2007年6月23日発売
荒廃した平安京の羅生門で、死人の髪の毛を抜く老婆の姿に、下人は自分の生き延びる道を見つける。表題作「羅生門」をはじめ、初期の作品を中心に計18編。芥川文学の原点を示す、繊細で濃密な短編集。
無頼の生活に明け暮れた太宰自身の苦悩を描く内的自叙伝であり、太宰文学の代表作である「人間失格」と、家族の幸福を願いながら、自らの手で崩壊させる苦悩を描き、命日の由来にもなった「桜桃」を収録。
妹の婚礼を終えると、村の牧人メロスはシラクスの市めざして走りに走った。約束の三日目の日没までに暴虐の王のもとに戻らねば、自分の代わりに友セリヌンティウスが殺される。メロスは約束を果たすことができるだろうか?日はすでに傾いている。メロスよ、走れ!-身命を懸けた友情の美しさを描いて名高い表題作のほか、「富嶽百景」「駈込み訴え」「東京八景」など、執筆活動の充実ぶりを示す、太宰中期の佳作9篇を収録。
昭和のはじめ、瀬戸内海の小島に赴任したばかりの大石先生と、個性豊かな12人の教え子たちによる人情味あふれる物語。戦争のもたらす不幸、貧しい者が常に虐げられることへの怒りを訴えた不朽の名作。
おれは産業スパイとして研究所にもぐりこんだものの、捕らえられる。相手は秘密を守るために独断で処罰するという。それはテレポーテーション装置を使った地球外への追放だった。傑作ショートショート集!
大政奉還から戊辰戦争へ…。幕末の争乱は最後の激動を見せ、慶応は明治と改元された。中村半次郎、改名して桐野利秋。日本初代の陸軍少将として得意の日々を送るが、国情はなお不穏。征韓論をめぐって新政府は二つに分かれ、西郷は鹿児島に下った。その後を追う桐野、刻々と迫る西南戦争の危機…。城山での壮絶な最期を終章に中村半次郎の後半生を描き、爽快な感動を呼ぶ完結編。
「今に見ちょれ。俺はこの腕一本できっと…」。半次郎の口ぐせだった。姓は中村、鹿児島城下の藩士に“唐芋”とさげすまれる貧亡郷土の出ながら剣は示現流の名手、精気溢れる美丈夫で、性剛直である。時は幕末、ふとした機縁で西郷吉之助に見込まれ、国事に奔走するが、卓抜の剣技は血なまぐさい暗殺を重ね、“人斬り”の異名は、次第に高まってゆく。激動する時代の中に一快男児の熱血の半生を描く、傑作小説の前編。
辻山は探偵事務所に勤める43歳。責任感もありまじめだが、やることはドジばかり。そんな彼が命令された仕事は、あと5日で親のいるアメリカに出発する、元気が過ぎる女子大生直美の監視兼ボディガードとおもり。気づかれないように後をつけるが、あっという間に尾行はばれてしまう。直美に翻弄される辻山の許に、元妻の幸子がギャングに追われ飛び込んで来た。跡取りを殺した疑いをかけられ、狙われているのだというー。
父親の残した傾きかけた小さな船の修理工場を継いだ弘人は、亜裕太、甲と高校時代からの仲間だ。三人はお嬢様大学に通う菜緒と、その親友の裕子と知り合う。菜緒は横浜の老舗ジュエリーショップの娘。最初は反発しあう弘人と菜緒であったが、いつしかひかれあうようになり、お互いなくてはならない存在になっていく。しかし、ひたむきでまっすぐな二十歳の恋には、乗り越えられない障害があったのだ。
16歳の明帆は同級生の藍子と付き合っている。だが二人はすれ違ってばかりで、明帆は藍子の幼なじみの少年・陽に近づいていく。ある日、藍子のアパートが火事で全焼し、藍子も焼死体で発見される。不可解さを感じ、真相を探る明帆と陽だがー。「死んでほしゅうない。おまえに生きていてほしい。おれは、おまえを失いたくないんや」友情でもなく、同情でもなく、仲間意識でもない。少年たちの絆と闇に迫る、著者渾身の物語。
超有名進学校が武装集団に占拠された。人質となった教師を助けたければ、広大な校舎の各所にばらまかれた2000ものピースを探しだし、パズルを完成させなければならない!? 究極の死のゲームが始まる!
僕は《在日韓国人》に国籍を変え、都内の男子高に入学した。広い世界へと飛び込む選択をしたのだが、それはなかなか厳しい選択でもあった。ある日僕は、友人の誕生パーティーで一人の女の子に出会ってーー。
親友を突然うしなった男の子、リストラに晒され、息子に侮蔑されながらも日常に踏みとどまり続ける父、不登校を続ける少年が出会った廃品回収車の老人、女手一つで仕事を抱えながら育てた息子を襲った思いがけない病ー苦しみから立ちあがり、もういちど人生を歩きだす人々の姿を鮮やかに切り取った短篇集。たくさん泣いたあとは、あなたの心にも、明日を生きるちいさな勇気が戻っているはず。
脳の病を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母・千鶴。彼女の心に残されたのは、幼い頃に経験したという「凄まじい恐怖の記憶」だけだった。突然の白い閃光、ショウリョウバッタの飛ぶ音、そして大勢の子供たちの悲鳴ー。死を目前にした母を今なお苦しめる「最後の記憶」の正体とは何なのか?波多野森吾は、母の記憶の謎を探り始める…。名手・綾辻行人が奇蹟的な美しさで紡ぎ出す、切なく幻想的な物語の迷宮。