2005年9月1日発売
甲子園優勝から二〇年目の夏ー松平孝太郎率いる弱小高校野球部ではふたごの新入生が活躍している。その姿に懐かしいあの兄弟が重なる。上杉達也と和也。孝太郎がふたりの投球を受けた青春の日、浅倉南もそこにいたー。あだち充原作の『タッチ』が初めて小説に。数々の名シーンはもちろんのこと、コミックには描かれていない隠れたエピソードも盛りだくさん。『タッチ』ファン必読、二〇〇五年秋公開の映画「タッチ」の感動もさらに広がる究極のサイドストーリー。あの不朽の名作が青春グラフィティ・ノヴェルとなってあらたに甦る。
ウィルス研究医・仲沢葉月は、ある晩、未来を嘱望されている外科医の夫・啓介と前妻との間の子が誘拐されたという連絡を受ける。幼子は焼死体で発見されるという最悪の事件となったにもかかわらず、啓介は女からの呼び出しに出かけていったきり音信不通。痛み戸惑う気持ちで夫の行方を捜すうち、彼女は続発する幼児誘拐殺人事件の意外な共通点と、医学界を揺るがす危険な策謀に辿り着くー。医学ジャーナリストが描く、迫真の医療サスペンス!第一回小学館文庫小説賞受賞作。
借金をかかえた青年・文哉の前に現れた無頼な風体の男。「百万円払うから一緒に散歩しろ」という奇妙な提案を受け、文哉は男と共に歩き出す。井の頭公園から出発し、東京を東へと横断してゆく二人。現実の歩みはいつしか記憶の中の風景と重なり、文哉は今までの人生で失ったものを取り戻そうとするが、短い旅の終わりには衝撃の結末が。夢と孤独が交錯する哀愁ロード・ミステリー。
千八百四十八年二月、大好評を博したショパン六年ぶりの演奏会の一週間後、フランス二月革命が勃発する。民衆の怒涛の奔流は、首相の解任、王の退位を実現し、共和国を生み出した。貴族達の惑乱と不安、活気づく民衆。ショパンは英国に移るが、過酷な演奏旅行を強いられ、体調は悪化する。一方ドラクロワは、ある画家の評伝の執筆にとりかかる。時代の巨大なうねりを描く第二部前編。
病躯を引きずるように英国から戻ったショパンは、折からのコレラの大流行を避けてパリ郊外へ移った。起きあがることもままならぬショパンを訪なう様々な見舞客。長期にわたる病臥、激しい衰弱、喀血。死期を悟ったショパンは、集まった人々に限りなく美しく優しい言葉を遺す。「小説」という形式が完成したとされる十九世紀。その小説手法に正面から挑んだ稀代の雄編。堂々の完結。
上司に嫌気がさし一流企業の総合職を捨てた貴奈子は、叔父が主宰する鳶集団「有限会社日本晴れ」を手伝い始めた。でも鳶って何?軍事オタクの双子、受験偏差値マニア、刑務所帰りの男にその生意気な娘…。貴奈子は一癖ある面々に当惑する。だが、己の意地を賭け、巨大彫刻を取り付ける損得抜きの大仕事に命を張る鳶達の姿に、貴奈子の胸は熱くなる。粋な心意気に気分は日本晴れだ。
ワイオミング州ララミーで女子大生が強姦され殺害された。すぐにヤク中の兄弟が容疑者として逮捕される。現場には兄弟の指紋など十分な証拠が残され、彼らが犯人であると誰もが確信していた。折りしも、バーンズ捜査官は女性クライマーの転落死を調査するためララミーに滞在。彼は無関係だと思われていた二つの事件に、驚愕の接点を発見する。新ヒーローが大活躍する痛快冒険小説。
1958年、4歳の少女ルースは両親の寝室から聞こえてくる奇妙な音に目覚め、母とアルバイトの少年エディの情事を目撃した。死んだ兄たちの写真が貼り巡らされた家。浮気をくり返す絵本作家の父。悲しみに凍りついた母は、息子たちの写真だけをもって姿を消した。この夏の出来事が幼いルースと16歳のエディの心に残したものは…。20世紀アメリカ文学を代表するベストセラー。
1990年、いまや世界的人気作家のルースは、三文小説家のエディと再会する。母マリアンについて訊ねるルース。マリアンを忘れられないエディ。それから5年後、ルースは幼子を抱えた未亡人。エディは相変わらずの独身暮らし。そこに謎のミステリ作家の存在がからみあって…。-『ガープの世界』以降、もっとも愉快で説得力のあるアーヴィングの最高傑作!(ニューヨークタイムズ)。
如月夢之介は、亀沼藩剣術指南役だった父の仇を討つため、山に篭って厳しい剣術の修行を重ねてきた。そんな彼に江戸家老、大滝主膳暗殺の密命が下る。藩の財政を窮地に陥れた主膳こそ、夢之介の仇の相手でもあった。藩のため、そしておのれのために主膳を討たねばならぬ。意を決して江戸に向かう夢之介を正体不明の刺客が襲う。危うく難を脱した夢之介だが、行く手には数々の想像を絶する卑劣な罠が…。