2006年6月9日発売
昭和20年8月9日、ソ連軍は突如、満洲に侵攻を開始した。その頃、牡丹江の森田酒造では、保安局の氷室が、白系ロシア人家庭教師エレナをスパイ容疑で斬殺する。栄華の絶頂から奈落の底へ。二人の子供を抱えた森田波子の苦難の逃避行が始まる。自らの引き揚げ体験を元に運命の転変と戦争の悲劇を描く感動の長篇小説。
「あなた、この着物要らない?」高校時代からの親友の言葉には続きがあった。「この着物を着てある女に逢ってほしいの」そしてー。奥さんにしたいナンバーワンといわれた女の、その実は?からみあう愛と憎悪の中で、予期せぬ結末が待つ十二の物語。女は見かけによらぬもの、あなたもだまされて下さい。
桶狭間の戦いで今川義元の首級を挙げた毛利新介と服部小平太。二人は信長に武功を認められ昇進を果たすが、その後、新介は織田家の家督を相続した信忠に、小平太は豊臣秀吉に仕え、別々の道を歩むことになった。二人の武将を待ち受ける数奇な運命と信長、秀吉の天下人への道のりを克明に辿った戦国歴史長篇。
産婆のオバァのまじないによって姿を見えなくされてしまった愛する息子。末婚の母、津奈美は命をかけて井戸に飛び込み、“陰”の世界へと向かう。他の人間にかけられた「七つの願い」を奪うことで、息子の姿を取り戻すのだ…。美しい島の自然を背景に、若き母親の一途で壮絶な愛を描いた、ファンタジーの傑作。
1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とはー。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。
自衛官の楢本は、8年間行方不明の元同僚・越路を捜しにカンボジアに来た。楢本が越路を捜す目的は、越路の妻と自分が一緒になる承諾を得る為だ。越路を捜す間、楢本は人身売買、汚職、売春にまみれたカンボジアの現実に直面する。やがて楢本は、越路が幼児売買に関わっているとの噂を聞きつけるが…。著者待望のハードロマン。
ドナウ川で邦人男女が心中…その小さな新聞記事が頭から離れなくなった私は、二人の足跡を追ってウィーンへと向かった。もはやこの世にいない19歳の少女、日実は、異国の地でどんな恋をし、何を思い、そして何ゆえに追いつめられていったのか?悲劇的な愛の軌跡を辿る、哀切さにみちたノンフィクション。
深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに8つの事件をひきおこす。社会人一年生の大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだがー「歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」という掃除の天才、そして、とても掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子・キリコが鋭い洞察力で真相をぴたりと当てる。