著者 : 夢野久作
「水が濁るとよくないことがある」。そんな言い伝えのある湖のそばに住むルルとミミは、鐘造りの父が身を投げてから、二人きりで暮らしていた。夢野久作の名作が、書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどで美麗な人や獣を描き本シリーズでは堀辰雄『鼠』太宰治『魚服記』中島敦『山月記』新美南吉『赤とんぼ』を担当するイラストレーター・ねこ助によって、鮮やかに現代リミックス。人気シリーズ「乙女の本棚」の第32弾が登場。小説としても画集としても楽しめる魅惑の1冊。
ロシア革命直後のウラジオストックで、怪しい男がロマノフ王家の宝石にまつわる奇妙な体験を語る(「死後の恋」)。海難事故で無人島に漂着した兄妹が出遭った悪夢を父母宛に綴る(「瓶詰地獄」)。鼓作りの男が想いを寄せる女に贈った鼓の、尋常ならざる音色が不吉な事件を起こす(「あやかしの鼓」)-。夢と現の狭間へと誘う奇才夢野ワールドから厳選した究極の甘美と狂気、全10編。
書簡体形式などを用いた独自の文体で読者を幻惑する、怪奇探偵小説の巨匠・夢野久作。その入門にふさわしい四編を精選した、傑作集を贈る。ロシア革命直後の浦塩で語られる数奇な話「死後の恋」。虚言癖の少女、命懸けの恋に落ちた少女、復讐に身を焦がす少女の三人を主人公にした「少女地獄」ほか。不朽の大作『ドグラ・マグラ』の著者の真骨頂を示す、ベスト・オブ・ベスト!
死後の戀×アルフォンス・イノウエ、押繪の奇蹟×杉本一文。ココナツトの實×林由紀子、瓶詰地獄×宮島亜紀。恋の奇想曲×幻想銅版画。恋は残酷、神秘、憂鬱、絶望。夢野久作4つの恋の短篇集。
明治35年、東京、丸の内演芸館。美貌のピアニスト・井ノ口トシ子が演奏中、喀血して倒れた。自身の命が長くないことを悟ったトシ子は、同い年の歌舞伎役者・中村半次郎に宛て、身の上話を綴った長い手紙を送る。彼女の出生に隠された秘密とは?「押絵の奇蹟」江戸川乱歩をして「グッと惹きつけられてしまった…私は読みながら度々ため息をついた」と言わしめた表題作の他、「氷の涯」「あやかしの鼓」を収録。
ある日、ひとりの少女が自殺をした。名は彼女いわく姫草ユリ子といい、臼杵耳鼻科病院の看板看護婦として多くの患者に好かれていた。しかし、彼女のある奇妙な「クセ」が真相をうやむやにしていく…。「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」の3編から成り、奔走する少女たちを通して、この世の生き地獄を描いた幻想小説を漫画化。
極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出来ない…(『瓶詰の地獄』)。読者を幻魔境へと誘う夢野久作の世界。「死後の恋」など表題作他6編を収録。
おカッパ頭の少女のなりをした踊りの名手、大道芸人の美少年チイは、風俗壊乱踊りを踊ってワイセツ罪でつかまるが、超能力ぶりを発揮して当局者をケムにまく。つづいていかさま賭博を見破ったり、右翼玄洋社の壮士と炭坑労働者とのケンカを押さえるなど八面六臂の大活躍。大衆芸能を抑圧しようとする体制の支配に抵抗する民衆のエネルギーを、北九州を舞台に、緻密で躍動的な文体で描き出す、夢野文学傑作の一つ。