2005年9月30日発売
故国・朝鮮との縁を切るために美貌の女性うねが、鎌倉東慶寺に駆け込んだ。朝鮮で虐げられ日本に永住を決意した朝鮮の人々を、強制帰国させるために朝鮮使節団が来日したのだ。幕府内の家光派と忠長派の対立や使節団の思惑もからみ、うね争奪をめぐって幕府は二分される。名だたる剣豪や忍者群の暗躍、朝鮮妖術師も加わり、血で血を洗う暗闘が始まった。東慶寺住持・天秀尼に特別な想いを寄せる三代将軍家光は、柳生但馬守宗矩に密かに寺の守護を命じる。宗矩は、嫡男十兵衛を凌ぐ剣客でもある実の娘・矩香を男子禁制の東慶寺に遣わすが、そこに現れた人物こそは…!?柳生新陰流と朝鮮妖術師の対決、三代将軍家光の密やかな恋、朝鮮出兵に隠された真実など、時代小説の面白さ満載の破天荒な力作伝奇長篇。
働き盛りの46歳で突然死した椿山和昭は、家族に別れを告げるために、美女の肉体を借りて七日間だけ“現世”に舞い戻った!親子の絆、捧げ尽くす無償の愛、人と人との縁など、「死後の世界」を涙と笑いで描いて、朝日新聞夕刊連載中から大反響を呼んだ感動巨編、待望の文庫化。
やがて時は過ぎ幾つもの季節がめぐって、「私」がついに書きあげた神品(大傑作)は…。いつか必ず小説家として起つ日を夢見てきた在日朝鮮人の「私」が、老境に至って追想する情熱と矜り、そして挫折。サハリンで、ソウルで、サッポロで。「在日」であることの歳月を真摯に見つめて、「日本」に生きることの実相を浮彫りにする、四つの小説-。
極限のクライミングを描く、究極の筆致。『檀』から十年、最新長編作品。最強の呼び声高いクライマー・山野井夫妻が挑んだ、ヒマラヤの高峰・ギャチュンカン。雪崩による「一瞬の魔」は、美しい氷壁を死の壁に変えた。宙吊りになった妻の頭上で、生きて帰るために迫られた後戻りできない選択とはー。フィクション・ノンフィクションの枠を超え、圧倒的存在感で屹立する、ある登山の物語。
事故で妻を失ってから、私には他人の背後霊が見えるようになった。霊は実に表情豊かで、色々なことを教えてくれる。霊の示唆で相談事を解決するうち、それが評判となり、人捜しの依頼が舞い込んだ、どこかで、誰かの背後霊になった妻に会えるかもしれない。依頼を受けて捜査を始めた矢先、奇妙な出来事が身の回りに起こり始めるー。
カンザスの村で起きた一家4人惨殺事件。5年余を費やして綿密な取材を敢行し、絞首台まで犯人たちを追った本書は、40年を経た今なお、輝きを放ちつづける。捜査の手法、犯罪者の心理、死刑制度の是非、そして取材者のモラル。人間の魂の暗部を抉りつくし、後進の作家たちに無限の影響を及ぼした暗黒の教典、待望の新訳成る。
赤ん坊の頃、実の父親から硫酸をかけられ顔に大火傷を負ったジョーは、施設にいるところを政界の実力者ウィルに引き取られた。彼は愛情をこめて育てられ、24歳になった今は、保安官補として働いている。その大恩あるウィルが、彼の目の前で射殺された。誘拐されたウィルの政敵の娘を保護した直後のことだった。ジョーは真相を探り始めるが、前途には大いなる試練が…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞に輝く感動作。
妹が死んだ。弟が暴れん坊になった。母が鬱になった。父は何もできなかった。そしてぼくの頭の中に広島で被曝した日本人の男が住み着いた。人が焼け、建物が焼け、破壊された風景が目にみえる。ぼくに…何ができるだろう?戦争のもたらした災厄を目の当たりにし、多くの試練が振りかかるなか、少年ヘンリーは大人になってゆく。そしてヘンリーの身に起こったのは…。純粋に生きること。その意味を描き出した文芸大作。
放射線科医・石原祥子のもとに搬送されてきた心筋梗塞の患者は、かつての恋人・羽根田医師の妻、緑だった。だが、冠動脈に詰まった血栓の除去手術中、透視画像に映り込んだのは、血流に逆行して移動する不気味な影。羽根田医師の強硬な主張により、その正体を解明すべく試験稼働中の“アシモフ”が投入されることになった。それは、挿入したカテーテルからナノ単位のビームを照射し、血管内をリアルタイムに撮影する世界初の装置だった。“アシモフ”のゴーグルを装着し、血管内世界を体感していく祥子。やがて彼女の眼前に現われたのは、ミサイルのごとき形状とプロペラのような鞭毛を備えた謎の物体であった…人体という異世界を舞台に、極小存在と人類との息詰まる攻防戦を描いた、現代版『ミクロの決死圏』。
おさな子のやわらかい肌。いたぶる自分、止められない!女子高生と刑事。夜の闇の中、底なしの慾望と孤独に苛まれる男と女。罪悪感は加虐心を加速させる。幼児虐待に潜む暗い罠。現実世界と切り結ぶ最新長編。
太平洋戦争末期、沖縄は米軍の激しい空襲に曝されていた。本土疎開ももはや手遅れ。庶民の逃げる先はいまやヤンバル(本島北部)を覆う密林地帯しかなかった。沖縄刑務所もついに解散となり、収監されていた北城尚純もヤンバルに向かう。途中、老人の遺体にすがる少女に遭遇した。被弾した老人は酒蔵の主で、二百五十年の歴史をもつ古酒の甕を抱えていた。少女は父親が命と引き替えに守った古酒とともに逃げる決意を固める。囚人と少女の凄絶な脱出行が始まった。
過食嘔吐を繰りかえす小説家志望の自称モデルと現実が怖い簾禿の中年マゾヒストと死に小説の核をみつけた。芥川賞作家と小説の奴隷である敏腕編集者の「舎人の舌」は数多の虚構と妄想を過食し、嘔吐する。清められる。「純」文学最新刊。
ニューヨークで商業デザイナーとして活躍するシャノンは、死の床にある母から衝撃の事実を告げられたー彼女の本当の父親は妻子あるアイルランド人だったと。混乱した気持ちのまま母の葬儀を終えたシャノンのもとに、ブリアンナというアイルランドの“姉妹”から、家に招待したいという手紙が届く。休暇を取って訪れた異国は故郷のように彼女を迎えてくれた。またマーフィーという若き農場主との出会いが、シャノンの人生を変えることに…。運命に導かれた三姉妹の物語、感動の完結編。
カテドラルとはスペインの俗語で頑固者のこと。そんなカテドラルな男ーバルセロナきっての若手建築家、リカルドと日本人ビジネスマンの海人は、鮮烈な出会いから数ヶ月を経た今、熱愛中だ。初めて迎えるサマーバカンスに心躍らせる二人…だが、そんな折、海人が駅で一緒に事故に巻き込まれた一人の記憶喪失の青年と同居することになって、バカンス計画はメチャクチャに…。書き下ろしパッショネート・ロマンス。