2001年5月10日発売
生まれ育った生家へ子どもの頃のままで帰りたいー戦時中、家の下に穴を掘り続けた退役軍人の父が、その後も無器用に居据っていたあの生家へ。世間になじめず、生きていることさえ恥ずかしく思う屈託した男が、生家に呪縛されながら居場所を求めて放浪した青春の日々を、シュールレアリスム的な夢のイメージを交えながら回想する連作11篇。
「蕭々館」で夜ごとくりひろげられる、最後の「高等遊民」たちの幸福なひととき。芥川龍之介、菊池寛、小島政二郎-「大正」という時代に、青春を共にした三人の作家を描きながら、立ち去ろうとする一つの時代への思いを綴る傑作長篇。
伝奇ホラー作家、朝松健を襲った奇怪な災厄。失踪した編集者、那須蔵人の手記が、忌まわしい世界への扉を開く。突然目の前に現われ、不可解な警告を発する黒衣の男たち。その正体は?その目的は?著者自らが封印した暗黒の書が、大幅な加筆と、牧野修の解説を得て、13年ぶりに闇底からよみがえる。
父を知らず、調教師の祖父に育てられ、新人騎手として修業を積む高志。馬の故障を次々と癒し、周囲を驚かせる正体不明の厩務員の過去に、彼は疑惑を抱くが…。競馬、競輪、競艇、オートレース。ファンの夢と期待を背に一瞬の勝負に挑むプロフェッショナルたち。彼らの潔くも厳しい世界を圧倒的な迫力で描く物語。
邦銀ニューヨーク支店の花形ディーラーが高層ホテルから身を投げた。その死の直前「N.U.H.」というメッセージを受け取った旧友、芹沢は、真相を探るうち、ウォール街で辣腕を振るうトップセールスウーマン、州波に出会う。「あんな銀行なんかつぶれればいい」。彼女は邦銀に深い恨みを抱いていた。日本金融界の闇を抉る問題作。
山一証券の自主廃業など相次ぐ金融破綻に、効果的な経済政策を打ち出せない政府、プライドだけの大蔵官僚、不良債権隠しに走る銀行。恋人の死の真相に迫るべく奔走する州波は、そのキャリアと私財の全てをなげうって、芹沢とともに驚くべき秘策を実行する。すべての金融マンに捧げる著者渾身のミステリー。