2009年発売
社長令嬢・絢子の新婚生活は、何不自由のないものに思われた。夫の俊男は知的でスポーツマン、誰もがうらやむ好青年だった。しかし、ふと覗かせる夫の素顔は絢子を不安にさせ、俊男との見合いを勧めたはずの姑・滝川夫人も、何気ない言動で絢子を悩ませ始める。そして、妻には理解しづらい夫と姑の微妙な関係…。親子、嫁姑、夫婦、それぞれの心理から、結婚生活がもたらす確執を描く、三島由紀夫の傑作エンターテインメント。
17世紀のパリ。都で一旗あげようと、意気揚々と上京してきた青年剣士ダルタニャン。3人の銃士、アトス、ポルトス、アラミスにひょんな行き違いから決闘を申し込まれるがー。固い友情で結ばれた4人の男が、悪玉リシュリユー枢機卿らの企みに挑む。手に汗握る冒険活劇の名作を、躍動感溢れる名訳で贈る。
ダルタニャンを逆恨みし、命をつけ狙う、妖女ミラディー。友人の危機に立ち上がる三銃士だが、敵は枢機卿と結託し、さらなる陰謀を企んでいた。フランスとイギリスをまたにかけた攻防戦の中、明らかになるミラディーの本性、ダルタニャンの切ない恋の行方は?4人の快男児が織りなす友情のクライマックス。
九十七歳の生年祝い「風車祭」を翌年に控えたオバァ・フジの楽しみは長生きと、迷惑をかえりみない他人いじり。あの世の正月と云われる節祭の日、島の少年・武志はオバァのさしがねで美しい盲目の幽霊・ピシャーマと出会い、恋におちてしまう。そのせいでマブイ(魂)を落とした武志の余命は一年弱。彼は無事、マブイを取り戻すことができるのか!?沖縄の祭事や伝承、歌謡といった伝統的世界と現代のユーモアが見事に交叉する、沖縄版「真夏の夜の夢」。
ある日、ニライカナイの神がこう告げた。「島を大津波が襲うだろう」。この危機の予言を、果たして島人は避けることができるのか?一方、マブイとしてさすらうピシャーマは、あの世に帰りたいと切に願う。武志とピシャーマの淡い恋に六本足の妖怪豚の横やりが入って、島も恋も大パニックに!?この涙と笑いあふれるマジックリアリズムの傑作は、直木賞候補作にもなって話題を呼んだ。
バブル最盛期に行なった脳梗塞患者に対する過剰融資で訴えられた大手都市銀行は、元行員の右近祐介にすべての責任を負わせようとする。右近は我が身に降りかかった濡れ衣を晴らし、銀行の巨悪を告発するべく、証言台に立つことを決意。マスコミと有能な女性弁護士の協力を得て、全面対決の構えをとった。しかし、銀行は組織の体面にかけて、なりふり構わぬ戦いを挑んできた。経済小説の旗手が実体験をもとに描く迫真のドラマ。
泥仕合の様相を呈していた裁判だったが、右近の証人出廷によって銀行の融資管理の杜撰さが明るみに出る。また、偽証の横行や印鑑偏重主義など裁判制度の限界と金融行政の欠陥も露呈される。そこへ、金融被害者問題に強い関心を持つ国会議員が登場し、事態は一気に打開されるかに思われた。しかし、事件の裏には複雑・怪奇な真実が隠されていたー。金融被害裁判の実態をかつてないリアリティで描く経済小説の傑作。
北関東で細々と探偵業を営む元刑事・古城辰郎。彼は消息を絶った熊坂茂を捜すため新宿へと向かった。古城はやがて茂が中国マフィアに拉致されたことを知り、彼を軟禁した組織の若きボス・李秀龍と会う。李は古城に組織に潜入している警察のS(スパイ)を捜し出すことを条件に、茂を解放すると持ちかけるが…。古城はSの正体を暴けるか?中国闇組織の驚愕の実態と警察組織の暗闘を活写した、迫真のシリーズ、第2弾。
暴風とゲリラ豪雨に襲われる能登半島。河川が氾濫し、橋を流され孤立状態に陥る人びと。折しも、小6の頃に旅客機事故で死亡した同級生親子の慰霊に来ていた岬美由紀は、救助活動に参加し、多くの被災者を救う。しかし、その上空に黒い影が…。災害はノン=クオリアの無人ステルス機が放った降雨弾が原因だった!!ひとり立ち向かう美由紀だが、なぜか“機械”にすべての行動を読まれてしまう…。美由紀、絶体絶命の危機ー。
美由紀の「千里眼」まで読みとる機械。それは「キネシクス・アイ」と呼ばれるノン=クオリア最新の技術だった!ターゲットのどんな思考や感情も見逃さない“眼”が美由紀を追い詰めていく。能登半島の豪雨は手始めに過ぎなかった。最強の降雨弾の標的は首都・東京!東京を海中に沈め、100万人以上の犠牲者を出す惨事を、陰謀に気づいた美由紀は止めることが出来るのか!過熱するノン=クオリアとの戦い。新シリーズ第10弾。
一心の口から語られる驚くべき八雲の過去に、晴香は涙するー中学教師の高岸明美は、他人を寄せ付けず、寂しげな目で教室にたたずむ1人の少年のことが気になっていた。彼の名は斉藤八雲。“幽霊が見える”と噂され、クラスメートから疎まれる孤独な少年を、明美は必死に理解しようとするが…迫りくる恐るべき事件の影、その先に待ち受ける最大の悲劇、その時八雲は!?謎に包まれた過去が明らかになる、衝撃の八雲少年時代編。
母親のようにはなりたくない。美貌と若さを利用して、すべてを手に入れてやる(『真珠の雫』)。親友の真似をして人生の選択をしてきた。ある日を境にふたりの立場が逆転。その快感が(『ロールモデル』)。過去の失敗は二度と繰り返さない。たとえ自分を偽っても、今度こそ結婚までこぎつけなければ(『教訓』)。など、幸せを求める不器用な女たちを描きだす8編の短篇作品集。第21回柴田錬三郎賞受賞作。
人材派遣会社を営む紀ノ川由希子は42歳、独身。恋人には妻子がいる。愛しているのに、会えば会うほど飢えていくーそんな心の隙間を埋めるため、逢瀬の後はいつも派遣ホストを呼んでいた。ある日、恋人が不慮の死を遂げた。若い女をストーキングした挙げ句、歩道橋から転落したという。彼がストーカー?不審に思う由希子は、真相を探り始める。男と女の欲望を精緻に描く、傑作長編ミステリー。
二度結婚に失敗したが多額の慰謝料を得た戸山いずみは、再婚を前提に二人の男と交際する。だが男たちはたがいに甘い言葉を囁きながら、競争相手を「結婚詐欺師」などと罵る。三たび教会で愛を誓うべき相手はどちらか。相談を受けた長谷川美枝子と弁護士向井明は人物鑑定に乗り出したが、善人か悪人かの評価に迷っているうちに、想定外の殺人が起きた!驚愕の結末が襲いかかる心理ミステリー。
グレーのスーツ、地味なネクタイ、きちっと刈った髪。よく独り言を呟く神経質な男。一見普通に見えるが、田中という、棒っきれのようにしか生きられないやくざ者だ。強欲な親分の下、苛立っていた。素人をいたぶり、若い衆がやるようなことをする日々。先頭に立って抗争を乗り切り、跡目をとったつもりになるが、分家を言い渡される。のし上がらねばならぬと肚を決めた。文体の実験的な試みが話題を呼んだ記念碑的な連作短編集。