2008年10月1日発売
祝言の翌日、父は士族の乱で命を散らした。たった一夜の契りで生を受けた娘は「蝶」と名づけられ、武家の娘として厳格に育てられる一方、「学問のすゝめ」や英文の「聖書」を修め、自分の未来を切り開くため懸命に生きた。-だが、予想もできない運命の激変が、これから襲いかかろうとは。
蝶は、サムライの娘でありつづけようとした。自分を守ってくれた母と祖母の死後、妓楼の養女に、そして舞妓になりながら、蝶はアメリカに渡る日を夢見つづける。目の前に現れたアメリカ海軍士官は、そんな蝶に理想の日本女性の姿を見出したのだったが-。
あまたの橋が架かる町。眠るように流れる泥の川。太古から岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。やがて稀代の盗人「メリーゴーランド」と知りあい、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い、敵意に荒んだ遠い下流へとポーを押し流す…。いしいしんじが到達した深く遥かな物語世界。驚愕と感動に胸をゆすぶられる最高傑作。
近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった!ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤病」の正体を突き止めることを命じられた辰次郎はー。「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。
御家人の次男と三男である松之介、竹之丞、梅太郎の三人は、生家で居候・穀潰しと冷遇される身だが、弱い者いじめをとことん嫌う気持ちのいい男たちだ。風俗取締りの御改革のせいで火の消えたような江戸の町。ある日、梅太郎は十六、七の娘を救う。娘は悪い男に狙われているという。男は妖怪・鳥居耀蔵の手先で、ご法度の抜け荷に手を染めていた。南蛮渡りの淫薬で若い娘を弄でぶ奸物に“松竹梅”は怒りの一閃を討つ。
元パティシエの有道が自宅で始めたケーキ教室。近所の奥様方でにぎわうその教室には、一人黙々とケーキ作りを学ぶ長身で苦みばしった色男の姿が…。その男、曽我部は実はヤクザだという噂があった。…そんなある晩、有道のもとに、かつて一緒にパティスリーを経営していた男が現れ、あわや…というところを曽我部が救ったことから、二人は急接近、ついに肉体関係を…。
片思いしていた親友が年上の北欧美人と結婚。しかも式の当日、その親友から実はずっと好きだったと告白され…。大学生の優斗は衝撃のあまり披露宴で酔いつぶれ…ふと気づくと、新婦の友人であるアフリカ某国の王子イドリスのベッドの中。美貌の王子から一目惚れしたと口説かれ、優斗は理性の飛んだ身体を好き放題に貪られてしまう。その挙句、王子の観光ガイドまでする羽目に…。
憧れの叔父との旅行中、見知らぬ男たちに攫われ砂漠を彷徨っていた和日は、クバド国王・サディードに救出される。しかしサディードは、叔父の安否を知りたがる和日を王宮に閉じ込め、逃げ出そうとすれば陵辱を繰り返す…。自分を組み敷く傲慢なサディードだが、若き国王としての手腕に…その優しさに、次第に惹かれ始める和日。…頑なに和日を帰そうとしないサディードの本心は。