末。乾きゆく都市の片隅を、流れ、追い、時を捉えた感傷と知性の写真。危うく、揺れる「青春の甘い鳥」の物語。