2008年1月10日発売
愛している-深く、限られた支持の中で作家は書き続けた。愛している-叩かれるために世に出た作家は死ななかった。愛している-滅びた神の声を聞いて彼女は「金毘羅」になった。愛している-さらなる危機が来た、祈りを失い、そして。愛している-内なる他者に出会う。生きる力は、消えない。判らなくてもいい、唱えてみればいい。言葉の力によって、生きようとする人と再生しようとする人のための愛の呪文。
作家としての輝きのピークにあって、病に倒れたカーヴァー。生前に発表された最後の一篇であり、壮絶さと、淡々とした風情が胸を打つ「使い走り」ほか、秀作全七篇を収録した最晩年の短篇集。ライブラリー版のために改訳。
離婚や息子との死別を乗り越え、老いても自分の夢にかけた大正生まれのお草。知的で小粋な彼女が、街の噂や事件の先に見た人生の“真実”とはー。オール讀物推理小説新人賞受賞作を含む連作短編集。
「あげな女子と話ができたらなんぼええべねす」…東北一の名門校の落ちこぼれである稔、ユッヘ、デコ、ジャナリの四人組と、東京からの転校生、俊介がまき起こす珍事件の数々。戦後まもない頃、恋に悩み、権力に抗い、伸びやかに芽吹く高校生たちの青春を生き生きと描く。ユーモアと反骨精神に満ちた青春文学の傑作。
菊池寛先生の秘書になった「わたし」。流行のモガ・ファッションで社長室に行くと、先生はいつも帯をずり落としそうにしてます。創刊された「モダン日本」編集部では、朝鮮から来た美青年・馬海松さんが、またわたしをからかうのー。昭和初年、日本の社会が大変貌をとげる中で、菊池が唱えた「王国」とは何だったのか。
最近、都で名を馳せる薬師、平大成・中成兄弟は頬に一つずつ瘤がある。秋も深まってきたある日、薬草を採りに山へ入る。大成は道に迷い、鬼達の百鬼遊宴に遭遇してしまう。命がけで舞い踊った大成に鬼達は大喜び、ほうびに瘤を取ってやる。半日後、今度は中成が瘤を取ってもらおうと山へ向かうが…。シリーズ初の絵本登場。
伊三次の上司である定廻り同心の不破友之進の嫡男、龍之介もついに元服の年となった。同心見習い・不破龍之進として出仕し、朋輩たちと「八丁堀純情派」を結成、世を騒がせる「本所無頼派」の一掃に乗り出した。その最中に訪れた龍之進の淡い初恋の顛末を描いた表題作他全六篇を収録したシリーズ第六弾。
伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。
魑魅魍魎が住まう骨董業界を生き抜く孤高の美人旗師・冬狐堂こと宇佐見陶子。目利きの命である眼を患った彼女を食い物にしようと、同業者がわけありの品を持ち込む。それは、不思議と何度も返品されてくる和人形だったー「倣雛心中」。他、表題作を含め全四篇を収録した古美術ミステリーの人気シリーズ第二弾。
「月読」とは、死者の最期の思いを読みとる能力者。月読として生きる朔夜が、従妹を殺した犯人を追う刑事・河井と出会ったとき、さらに大きな事件が勃発してー。人は死の瞬間、何を思うのか。それを知ることに意味はあるのか。地方都市で鬱屈する若者たちの青春を描く、著者渾身の傑作ミステリー長篇。