2009年3月25日発売
にわか雨に傘をひらき、慌てふためく街のさまを見ながら歩きかけると、結いたての潰島田の頭を入れてきた女がいた。わたしとお雪の出会いであったー。私娼窟が並ぶ向島の玉の井を訪れた小説家の大江匡は、かすかに残る江戸情緒を感じながら彼女のもとへ通うようになる。移ろいゆく季節と重苦しい時代の空気の中に描き出される、哀しくも美しい愛のかたち。永井荷風の最高傑作が、文字が読みやすく解説の詳しい新装版で登場。
芸術家志望の若者も、大学の助手も、社長の御曹司も、誰一人夏子を満足させるだけの情熱を持っていなかった。若者たちの退屈さに愛想をつかし、函館の修道院に入ると言い出した夏子。嘆き悲しむ家族を尻目に涼しい顔だったが、函館に向かう列車の中で見知らぬ青年・毅の目に情熱的な輝きを見つけ、一転、彼について行こうと決める。魅力的なわがまま娘が北海道に展開する、奇想天外な冒険物語!文字の読みやすい新装版で登場。
岡っ引きに頼まれた色事に勤しむ無宿人竜助。が、それは覗きの罠であったー「夜の足音」。将軍家光が上洛。その際の噂で自滅する武士の話ー「噂始末」。大名家の娘の縁談に関わる旗本と春日局の意地ー「破談変異」。大久保彦左衛門が今わの際で自らの恥多き人生を振り返るー「廃物」。緻密な時代背景とスリリングな展開。時代小説の名手が一気に書き上げた粒ぞろいの短篇を収録。
極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出来ない…(『瓶詰の地獄』)。読者を幻魔境へと誘う夢野久作の世界。「死後の恋」など表題作他6編を収録。
史上最大の諜報機関にして暗号学の最高峰、米国家安全保障局のスーパーコンピュータ「トランスレータ」が狙われる。対テロ対策として開発され、一般市民の通信をも監視可能なこの存在は決して公に出来ない国家機密だった。が、この状況に憤った元局員が、自ら開発した解読不可能な暗号ソフトを楯に「トランスレータ」の公表を迫る。個人のプライバシーか、国家の安全保障か。情報化時代のテロをスリリングに描いたスリラー。
暗号解読官スーザンは暗号ソフトを「トランスレータ」で解読しようとするが、解読どころか、国家安全保障局そのものの機能さえも麻痺してしまうという絶体絶命の事態に…ソフトを凍結させるパスワードを求め、アメリカ、スペイン、そして日本を舞台に、究極の天才頭脳たちが火花を散らす、時限暗号解読作戦が始まった!知的スリルと興奮に溢れ、すでに完成されていたダン・ブラウンの鮮烈なデビュー作。
彷徨い人が、うらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」という看板。興味本位で中に入ると、そこには数百もある肉らしき塊が…。彷徨い人が関係者らしき人物に訊いてみると、展示されている臓物は一つ一つ己の物語を持っているという。彷徨い人はこの怪しげな「臓物の物語」をきこうとするが…。グロテスクな序章を幕開けに、ホラー短編の名手が、恐怖と混沌の髄を、あらゆる部位から描いた、9つの暗黒物語。
北関東の地方都市で起きた風俗嬢殺し。事件担当の県警捜査一課警部補・古城辰郎は、無実の男を自殺に追い込み、警察から放逐された。家族とは別居、細々と探偵稼業を始めて2カ月、彼の許に真犯人は地元暴力団という話が舞い込む。独自の調査を始めた古城は、自分が上層部に嵌められたのではという疑念を抱く…。県警と暴力団の驚愕の癒着の実態とは。そして風俗嬢殺しの真相とは。元刑事の寄辺なき闘いを描破した探偵小説。
関税法の死角を突き、朝倉恭介が全知全能を駆使して創出した「コカイン密輸」の完璧なシステムが、予期せぬところから綻びはじめた。追及の手を伸ばす警察、暗殺を企てるCIA、そして、ついに訪れる川瀬雅彦との対決のとき。日本の犯罪史上稀にみる頭脳と凶悪さを併せ持った華麗なる野獣、朝倉恭介。闇に生きてきた者は闇に消えるー待ち受けるのは生か死か?「朝倉恭介VS川瀬雅彦」シリーズの掉尾を飾る大傑作長編。
