2002年12月31日発売
ハリウッドの丘陵地帯の奥深くで、人骨らしき遺物が発見される。一匹の犬がそれを咥えてきた時、隠されていた事件が明らかになった。警察の鑑定の結果、その骨は十二歳くらいの少年のもので、死亡時期は二十年近く前、死因は鈍器による頭部への殴打であることがわかった。ハリウッド署の刑事ハリー・ボッシュは、殺人事件として捜査にあたるが、手がかりは乏しく、捜査は遅々として進まない。だが、まもなく現場付近に住む逮捕歴のある小児性愛者の男が捜査線上に浮かび上がる。ボッシュは取り調べにあたるが、男の前歴が外部に漏れ、容疑者としてテレビ報道されてしまう。男は無実を訴え、不当な取り調べを糾弾する遺書を残し、自殺してしまった。有力容疑者の死亡という最悪の事態に、警察内部にはボッシュを早期に解雇せよとの不穏な空気が流れ始め、彼は窮地に立たされた。そんな時、ある女性から骨について新しい情報が入るが…。哀しき運命に翻弄された骨のため、ボッシュは刑事生命を賭けて事件の真相に迫る。汚れた“天使の街”で独り正義を貫く、刑事ハリー・ボッシュの生きざまを描いた、シリーズ最新作。
恋人のノンフィクション作家モレルのアフガン行きが決まり、憂鬱な日々を送るわたしのもとに、黒人労働者のサマーズから保険金詐欺の調査依頼がきた。また同じ頃、シカゴではホロコーストについて話し合う会議が開催されていたが、そこでスピーチをしたラドブーカという男性の名前を聞いて、親友の女医ロティが失神してしまう。彼女の過去と関わりがあるらしいのだが、何を訊いてもいっこうに答えてくれない。彼女を助けたい一心でわたしはラドブーカを調べはじめるが、その直後、まるで調査を妨害するようにわたしを中傷するビラが街頭でばらまかれた。さらにサマーズの保険を扱った代理店の店主が殺され、ロティが忽然と姿を消す。わたしは二つの事件の意外な結びつきに気づくが、そのせいで身近な人間を危険に晒すことに。事件は混迷を極め、真相を追うわたしの前に事件に関わる人々の苦く哀しい過去が浮かび上がる。過去の亡霊に悩む親友のために奔走するV・Iの友情が深い感動を呼ぶ大作。英国推理作家協会賞ダイヤモンド・ダガー賞(巨匠賞)に輝く著者が贈る、女性探偵V・I・ウォーショースキー・シリーズ第10弾。
ゴンクール賞を受賞し、一大ベストセラーとなった波瀾万丈の歴史冒険ロマン。ルネッサンス期の16世紀中葉。孤児の兄妹、ジュストとコロンブを乗せた3艘の船が、新世界ブラジルをめざしてフランスの港を後にした。兄妹はインディアンとの通訳になるべく乗船させられていた。船団の隊長は、歴戦の勇者、騎士ヴィルガニョン。彼はブラジルにフランス王の植民地を建設するとともに、新教徒たちが住める別天地を創造しようとの理想に燃えていた。だが、数カ月の苦難の航海の後、彼らが到着したリオは、海岸からジャングルがつづき、食人の風習を持つインディアンたちのいる想像を絶する未開の地だった。しかも、彼らの内には集団を内部崩壊へと導く宗教対立が起りつつあった。相愛の兄妹の間にも亀裂が入り、兄は騎士の道をめざし、妹は自然と一体化したインディアンの価値観に共感していく。史実に基づいた、冒険と陰謀、愛と運命が織りなす波瀾万丈の歴史小説。
新任取締役テイラーの任務は、会社の身売り回避の最後の砦として、90日以内に所定の業績を生むことだった。身売り話の裏にライバル企業の汚い買収工作があり、社内に内通者がいることも承知の上、彼女は社運を賭けた戦略の策定に没頭する。だが、姿なき敵の脅迫と妨害は悪辣さを増し、ついに彼女の子供たちにも魔手が迫る!セキュリティ、M&A、ネットビジネスなどの現代的課題も踏まえつつ、組織的なイノベーションを成功に導く道筋を示す。手に汗握る物語を読みながら、最新の戦略を学べる新感覚のビジネス書登場。
七雄が群雄割拠した戦国時代も秦が一頭地を抜き、その勢力支配図を塗り替えようとしていた。強国秦の脅威にさらされる趙の都・邯鄲にひとりの若者が現れた。その名は藺相如。秘宝「和氏の璧」を所望する秦王と渡り合い、無事璧を持ち帰ったことで、にわかに声望が高まった。面白くない宿将廉頗は彼を仇敵視するが、藺相如は廉頗との争いを避け国家の急を優先させる。彼の真意を知った廉頗は自らを恥じ謝罪、以後ふたりは「刎頚の交わり」を結ぶ。趙の国難を救ったふたりの知将を軸に権謀術数渦巻く乱世を描く。