2004年10月31日発売
娘のアニーは二十歳にもならぬうちに駆け落ちし、わたしは止めることができなかった。男手ひとつで大切に育ててきたというのに、コールのような中身のない男のために一生を捨てるなんて。心配のあまり、わたしは病的なまでに娘の後を追い、逆に娘の激しい反感を買ってしまう。だが四年後、アニーは幼子を連れて戻ってきた。父娘の間のわだかまりは完全に消えたわけではなかったが、この四年間、わたしは娘と孫のリンダの保護者として精一杯やってきた。アニーが再婚しようとしているいま、わたしの心は複雑だ。相手のルイスは心やさしい男やもめで、娘よりわたしに年齢が近いくらいなのだ。そこへ、アニーの再婚話を聞きつけたコールが、自分の娘を奪い返そうと怒りに燃えて、突然姿を現わした…。壊れかけた人間関係を修復しようとする男たちが切ないセンチメンタル・ストーリー。
その男は警備の手薄な私立学校に押し入り、銃を乱射した。血は流れ、血は飛び散り、血は鮮やかに周囲を染めた。無残な骸と化した少年たちを前に、男は自らのこめかみを撃ちぬき自殺した。犯人の名はリー・ハードマン。かつて英国陸軍の特殊部隊に所属していた有能な男で、重大な犯罪歴も特になかった。スコットランドはエジンバラの刑事リーバスは、自身も特殊部隊にいた経歴をもっていたため、捜査に駆りだされる。しかし、強引な捜査ばかりを行ない、署内で疎まれる一匹狼のリーバスを、上層部は辞職に追い込もうと画策していた。リーバスは、リーを調べ続け、謎のゴス・ファッションの少女や精神病院に送られた殺人者といった奇妙な人物たちの存在を突き止める。さらに英国陸軍の調査官がリーバスの捜査を妨害し、事態は混迷を深め…。
近未来、医学の進歩によって自閉症は幼児のうちに治療すればなおるようになっていた。35歳のルウ・アレンデイルは、治療法が確立される前に大人になってしまった最後の世代の自閉症者だ。それでも、ルウの生活は順調だった。触感やにおいや光に敏感すぎたり、ひとの表情が読みとれなかったり、苦労は絶えなかったけれど、自閉症者のグループを雇っている製薬会社に勤め、趣味のフェンシングを楽しんでいた。だが、新任の上司クレンショウが、新しい自閉症治療の実験台になれと自閉症の社員たちに言ってきた。ルウは、治療が成功してふつうになったら、いまの自分が自分ではなくなってしまうのではないかと悩む。ルウの決断のときは迫っていた…光がどんなに速く進んでもその先にはかならず闇がある。だから、暗闇のほうが光よりも速く進むはず。そう信じているルウの運命は?自閉症者ルウの視点から見た世界の光と闇を鮮やかに描き、21世紀版『アルジャーノンに花束を』と評され、2004年ネビュラ賞を受賞した感動の長篇。
開国で揺れる幕末の江戸。御家人悪を自称する青木弥太郎。用心棒に凄腕の攘夷浪人・魁銀次郎を得て、御用盗にも弾みがつく。ひるまぬ豪気と巧みな弁舌を駆使し、異国との交易で富を肥やす商人から軍資金を巻き上げる!胸がすく長篇痛快悪漢チャンバラ小説。