この小説は自分のことを書いていると思いつめた男の危険な行動(「エロトマニア」)、マンションの惨劇がフラッシュバックして襲いかかる女の苦脳(「デジャヴュ」)、何者かが人の記憶操作をしていると勘繰った女の疑念(「ゴールデンアップル」)-正常な日常が歪んだ世界へ徐々にずれてゆき、狂気が複雑に絡み合う。人が壊れゆくその瞬間をじわりとあぶり出し、どろりとえぐり出す、渾身の連作短篇。