2001年2月1日発売
ベロニカはすべてを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、愛情溢れる家族。でも、彼女は幸せではなかった。何かが欠けていた。1997年11月11日の朝、ベロニカは死ぬことに決め、睡眠薬を大量に飲んだ。だが、しばらくすると目が覚めてしまった。そこは精神病院の中で、彼女はまだ生きていた。そして医者は彼女に、心臓が弱っているので、あと数日の命だろう、と告げたー。
幕が上がった。スポットライトが私だけに注がれる。躰じゅうの細胞がにわかに蠢き出す…その日暮らしでおひねり命のドサ・シンガー、それが私。まっとうには生きられないけど、命がけでぶらぶらしてる。ときたま甘い夢も見たくなるけど、このデコボコ道も悪くないー歌に魅入られ、骨の髄まで俗に浸った食いつめ者の煌めき。ワイルドでキュート、そして最高にイノセントな小説誕生。
東洋の富の一大拠点・香港。その返還を前に、永い眠りから覚醒するかのように突如浮上した、返還に関する謎の密約。いつ、誰が締結し、誰を利するものなのかー。全焼したロンドンのスタジオから忽然と消えた機密文書をめぐる英・中・米・日の熾烈な争奪戦が、世紀末の北京でついにクライマックスを迎えるとき、いにしえの密約文書は果たして誰の手に落ち、何を開示するのか。
秋田杉の樹海から白骨死体で発見された男女。道ならぬ恋に落ちた二人の無理心中なのか。女の妹・直里と男の友人・勲は、その謎を探るうちに杉の建材をめぐる不審な動きを知る。同じ頃東京では新築マンションの入居者に杉花粉症に似た症状が現れ、マンションの床材の杉が原因だと判明する。秋田から運び出されたその杉材に隠された秘密とは。直里と勲が直面する驚愕の真実ー。
外資系食品会社の教育研修部長とシグニフィカント・アザー(SO)関係を持つ、アメリカ留学体験のある専門学校講師。この二人の男女を中心に、セックスレスを男女関係のひとつの理想像として提示。男は果たして女に対して本当に「重要な他人」となれるのか?リアルタイムに描かれる都会の男女群像が、二十一世紀の新しい人間関係を示唆する。