2009年10月発売
闇納織「シンフォニー」の長・ノクターンに拾われ、暗殺者となるべく育てられた少女・ヒナ。いつしか彼女は「毒姫」という通り名で開の世界で恐れられるようになっていた。ある日、ヒナは、異国から来た貴族・ラドゥ伯爵の城に召使いとして潜入するよう命じられる。伯爵が城に住み始めてからというもの村の娘たちが失蛛する事件が多発。城の敷地内からは、血を絞り取られた娘の死体が出てきたという。今回の仕事は伯爵の正体を見極め、吸血鬼ならば殺すこと。初めての暗殺以外の仕事に戸惑うヒナ。さらに、当の伯爵は吸血鬼とは思えない言動ばかりで……。事件の犯人はラドウ伯爵なのか、それとも──!?
社長令嬢・絢子の新婚生活は、何不自由のないものに思われた。夫の俊男は知的でスポーツマン、誰もがうらやむ好青年だった。しかし、ふと覗かせる夫の素顔は絢子を不安にさせ、俊男との見合いを勧めたはずの姑・滝川夫人も、何気ない言動で絢子を悩ませ始める。そして、妻には理解しづらい夫と姑の微妙な関係…。親子、嫁姑、夫婦、それぞれの心理から、結婚生活がもたらす確執を描く、三島由紀夫の傑作エンターテインメント。
バブル最盛期に行なった脳梗塞患者に対する過剰融資で訴えられた大手都市銀行は、元行員の右近祐介にすべての責任を負わせようとする。右近は我が身に降りかかった濡れ衣を晴らし、銀行の巨悪を告発するべく、証言台に立つことを決意。マスコミと有能な女性弁護士の協力を得て、全面対決の構えをとった。しかし、銀行は組織の体面にかけて、なりふり構わぬ戦いを挑んできた。経済小説の旗手が実体験をもとに描く迫真のドラマ。
泥仕合の様相を呈していた裁判だったが、右近の証人出廷によって銀行の融資管理の杜撰さが明るみに出る。また、偽証の横行や印鑑偏重主義など裁判制度の限界と金融行政の欠陥も露呈される。そこへ、金融被害者問題に強い関心を持つ国会議員が登場し、事態は一気に打開されるかに思われた。しかし、事件の裏には複雑・怪奇な真実が隠されていたー。金融被害裁判の実態をかつてないリアリティで描く経済小説の傑作。
北関東で細々と探偵業を営む元刑事・古城辰郎。彼は消息を絶った熊坂茂を捜すため新宿へと向かった。古城はやがて茂が中国マフィアに拉致されたことを知り、彼を軟禁した組織の若きボス・李秀龍と会う。李は古城に組織に潜入している警察のS(スパイ)を捜し出すことを条件に、茂を解放すると持ちかけるが…。古城はSの正体を暴けるか?中国闇組織の驚愕の実態と警察組織の暗闘を活写した、迫真のシリーズ、第2弾。
突如、暴風とゲリラ豪雨に襲われる能登半島。災害はノン=クオリアが放った降雨弾が原因だった!! 無人ステルス機に立ち向かう美由紀だが、なぜかすべての行動を読まれてしまう……美由紀、絶体絶命の危機!!
能登半島の豪雨は手始めに過ぎなかった。最強の降雨弾の標的は首都・東京!「千里眼」まで読みとる機械、キネシクス・アイを相手に、美由紀は百万人以上の犠牲者が出る惨事を止められるのか!? 新シリーズ第10弾
それはまだ、八雲が晴香と出会う前の話ーークラスで浮いた存在の少年・八雲を心配して、八雲が住む寺にやってきた担任教師の明美は、そこで運命の出会いを果たすが!? 少年時代の八雲を描く番外編。
母親のようにはなりたくない。美貌と若さを利用して、すべてを手に入れてやる(『真珠の雫』)。親友の真似をして人生の選択をしてきた。ある日を境にふたりの立場が逆転。その快感が(『ロールモデル』)。過去の失敗は二度と繰り返さない。たとえ自分を偽っても、今度こそ結婚までこぎつけなければ(『教訓』)。など、幸せを求める不器用な女たちを描きだす8編の短篇作品集。第21回柴田錬三郎賞受賞作。
人材派遣会社を営む紀ノ川由希子は42歳、独身。恋人には妻子がいる。愛しているのに、会えば会うほど飢えていくーそんな心の隙間を埋めるため、逢瀬の後はいつも派遣ホストを呼んでいた。ある日、恋人が不慮の死を遂げた。若い女をストーキングした挙げ句、歩道橋から転落したという。彼がストーカー?不審に思う由希子は、真相を探り始める。男と女の欲望を精緻に描く、傑作長編ミステリー。
二度結婚に失敗したが多額の慰謝料を得た戸山いずみは、再婚を前提に二人の男と交際する。だが男たちはたがいに甘い言葉を囁きながら、競争相手を「結婚詐欺師」などと罵る。三たび教会で愛を誓うべき相手はどちらか。相談を受けた長谷川美枝子と弁護士向井明は人物鑑定に乗り出したが、善人か悪人かの評価に迷っているうちに、想定外の殺人が起きた!驚愕の結末が襲いかかる心理ミステリー。
グレーのスーツ、地味なネクタイ、きちっと刈った髪。よく独り言を呟く神経質な男。一見普通に見えるが、田中という、棒っきれのようにしか生きられないやくざ者だ。強欲な親分の下、苛立っていた。素人をいたぶり、若い衆がやるようなことをする日々。先頭に立って抗争を乗り切り、跡目をとったつもりになるが、分家を言い渡される。のし上がらねばならぬと肚を決めた。文体の実験的な試みが話題を呼んだ記念碑的な連作短編集。