2005年2月1日発売
時は鎌倉時代。武門の身を捨て十三歳で出家した一遍は、一度は武士に戻りながら再出家。かつての妻・超一房や娘の超二房をはじめ多くの僧尼を引き連れ遊行に出る。断ち切れぬ男女の愛欲に苦しみ、亡き母の面影を慕い、求道とは何かに迷い、己と戦いながらの十六年の漂泊だった。踊念仏をひろめ、時宗の開祖となった遍歴の捨聖一遍が没するまでの、波瀾の生涯をいきいきと描く長編小説。
オンボロ車でふらりと牧場に乗りこんできたカウガール、友人の姉と恋におちる15歳の少年、泥棒を殺害した移民と奇術師の友情、トラックが故障してひまわり畑で立ち往生する兄妹ー表舞台とは無縁の彼らにも人生の落とし穴があり、喜びと悲しみの溢れる一瞬がある。孤独、挫折、そして愛をかみしめながら生きる人々の姿を、シンプルな文章と独特のリズムで丁寧に描いた短篇12作。
高校卒業以来、他人を騙し、裏切り、蹴落とすことでスーパー・エリートとなったヘンリー。だが、自分を捨てた恋人を見返すべく戻った故郷で、彼女が当時、死期が近いとすでに悟っていたことを知らされる。絶望感に包まれ、ホテルのバルコニーへと歩を進めるヘンリー…と、その背にメイドの声。「すべてにきっちり片をつければいいのよ」こうして彼女との奇妙な贖罪ツアーが始まった。
元MI6工作員のハーランドが乗った小型ジェット機が墜落ー彼はその事故の唯一の生存者だった。事故直後、彼はFBI及びMI6の元同僚の接触を受ける。犠牲になった彼の友人で、元CIA工作員グリズウォルドに両者は強い関心を示した。ハーランドは危険を承知で独自の捜査を開始した。そんな折り、彼はある若者から驚くべき話を聞かされる。新時代の鮮烈エスピオナージュ誕生。
グリズウォルドは、旧ユーゴスラヴィアで大物戦犯を追い詰めていたことが判明。また謎の若者トマスは、自分はハーランドの息子で、母はチェコの諜報員だと主張。さらに彼は戦犯の情報も握っていた。しかしトマスは何者かに狙撃されてしまう。ハーランドは墜落事故が自分と友人を狙った破壊工作だと確信。彼は真相究明のため、懸命に封印していた過去の記憶を必死に呼び起こすー。
いつ、いかなる時、何を殺生しようがお咎めを受けるいわれはござらぬ。殺生お構いなし斬り捨て勝手の殺生方に新たな奉行がお目見えした。織部多聞、人呼んで“かぶきの多聞”。徳川の世も三代目にあたり盤石に見えたが、現世を憂える軍学者・由比正雪一党の企みによって、不穏な事件が相次いでいた。多聞もいつしか事件に巻き込まれていく。反骨のかぶき奉行が揮う剛剣ー柳生流兜割りが悪を断つ。