2005年6月25日発売
一番大切なのは、何をする時間ですか?今、一番したいことは何ですか?絶対手放せない、私の最優先なこと。それは、人が見れば笑ってしまうようなこだわり。恋だけでも家庭だけでも、仕事だけでもない。三十一歳、初めて気づく、ゆずれないことの大きさ。そこに、本来の自分を形作るものが見えてくる。はたして人は、大事なものだけで生きられるのか?揺らぎ惑う大人たちを描く、山本文緒の世界。
朽木元。中学三年生。五教科オール10で音楽と美術も9か10のちょっとした優等生。だけど、ぼくには左目がないー。世の中を冷めた目で見る少年が、突然、学校一の問題児と一緒に校則委員になるように、担任教師から指名されて…。クールで強烈な青春を描いた日本版『キャッチャー・イン・ザ・ライ』ともいうべき表題作に、単行本未収録短編「インステップ」ほか2本を収録。多くの少年たちに衝撃を与えた傑作が待望の文庫化。
葉子を癌で失ってからというもの、僕はいつもデパートの屋上で空を見上げていたー。万引きを犯し、衆人の前で手酷く痛めつけられた中学の時の心の傷、高校の先輩女性との官能的な体験、不倫による心中で夫を亡くした女性との不思議な縁、ファンの心を癒すSMの女王…。主人公・山崎が巡りあった心優しき人々と、南仏ニースでの葉子との最後の日々。青春文学の名作『パイロットフィッシュ』につづく、慟哭の恋愛小説。
ひきこもりの大ベテラン佐藤は気づいてしまった。人々をひきこもりの道へと誘惑する巨大組織の陰謀を!--といってどうすることもなく過ごす佐藤の前に現れた美少女・岬。彼女は天使なのか、それとも……。
十三・十四・十五歳。きらめく季節は静かに訪れ、ふいに終わる。シューマン、バッハ、サティ、三つのピアノ曲のやさしい調べにのせて、多感な少年少女の二度と戻らない「あのころ」を描く珠玉の短編集。
連続殺人犯の日記帳を拾った森野夜は、未発見の死体を見物に行こうと「僕」を誘う……人間の残酷な面を覗きたがる者〈GOTH〉を描き本格ミステリ大賞に輝いた乙一の出世作。「夜」を巡る短篇3作を収録。
世界に殺す者と殺される者がいるとしたら、自分は殺す側だと自覚する少年「僕」。もっとも孤独な存在だった彼は、森野夜に出会い、変化していく。彼は夜をどこに連れて行くのか? 「僕」に焦点をあてた3篇を収録。
掏摸や詐欺師を追うなんて俺の仕事じゃないと思ってきた。だが奴等は老人のささやかな欲望と不安につけ込み金を奪うだけじゃない。被害者の生活も家庭も壊していく。この事件、仕掛け人を捕まえなければ意味がない。被害者が加害者でもあるマルチ商法の捜査は困難を極めた。そして、事件の背後にNYの中国系マフィアの存在が浮かび上がるー。
南極を拠点に活動する極地パイロット・桐村彬が巻き込まれた驚天動地の謀略のシナリオ。失われた権力への執着と富への欲望が果てしない暴虐と騙しあいを呼ぶ!桐村の駆るツインオッターは、地球上で最も過酷な冬の嵐の中、極地の空に飛び立つことができるのか!?圧巻の描写、緊密な構成。比類なき航空冒険小説の傑作。
給料日前に懐が寂しくなるサラリーマンの小津健吾に突如、三千万円の遺産が贈与されるという話しが舞い込む。贈与者は、小津が二年前に別れた中江香織の叔母であった。遺言には、香織に遺産の話を内緒にしてよりを戻してほしいとあった。小津は今、白坂千鶴という女とつきあい、結婚話しすら切り出されようとしていた。遺産を取るか女を取るか、揺れ動く小津が双方の体と心を行きつ戻りつするうちに…。