2009年発売
システムエンジニアの俊一、妻・冴子は、世間や周囲に対し、常に一定の距離を取り、決してうち解けることがない。しかし、それぞれを縁とすることで、静かな日々を送っていた。俊一は、前妻とのあいだに子をもうけることができず離別したが、ひとり暮らしのアパートの隣に住む女・冴子の泣き声を毎夜聞き続けるうちに、関係を持ち、世帯を構えていた。そんなふたりに、彼女の妹夫婦から代理母になってくれないか、との相談が持ち込まれる。その選択を受け入れた冴子だったが、やがて、お腹が大きくなるうちに彼女の中で変調が起こり始めるー。
「あなたがお隣に引っ越してきてから、わたしの人生はまた乙女時代に戻ったかのような活況を取り戻しました」竹内京子、二十歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、就職を機に引っ越した先で、変わり者のおばあさん、杉田万寿子に出逢った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通じて、意外にも二人の間に、友情ともいうべき感情が流れ始めるのだった。半世紀の年齢差を超えた友情が、互いの人生に影響を与えていく様を温かな筆致で描く感涙の物語。
『探偵Xからの挑戦状!』とは二〇〇九年四月一日より、NHK総合テレビ『EYES』(水曜深夜)枠で八回にわたって放送された番組。一話完結。放送日の一週間前から登録者の携帯電話に「問題編」のミステリー小説を配信、登録者は犯人を推理して携帯サイトに投票、「解答編」は放送日に番組内で紹介される。本書は同番組のために執筆された小説八作品を文庫化したものである。
“あたしは悪を殲滅する組織の一員なのさ”殺人で逮捕された女ジェインは、精神科医にそう告げた。鮮やかなオレンジ色の銃で悪を葬るーそれが自分の任務だと。標的=幼児連続殺人犯、連続男娼殺し、爆弾魔…ジェインの口から語られる悪との壮絶な対決。だが、彼女の告白は「真実」なのか?すべてを監視する「眼」、雑誌に隠された暗号、斧を持つピエロ…都市伝説の不安にアメリカン・コミックのクールネスを搭載、奇術師の周到さで仕立てた、超鋭利な一気読みハイパーアクション!最終章のめくるめく反転に瞠目せよ。
天の時、地の利、人の和-。太平の世は志があればこそ成ると信じ、生きた証を民の暮らしと人心の中に残した直江兼続。その生涯は愛そのものであった-2009年NHK大河ドラマ『天地人』がもっとよくわかる脚本ノベライズ最終巻。
「ひとに媚びない、生一本な味だ」。定斎売り蔵秀、女絵師雅乃、文師辰次郎、飾り行灯師宗佑の裏稼業四人衆は、柳沢吉保をも唸らせた土佐の銘酒・司牡丹の江戸での広目を請け負う。佐川村までの道中厄介ごとを片付けつつも、知恵と技を揮った大仕掛けは今度も首尾よく運ぶのか!?シリーズ第2作遂に文庫化。
神戸・北野町にあるフランス料理店アヴィニョンに若い画家の高見雅道が訪ねてきた。夫の早すぎる死後店を守ってきた典子は、夫の療養中に買った雅道の風景画を個展のために貸すことにしたが、その絵の裏には夫の驚くべき手紙が隠されていた。経営者を続けるか悩んでいた典子の心は、雅道へと傾いていく。
シェフの加賀たちとともに老舗の看板を守るアヴィニョンを乗っ取ろうとする男女が現れた。雅道と秘かに逢瀬を重ねながらも、彼らの仕掛けた悪質な罠と対決する覚悟を決めた典子。年老いた義母や隣家のブラウン老人を支えつつ、地元の経験豊かな知恵者たちの手を携えた闘いが始まったー。
競売にかけられた伝来の指輪を落札するよう頼まれ、英国コーンウォールへ赴いたハーディング。その地で謎めいた美女ヘイリーに出会った瞬間、彼は不思議な感覚にとらわれた。いつか確かに見た顔だが、どこで会ったか思い出せない。そして目的の指輪には18世紀の惨劇に関する複雑な来歴が隠されていた…。
看護実習生・由花は実習先の病院で初恋の相手・シュンチと再会する。が、お互いの想いを確認して間もなく、二人は彼の本当の病名を知ることに。限られた「時間」を共に過ごす決意をした由花に、シュンチが遺したものは…。生命、愛、そして本当に大切なものを教えてくれる、110万部のベストセラー、待望の復刊。
何者かに競売会場から奪われた指輪。ある事件とともに姿を消したヘイリーと彼女の意外な素性。次々と悲劇に見舞われる関係者。幾多の謎に巻き込まれながら事件の真相を求めるハーディングは、14世紀の伝説へと辿りつく…。史実を背景に名手ゴダードが精緻に築き上げた、スケール感溢れる傑作ミステリー。
ボストン郊外のハイスクールでスキーマスクをした二人組による銃乱射事件が発生、生徒の少年二人が逮捕された。容疑者の一人、ジェレドの祖母がスペンサーを訪れ、孫の濡れ衣を晴らしてほしいと言う。スペンサーは調査を始めるが、警察をはじめ関係者は皆、事件に早く幕を引きたがっている様子だ。背後にはいったい何が隠されているのか?スーザンもホークも不在のなか、孤高の騎士スペンサーが少年の心の奥に潜む真実を探る。
化学専攻の大学4年生・久住恭平は、7年前の殺人事件を調べ始めることになる。真犯人へとつながる物証に接してしまったからだが、上京の際たまたま出会った女子高生の兄が被害者だったこともある。少女と同居する若手有名建築家の影がちらつくなか、有罪判決を受けて堀の中にいる母親の無罪は証明可能なのか?-。
第二次世界大戦中、ソ連の捕虜となったポーランド人将校数千人がソ連内のカティンの森で密かに虐殺された。そのなかに、フィリピンスキ少佐がいた。だが、この事件を知らない少佐の娘ニカは、母と祖母と一緒に少佐の帰還を空しく待ち続けていた。やがて彼女の前にある過去を持った青年が現れる…。美しく悲しいニカの恋の物語と共に、ポーランド史の暗部を巧みに描き出す。