2009年7月25日発売
初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚した。諸戸はかつて蓑浦に恋していた男。蓑浦は、諸戸が嫉妬心からわざと初代に求婚したのではないかと疑う。そんなある日自宅で初代が殺された。これは恐ろしく壮大な物語の幕開けに過ぎなかったー。
大川端の船松町で辻斬りがあった。首を刎ねられ、血を撤き散らしながら舞うようにして殺されたという。その惨たらしい殺し方は手練の仕業に間違いない。しばらく前にも隣町で、同じように斬られた侍がいた。本湊町の料理屋・清洲屋の用心棒、流想十郎は、その剣法に興味を覚える。殺されたのは御徒目付で、ある不正を探っていた。想十郎は、下手人に間違えられたことがきっかけで、事件に関わることに…。
5年前、中国から同じ船でやってきた阿扁(アーピェン)たち15人。だが、毎年仲間は減り続け、残るは9人。減った6人は流〓(リウマン)となり、阿扁と会った直後に皆死んでいた。自分は死神なのか。自問する阿扁だったがー(「死神」)。歌舞伎町の暗黒の淵で藻掻く若者たちの苛烈な生きざまを描く傑作ノワール、全6編。
校内で暴力沙汰がおきて、その対応に悩む倫太郎とその仲間たち。医者である青ポンの祖父に導かれ、自分を見つめる勇気、劣等感の本性に気づき始める…。著者の没後に見つかったライフワーク『天の瞳』の最終話。大阪のささやかな居酒屋を舞台に、弱き庶民たちがこころを通わせる現代人情物語。本物の味、愛の教え、人のつながりとはなにか。著者の願いが込められた最後の新聞小説。2作品とも未完である。
ひょんなことからやくざの組事務所に出入りすることになった大学生の亮。そこは個性豊かな面々がとぐろをまく強烈な世界だった。就職先もなく、将来が見えないことに苛立ちを感じていた亮は、アウトローの男たちに少しずつ心ひかれていく。しかし、時代に取り残された昔ながらの組には、最大の危機が訪れようとしていた。人生をドロップアウトしかけた青年の一夏の熱くたぎる成長ドラマを描いた第10回大藪春彦賞受賞作。
サンタさんにお願い。クリスマスにおかあさんを届けて。高校3年の夏、携帯電話に残された過去からの留守メッセージに導かれて、佐倉有海は学校一の問題児・春川と出会った。心に同じ欠落を抱えた2人は互いの傷を埋めるように惹かれあうが、それはあまりにも拙く刹那的な恋だった。時を超えた留守電の真相が明かされる時、有海の衝撃の過去が浮かび上がる…。痛々しくて、たまらなく愛おしい、涙のラブ・ストーリー。
小磯健二は、憧れの先輩・篠原夏希に、「4日間だけフィアンセの振りをして!」とアルバイトを頼まれ、長野県の田舎に同行することに。夏希の曾祖母を中心にご親戚に囲まれながらも、大役を果たそうと頑張る健二のもとに、謎の数列が届く。数学が得意な彼は、夢中で答えを導きだすが、翌朝世界は一変していた。世界の危機を救うため、健二と夏希、そして親戚一同が立ち上がる。熱くてやさしい夏の物語。映画「時をかける少女」の細田守監督・最新映画を完全ノベライズ。
22歳の女性作家・リンが新たに執筆を依頼されたのは自伝的創作=オートフィクションだったー。なにものによっても埋めることのできない、深い孤独を抱えた彼女が語り始めた「オートフィクション」は抹殺したはずの過去を描き出す。切り取られたいくつかの季節と記憶。通り過ぎる男たち。虚実が錯綜し破綻した世界の中で、彼女が見いだしたものとは。著者渾身の傑作長編。
中年小説家「おれ」の創作パワーの源は証券会社に勤める若いOL香織との密会だ。今日も、ホテルの瀟洒なバーで待ち合わせ。だが、現れたのはプータローをしているという双子の妹・詩織だった。「おれ」はまったく性格の違う彼女に魅かれ、打ち解ける。すると詩織はルームキーを取り出し…。表題作『君はフィクション』ほか、単行本未収録の幻の3作品を特別収録した中島らも最後の短編集。
軍事政権下のミャンマー山岳地帯に、二百万ドルを積んだヘリコプターが墜落した。同じ頃、脱獄した民主化運動の活動家もこの一帯に逃げ込んでいた。情報を得て密林に足を踏み入れたのは、ドルを狙う日本人ビジネスマンと、おのれの保身のために脱走犯殺害をもくろむ刑務所副所長。逃亡と追跡の果てに、それぞれが手に入れたものはー。アジアの深き闇を描く、冒険小説巨編。
定年後、暇をもてあまして図書館通いをしていた須河内賢三は、同じ境遇の桐峰と出会った。会社勤めの思い出話で意気投合した二人のオヤジは「会社ごっこ」をしようと思いつく。駅前の喫茶店をオフィスに見立てて、「出勤」する毎日が始まった。やがて、会社ごっこは定年世代の男たちの熱い支持を得て、全国に拡大していく…。働くことの意味を独自のユーモアとペーソスで描く長編小説。
日中台の係争地・尖閣諸島の魚釣島が過激な中国系武装集団に占拠された。海上保安庁や中国大使館による説得も徒労に終わり、陸上自衛隊の特殊部隊「サイレント・コア」が派遣される。岩礁とジャングルに覆われた無人島で、両者の決死の戦闘が始まった。
太陽系国家ガンガー、そのほぼ国民全員が信徒であるという宗教組織、ナタラージャ教団の本尊、ナタラージャのヴァジュラが盗まれた。捜索を依頼されたジョウのチームが、その行方を追ってやってきたのは惑星ローデス。リッキーの生まれ故郷だった。彼が育ったのは地下都市ククル。地上に新都市ができてからはスラム化し犯罪の温床と化していた。空港に到着したジョウたちは、さっそく不気味な連中の襲撃に巻き込まれる。
ローデスは、マドックとラダ・シンという二人のボスがしのぎをけずる、ギャングに支配された惑星だった。ラダ・シンの手先に追われたマドックの娘、ミミーを助けたジョウたちは、ともに地下都市ククルに入る。たちまち異形のものの襲撃に遭ったジョウの一行は分断されてしまう。ククルはラダ・シンの魔道によって悪霊都市と化していたのだった!予期できない敵の攻撃に苦戦を強いられるジョウたちに打つ手はあるのか。
メディチ家礼拝堂に眠るミイラの内部から小さな石板状の物体が発見された。古病理学者イーディーの叔父はその石板を調査中、何者かに殺されてしまうが、死の間際にメッセージを遺していた。石板には詩のような暗号が刻まれていたというのだ。仲間とともにそれを解読したイーディーだが、その先にはさらに二重三重の謎が待ち受けていた。暗号によって護られ続けたメディチ家の驚くべき遺産とは?注目の知的サスペンス。