2007年1月30日発売
事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明。Eve 1と名付けられたその細胞は、恐るべき未知の生命体へと変貌し、利明を求めて暴走をはじめるー。空前絶後の着想と圧倒的迫力に満ちた描写で、読書界を席巻したバイオ・ホラー小説の傑作。新装版刊行に際して、発表時に研究者でもあった著者から、科学者あるいは小説家を志す人達に贈る、熱いロングメッセージを収録。
日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。
1940年、東京オリンピックは幻と消えた。失意の日々、肌の温みを求める女たちを捨て、雨哲は故郷を去り、一方、娘たちを夢中にする美しい容貌と、兄譲りの健脚に恵まれた弟・雨根は、いつしか左翼運動に深く傾倒した…小説家柳美里が、国・言葉・肉親、すべてを奪われた無名の人々の声に耳をすまし、自身の生につらなる日本と朝鮮半島の百年の歴史を、実存の全てを注ぎ描きあげた傑作。
愛など捨てたはずだった。恋人を事故で失った若き日に。私は虚無を抱え、アウトローとして闇に暮らしてきた。だが、光を失いながらも懸命に生きるかほると出会い、罅割れた心が潤ってゆく。私は、娘のような年頃の女性を、いつしか全身全霊で愛するようになっていたのだー。男たちの熱き絆。そして不器用な男と女の命を賭けた恋。渾身の長篇小説。
「あのう、すみません。すみませんていうのは働かないとかやりたいことがないとかっていうことについてじゃなくて、いま私がこうやって喋らせてもらってることに関してで。…ええとつまり、働く気はないけど喋る気はあるっていうことです」父を早く亡くし、母に酒をのませてもらい金を無心して生きている私。祖父の三回忌で伯母に「そろそろ働いたら?」と問われ、明かされはじめた過去。中学教師に秘められた戦争中の出来事とはー。圧倒的な筆力で現代を照らしだす新鋭の誕生。新潮新人賞受賞作「冷たい水の羊」併録。
人情溢れる下町を奔走する新米刑事・麻生龍太郎、25歳。誰の目にも日の当たる道だけを歩んでいるように映る龍太郎だが、人には明かせない秘密があった…。ベストセラー「緑子」シリーズの人気キャラクターの過去が初めて明らかに!人情溢れる下町を奔走する新米刑事の内面に迫った連作警察小説。