2004年5月25日発売
あんな有名詩人との恋?考えられない!雪子は舞い上がっていた。なんてったって、本人に付き合ってほしいといわれたのだから!でも、雪子は知らなかったのだ。おなじみ片山刑事と晴美とが、TVスタジオで、詩人を殺そうと花束にナイフを隠し持った女・ユリ子に遭遇していたことをー。ユリ子は告げた、「あの男は悪魔よ!」。雪子の運命はいかに!?三毛猫ホームズシリーズ第27弾。
十八世紀、頽廃のパリ。名うてのプレイボーイの子爵が、貞淑な夫人に仕掛けたのは、巧妙な愛と性の遊戯。一途な想いか、一夜の愉悦かー。子爵を慕う清純な美少女と妖艶な貴婦人、幾つもの思惑と密約が潜み、幾重にもからまった運命の糸が、やがてすべてを悲劇の結末へと導いていく。華麗な社交界を舞台に繰り広げられる駆け引きを、卓抜した心理描写と息詰まるほどの緊張感で描ききる永遠の名作。
古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきたー。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。
ゲーム制作会社で働く汐路は、同僚がビルから転落死する瞬間を目撃する。衝撃を受ける彼女に、故郷・早瀬で暮らす姉から電話が入る。故郷の中学で女学生が同級生を猟銃で射殺するという事件が起きたのだ。汐路は同僚と女学生が同一のキャラクターグッズを身に着けていたことに気づき、故郷に戻って事件の調査を始めるのだが…。現代社会の「歪み」を描き切った衝撃のミステリ!第二十一回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の「私」。臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。それは、眼が見てきた風景の「記憶」だった…。私は、その眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。悪夢のような事件が待ちかまえていることも知らずに…。乙一の長編ホラー小説がついに文庫化。
恋人との穏やかな日常に、突然生じた疑惑。彼女は自分を裏切り、あの男と愛しあっているのではないだろうか?身を苛む嫉妬。崩壊して行く関係。それでもなお彼女の放つ香りは理性を奪い、「私」を虜にする。そして、白い花の香りをまとったもうひとりの女ー。欲望?それとも愛なのか?「香り」を通奏低音に、愛についての張りつめた問いが続く、狂おしく、ピュアな恋愛小説。
ある日突然、男が女に、女が男に変わったら…?神出鬼没の摩訶不思議なインスタント・ラーメンが巻き起こすミステリアスな五つの物語。生まれてからずっと男でいつづけるのも、女で一生終わるのも、人間ってけっこう楽じゃない。性に悩めるあなたも、悩んだことなんて全然ないあなたも、さあ、そんな綱渡りのような固定観念を捨てて、性差の呪縛ものりこえて、新しい自由な世界へようこそ。
ドイツ人彫刻家ブリックの母は母国オランダで死を受け容れようとしていた。無神論者の母に捧ぐ、天に到る「祈りの塔」。しかし、この現場を任せられるのは広大な拡大EUにはいなかった。粋でカッコはいいんだが、浮世から浮きまくっている極東の彼らに頼むしかない。死と鎮魂のテーマを空高く、彼らなら響かせ刻んでくれるにちがいない…。ひねりのきいた笑いとでっかい感動が静かに厳かに読者を包む名作。
三村の家では毎晩が酒盛りだった。若い男どもが、風呂上りのからだに下穿き一つで出入りする大家族。男たちの肌の火照り、女たちの熱い息。駿と悠太は幼い頃から、性と暴力の渦の中にいたー少年たちに深い印象を残してゆく幾人もの男たち。強い引力を感じながらも、少年たちは、彼らとは違う男に育ってゆく。
特殊消火降下部隊(スモーク・ジャンパー)に所属する二人の男、エドとコナー。二人は親友同士だった。だが、エドが恋人ジュリアを連れて現れたときから、三人の運命の歯車は回り始めた。ほのかな好意、尊敬と信頼。そして、すべてを変える山火事が起こった…。予想不可能な怒涛の展開が待ち受ける、感動の恋愛巨篇の幕開き、人生を賭けた愛の始まり。
精神の病を抱えた、突拍子もない父との越えがたい断絶。恋に恋し、もどかしくも切ない童貞喪失を迎える少年。愛する兄の死を予知したように感じ、その兆しに怯える弟…。知らず知らずに異端者となりながらも、人と人との間に横たわる溝を、なんとか埋めようとひそかにあがき、苦悩する人々を柔らかな声で描く全9篇。全米図書賞、ピュリッツァ賞最終候補。
ローマ市民は、円形闘技場で繰り広げられる剣闘士試合に熱狂していた。剣闘士試合とは政治家の提供する見世物で、厳しい訓練を積まされ、劣悪な住居に閉じこめられた奴隷同士の殺し合いにほかならない。紀元前73年の春、圧倒的な実力と美貌を誇る一級剣闘士スパルタクスは、自由を渇望する同士たちと剣闘士養成所から脱走を企て、総勢74人の剣闘士奴隷が「自由」を手にした。しかしそれは、ローマ軍との苛烈な戦いと奴隷軍迷走の始まりでもあった-。ローマからの逃走か破壊か。叛乱の英雄・スパルタクスの活躍と苦悩を描く渾身の長篇小説。
国王を人質にして戦端をひらくー愚劣だが確実な作戦を用いてなお、敗北を喫したタンガとパラスト。デルフィニアの突出をくいとめなければ滅亡するのは…。かくして恐怖に戦く両国王は二国再連合とスケニア、さらにファロット一族を巻き込んでの起死回生の策に出た。
京都某所の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された…。柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンが意味するものは?一同を集めて事件の真相を看破しようとする木更津だが…。(「白幽霊」)。京都の街に出没する白い幽霊に導かれるように事件は起こる。本格推理の極北4編。
都内で起きる連続強盗事件。東北の雪に閉ざされたホテルに無料で招待された6人の若い男女。強盗事件は双子の犯行とわかっていながら、兄弟どちらが実行犯か、警察は立証できない。一方、陸の孤島と化したホテルでは密室殺人事件が起きる。そして再び…。あざなえる縄のごとくに並行する二つの物語は、どこでどう結びつくのか。
お頭・車善七の死に誰もが不審の念を抱くが、何の証拠もなければ誰が手を下したのかも判明しない。どうすればいいのか。助九郎は、善七の遺志を継ぐべく公事の継続を決心する。しかし、善七後継ぎの菊三郎に累を及ぼすわけには行かぬ。志を一にする六人の小屋頭たちがその責を負って起つのであったが…江戸のカラクリが透けてみえてくる。時代小説を読む醍醐味。