2008年11月7日発売
さて大陸のまんなかに、うす紫の湖があって、そのほとりには一輪、見たことも聞いたこともない花が、恥かしそうに控え目にこっそり咲いておりました。「醜い花」というのがその花に冠せられた名前でしたー。
2014年、中国。新聞社の北京特派員・田波は、重慶の暴動を知り現地に赴く。それは策謀渦巻く中国の深い闇への入り口だったー。北京五輪から6年、役人の腐敗や農村の困窮に対する人民の不満が、やがて大きな奔流となって天安門になだれ込む!綿密な取材に基づいて描かれた、これぞ近未来小説の決定版。
保元・平治の戦いに相次いで勝利をおさめ、平清盛は武士として、栄華の絶頂を極める。しかし高位を独占する平家の横暴ぶりに、不満を募らせる源氏や貴族勢は、打倒平氏の準備を着々と進めていたー鹿谷の謀議発覚後、後白河法皇の裏切りに業を煮やした清盛は、ついに法皇を幽閉し、幼い安徳天皇を連れて福原遷都を強行する。
不倫相手と夏休み、キューバに旅立った女性教師を待ち受けていたのは非難の嵐だった。表題作の他、女同士の旅で始まった生々しい性体験告白大会、若い女の登場に翻弄されるホームレスの男達、など七つの短篇を収録。女性の奥底に潜む毒を描き、直木賞受賞以降の刺激的かつ挑戦的な桐野文学の方向性を示す。
恋人と初めて結ばれたあと、東京を離れ、傷ついた女性たちが集う海辺の寺へ向かった小説家キミコ。外の世界から切り離された、忙しくも静かな生活。その後訪れた別荘で、キミコは自分が妊娠していることを思いがけない人物から告げられる。まだこの世にやってきていないある魂との出会いを、やさしく、繊細に描いた長編小説。
殺すだけでなく、その人物の生きて来た痕跡までも消してしまう「消し屋」。仕事を一つ終え、オカマの蘭子とともに沖縄へ向かった消し屋のもとに、若き天才を自殺させてほしいという依頼が舞いこんだ。どうやって天才を追い詰めるのか。沖縄の地に忌まわしくも哀しい記憶が蘇る。大藪春彦賞受賞の傑作。
全寮制の名門女子高を次々と襲う怪事件。一年生が塔から墜死し、生徒会長は「胎児なき流産」で失血死をとげる。その正体を追う女探偵「黒猫」と新入生の優子に追る魔手。背後に暗躍する「ジャック」とは何者なのか?「イニシエーション・ラブ」の著者が、女性に潜む“闇”を妖しく描く衝撃のデビュー作。
警視庁公安部の倉島警部補は、自分と因縁のある元KGBの殺し屋ヴィクトルが、ロシア人貿易商のボディーガードとして日本に入国していると知らされる。そして、その貿易商が帰国前日に密会していた外務官僚が謎の死を遂げた。ヴィクトルたちを追い、倉島はモスクワに飛ぶ。緊迫の追跡捜査を描く、アクション・ノヴェルの傑作。
緑川有里は、モデル事務所を経営する横溝と知り合い、関係を持つ。すべてを手に入れて人生に飽いたような横溝に、有里は深い憐れみを感じて縛られていく。「他の男とセックスして、おれに報告してくれよ」-横溝の屈折した要求に、有里は身近な男と次々に肉体を重ねる。帰るべき場所を失って哀しく迷走する愛を描き出す秀作。
ひょんなことから相撲部屋に入門したアメリカの青年マークは、将来有望な力士としてデビュー。しかし、彼を待っていたのは角界に吹き荒れる殺戮の嵐だった!立合いの瞬間、爆死する力士、頭のない前頭、密室状態の土俵で殺された行司…本格ミステリと相撲、その伝統と格式が奇跡的に融合した伝説の奇書。
殺人の罪で服役後、極道の世界に飛び込んだ“とっぱくれ”(はねっ返り者)村上義一。組織内での栄達をひたすら目指すが、幼少から慕っていた兄貴分の美山と親分・松原との間で、徐々に微妙な立場に立たされてゆくー。高度成長期の神戸を舞台に、まっすぐに生きようとした男の姿を鮮烈に描く。