2003年12月発売
瀬戸内海に浮かぶ小さな島に一台のヘリコプターが舞い降りた。観光開発会社を経営する男とその秘書は、この島を丸ごとレジャーランドにする思惑を秘め、下見に来たのだ。二人はMMMという島のセラピー施設に治療という名目で入る。しかし、そこにはすでに女二人、男一人の患者がいた。五人は“クライアント”と呼ばれ、翌日から施設で治療が始まる。そして、想像を絶する驚愕の物語が幕をあける…。読者の皆さま、夢々油断召されるな。戦慄のシーンを乗り越えたと思っても、さらに新たな恐怖が巨大な口を開けてあなたを…。CD『砂の国』の美しい旋律に乗って。
新聞記者から現在は妻のおかげで広告代理店の社員となったフィリップのオフィスの机上に、ある朝置かれていたタイプ原稿。それは彼の過去数日の行動と、これからの出来事がまるですでに起きたことであるかのように書かれていた。アルコールにおぼれる彼は、その「告白」が自分の書いたものなのか、それとも誰かが何らかの目的で書いたものなのか、判断できない。しかもそこで書かれていた未来が実際に現実となっていくのを知って恐怖に囚われる。複雑な人間関係を背景にした狂気の世界を描く異色作。「簡単に忘れることのできない恐怖の小説」(P・ハイスミス)と言われる心理スリラーの本邦初訳。
ちゃんと働いて給料をもらい、だれにも憎まれず、それを言うならだれにも好かれない。どこにでもいるそういう平凡な人間に不思議のひと触れが加わると…?表題作をはじめ、円盤は女になにを話したか?…魅力の結晶「孤独の円盤」、ベスト級のホラー「もうひとりのシーリア」、名高き「雷と薔薇」、少年もの代表作「影よ、影よ、影の国」、単行本初収録の「裏庭の神様」「ぶわん・ばっ!」、さらに幻のデビュー作「高額保険」ほか本邦初紹介の3篇を含む、全10篇を収録。
ガラスの球に閉じ込められた一匹の観賞魚。借りたままになっていた本の持ち主が殺されて。念願叶って開いた喫茶店に来る奇妙な常連客たち。引っ越した家に現われる女の幽霊はやがて…。亡き子の成長に合わせ子供部屋を作り続ける母ー不可思議、神秘、謎、秘密。心に潜むミステリアス・ワールドをあなたに。
徳川幕府の存亡にかかわる機密文書「黒印状」。それを守るため田沼意次ら幕閣に一家を惨殺された矢月繋は、恐るべき刺客となって江戸に戻ってきた。「黒印状」を絶海の孤島へ秘匿するため、三人の密使が極秘裡に乗った船に、影の如き男が一人。矢月その人であった…。江戸の爛熟太平に「生き地獄」を呼ぶ、凄絶無比の剣鬼小説『虚空伝説』第三弾。
高久透は事故で記憶をなくし、友達だと名乗る年上の男・藤島に引き取られる。しかし藤島は極端に無口なうえ、透の「過去」を何ひとつ教えてくれない。透は、どこにも居場所がないような寂しさを募らせるが、藤島ともに暮らすうち、彼の中に不器用な優しさを見いだして-。ハート激震、ドラマティックラブ!過去と現在が複雑に絡み合う話題沸騰シリーズがいよいよスタート!短編「同窓会」と続編書き下ろしも収録。
混迷の幕末。将軍警護のため、近藤勇は土方歳三、沖田総司ら「試衛館」一門を率いて京都に赴く。新撰組を結成し、尊攘過激派が集結する池田屋を急襲、一躍京に名をはせた。「誠」の隊旗を掲げ、落日の幕府に殉じた新撰組。その精神の支柱になったのは、士道を忘れぬ鉄の規律だった。
重病の床にあった孫権が逝くと、圧倒的な軍事力を誇る魏は即座に軍を動かした。しかし呉はこの進出を阻み、准南に二十万の大軍を送る。攻防三か月、呉軍は猛暑のため撤退を余儀なくさせられた。三国の戦いは限りなく続く。蜀は魏に滅ぼされ、魏が司馬炎の晋に敗れ去る。そして、最後に残った呉も…長江の水だけが悠久の流れを見せる。
ナイロビの英国高等弁務官事務所に勤める外交官ジャスティンは、庭いじりをこよなく愛する中年男だ。礼儀正しく誠実な人柄で知られている。そんな彼のもとに、突然、最愛の妻テッサが、咽喉を掻き切られて全裸で発見されたという知らせが飛びこんだ。人類学者リチャード・リーキーの発掘現場に向かう車中で、何者かに襲われたのだ。静かな怒りとともにジャスティンは、真相解明に立ちあがる。
美しい若妻テッサは、死の直前まで、熱心に救援活動をしていた。ジャスティンは生前の行動を克明に追うことから事件の全貌を解明しようと決意する。それはテッサの問題に、彼自身が向き合うことだったー第三世界に対する医薬品供与の恐るべき実態、官僚と多国籍企業の癒着、それを告発するNGO。いったい世界はどうなっているのか。冒険小説の巨匠ル・カレの到達点ともいうべき最高傑作。
野蛮人は攻めてくるのか? 静かな辺境の町に首都から治安警察の大佐が来て凄惨な拷問が始まる。けっして来ない夷狄を待ちながら、文明の名の下の蛮行が続く。2003年度ノーベル賞受賞作家唯一の文庫!
午後10時。ブルームは国立産婦人科病院の談話室でスティーヴンに注目する。舞台は娼家へと移り、現実と幻想の間を彷徨するブルームはスティーヴンに死んだ息子の姿を重ねる。第十四、第十五挿話。
ブルームはスレィーヴンを自宅へ案内して語り合い、彼の帰った後、今日一日のことをモリーに報告する。そしてYesで始まりYesで終わるモリーの内的独白で幕は閉じられる。第十六、十七、十八挿話。
結婚式当日、新郎・中林浩士は逮捕された。そして、十年。新婦だった淳子は待っていた。浩士の出所する日をー。だが、待っていたのは淳子だけではなかった。かつて浩士が強奪した二億円を狙っている男達がいたのだ…!!偶然、中林の出所に立ち会った女子大生探偵・亜由美は、殿永刑事に盗まれた二億円がまだ見つかっていないことを聞かされる。いったい、お金はどこに!?名探偵・亜由美の活躍が始まる!花嫁シリーズ第14弾。「三十年目の花嫁」を併録。
弁護士の栖本は五年ぶりにかつての恋人、瞭子に会い、未だに彼女を忘れられない自分を知る。ところがその翌朝、瞭子が刺殺されたという連絡を受け、彼女の本当の過去を追い始める。日本推理作家協会賞受賞作。