進路調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらった知世子。彼女が幼稚園年長組の夏休み、家族旅行の道中で事故に遭い、母は帰らぬ人となった。「死にたい」「殺されたい」、からっぽの心に苛立ちだけがつのる高校2年生の夏、映画研究会OBである正岡の強引な誘いで、彼が構えるカメラの前に立つことに。レンズの向こう側へあふれるモノローグが、こわばった心を解き放つ。ゆるやかに快復する少女を描いた珠玉の青春小説。
城北大学に編入して“月光荘”の寮生となった入埜転子は、怪談会の主催をメインとするサークル“百怪倶楽部”に入部した。怪談に興味のない転子だったが寮長の戸村が部長を兼ねており居心地は良かった。だが、寮の地下室で行なわれた儀式“四隅の間”の最中に部員の一人が突然死をとげ、不気味な黒い女が現れるようになって…。転子から相談を受けた弦矢俊一郎が、忌まわしき死の連鎖に挑む!大好評のシリーズ第2弾。
孤高の伊賀忍者・霧隠才蔵。異例の長身にして、伊賀一の術者の才蔵は、徳川家の秘命を帯び、ある巻物の探索をおこなっていた。その「愛宕裏百韻」なる巻物には、徳川幕府の根底を覆す秘密が隠されているという…。だが、豊臣家再興を目論む真田幸村も、同じく甲賀忍者・猿飛佐助に巻物奪取を命じた。関ヶ原合戦後の天下争いの背後で、秘術を駆使した暗闘が開始された!今、最も注目を集める著者の傑作時代小説。
真田幸村の人柄に惚れ、「真田十勇士」の1人として配下に加わった霧隠才蔵。豊臣家に与した才蔵は、幸村から形勢逆転の“秘策”を授かり西国に赴いた。一方、徳川家康は豊臣家を根絶やしにすべく虎視眈々と大阪城を狙っていた。決戦を前に、十勇士を襲う徳川の放った刺客、根来忍者衆と隠密の切り札・柳生兵庫助。人知れず繰り広げられる大阪“闇”の陣の行方は?歴史小説の雄が壮大なスケールで贈る、戦国時代絵巻。
「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈ー誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化がー雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
人類が衰退し、マシンが君臨する未来。食糧を盗んで逃げる途中、僕は美しい女性型アンドロイドと出会う。戦いの末に捕えられた僕に、アイビスと名乗るそのアンドロイドは、ロボットや人工知能を題材にした6つの物語を、毎日読んで聞かせた。アイビスの真意は何か?なぜマシンは地球を支配するのか?彼女が語る7番目の物語に、僕の知らなかった真実は隠されていたー機械とヒトの新たな関係を描く、未来の千夜一夜物語。
凄絶な幼少期を過ごしながらも、コロンビア・マフィアのボスにまで上りつめた日系二世のリキ・コバヤシ・ガルシア。その彼が、ひとりの少女を伴い来日した。目的はライバル組織に売られ、日本警察に勾留されている部下の奪還と復讐、そして…。ひとりの男と、彼に纏わる人間たちの愛憎を描く傑作巨篇。
ゴンサロへの復讐を果たし、日本警察からのパパリト奪還を急ぐリキ。ある日、彼は、迷子になったカーサを送り届けた元刑事・若槻妙子と出会う…。安らぎを夢見つつも、憎しみと悲しみの檻の中でもがき彷徨う男と女。血と喧噪の旅路の果てに待つものは、一体何なのか?人の心の在処を描く傑作巨篇。
その標的になって生きながらえた者はいないといわれる暗殺結社“クリムゾン・ナイツ”。彼らに命を狙われているという連邦首相から護衛を依頼されたジョウだったが、契約を終えた直後に首相は殺されてしまう。任務に失敗した彼に与えられた失地回復の猶予は240時間。残された凶器のニードルガンを手懸りに、必死の捜査の末、結社の本部を突きとめたジョウたちを待ち受けていたのは、究極の殺人兵器、人面魔獣だった。
オッド・トーマスは南カリフォルニアの町ピコ・ムンドに住む20歳のコック。彼には特異な能力があった。死者の霊が目に見え、霊が伝えたいことがわかるのだ。ある日、オッドは勤務先のレストランで悪霊の取り憑いた男を見て、不吉な予感を覚える。彼は男の家を探し出して中に入るが、そこで数多の悪霊を目撃した。そして翌日に何か恐ろしいことが起きるのを知るが…巨匠が満を持して放つ最高傑作シリーズ、ついに登場。