2008年8月1日発売
あの夏の夜のことは忘れられない。挑発され、怒りに駆られてナイフを握った。そして一人の命を奪ってしまった。少年刑務所から仮釈放された、中道隆太。彼は人間味溢れる保護司に見守られ、不器用ながらも新たな道を歩みだしていた。その矢先、殺人の罪を告発するビラが撒かれた。誰が?何のために?真相を求め隆太は孤独な旅を始めたのだがー。深い感動を呼ぶ、著者の代表作。
大好きなのに、いつまでも一緒にいたいと思ったのに、ぼくの心を一瞬で奪った君は“消えてしまった”。君の存在を証明するのはたった数分のビデオテープだけ。それが無ければ、君の顔さえ思い出せない。世界中の人が忘れても、ぼくだけは忘れないと誓ったのにー。避けられない運命に向かって必死にもがくふたり。日本ファンタジーノベル大賞受賞作家による、切ない恋の物語。
「フェルナンド・ペソアFernando Pessoaの名前は、ストラヴィンスキー、ピカソ、ジョイス、ブラック、フレーブニコフ、ル・コルビュジエといった1880年代生まれの偉大な世界的芸術家たちのリストのなかに入れられるべきだ。彼らの特徴がすべてこのポルトガルの詩人に凝縮されて見出される」とロマン・ヤコブソンは述べた。ペソアという名の劇場に、アルベルト・カエイロ、リカルド・レイス、アルヴァロ・デ・カンポスといった異名者たちが仮面をつけて登場する。かくして、デカルト以降の自我の神話は解体される。マラルメが無名性として、ランボーが他者として現出させたポエジーが、ペソアによって複数性として立ち上がる。「私は誰でもあり、誰でもない。私はすべてであり、無だ」。プラトンはミメシスの徒である詩人を国家から追放したが、ペソアはミメシスを称揚する。ミメシスという身振りを共振によって共有すること、それこそがペソアを読むという希有な体験だ。本書では、複数詩人ペソアの主要な異名者3人と本人名義の代表作を収録した。