2009年発売
エドガーの絵は美術シーンに衝撃をもたらし、個展を開くことが決定した。それはエドガーの新たな人生の幕開けであり、崩壊していた家族との和解の場であり、最高の栄誉の瞬間でありー彼と彼の愛する者たちにとって最後の平穏な夜となった。ついに物語は臨界に達する。そっと時を待っていた死と破滅と邪悪が猛威をふるう。溺れ死んだ双子。黒い闇に沈む船。人形。赤いバスケット。そして邪悪なる“パーシー”。愛する者に迫る死を防がねばならない。邪悪なるものを斃さねばならない。これぞモダン・ホラー。これぞスティーヴン・キング。悲しみに満ちた浄化を描くラストへ突進する最新超大作。
合併でできた地方都市、ゆめので暮らす5人。相原友則ー弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー。久保史恵ー東京の大学に進学し、この町を出ようと心に決めている高校2年生。加藤裕也ー暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン。堀部妙子ースーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な48歳。山本順一ーもっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出る腹づもりの市議会議員。出口のないこの社会で、彼らに未来は開けるのか。
国を追われ故郷を奪われ来歴を消され名前を奪われ真実を消されて千五百年。じわじわと囲まれていないことにされた海洋華厳王国の逞しき精霊。自髪の作家が千葉の建売で見た…真夏のミル・プラトー千五百年史。
経済ヤクザ、赤城との欲情に染まった関係が断ち切れない弁護士の榛名。赤城を憎みながらも惹かれる気持ちが抑えられない…これは愛なのか。そんなある日、赤城と敵対する組の中に亡き兄、竜二に瓜二つの男の姿を見つけ、榛名の心は激しく乱れる。兄は復讐を胸に、麻薬取締官のスパイとして密かに生きていた…?榛名は嫉妬に駆られた赤城から兄の目の前で犯され…。重い過去を背負う男たちの紡ぐ哀切の挽歌ー。
下町にある小さな神社の若き宮司、九津見凛。温厚な神官である彼には、都会の闇に蠢く悪霊を退治する勇ましい陰陽師・玉兎という別の顔があった。ある夜、凛は兄のように慕っていた幼馴染みで、警視庁の敏腕刑事となった宗像と再会。二人は不器用ながらも互いに愛を育んでいく。そんなさなか、宗像が捜査している麻薬事件の証拠を掴むため、内緒で巫女に化け、謎の宗教施設に潜入する凛だが…。サイキックラブコメ。
本当に客を掴んでいるのは誰かー。暁星運輸の広域営業部課長・横沢哲夫は、草創期から応援してきたネット通販の「蚤の市」に、裏切りとも言える取引条件の変更を求められていた。急速に業績を伸ばし、テレビ局買収にまで乗り出す新興企業が相手では、要求は呑むしかないのか。だが、横沢たちは新しい通販のビジネスモデルを苦心して考案。これを武器に蚤の市と闘うことを決意する。
神山佐平は、やむなき事情から家中の者を斬り、無断で江戸へ帰ってきた。わずか二年前に仕官したばかりだった。主君の死に始まる山代家の騒動はいまだ治まる気配を見せない。殿の愛妾となった幼なじみ、行方をくらました元藩士、朋輩の美しき妹、忍び寄る影。佐平は、己の進むべき道を見つけることができるのか。若々しい熱気と円熟した情感をたたえた、志水辰夫の新たなる代表作。
女体に巣食う悪霊や邪気を取り除く異能を身につけた天宇は、ある日、彼との不義が原因で夫に斬殺されたはずの秋乃と出会う。久しぶりの秋乃との情事で気を失うほど何度も精を放った天宇だったが、目覚めたとき隣に秋乃の姿はなかった。彼女は“亡霊”だったのか。帰宅した天宇を迎えた助手・瑞穂は秋乃の影に気づき、嫉妬の炎を燃やす。そして夜、瑞穂は自ら天宇に挑んでいった…。好評時代官能シリーズ第二弾。
イマドキの女子高生・小梅16歳。冴えないサラリーマンのパパ47歳。ある日、二人の人格が入れ替わってしまった。小梅になったパパは憧れの先輩との初デートや試験に四苦八苦。パパになった小梅は新商品開発で余計な発言をし、大騒動を巻き起こす。そこへ、二人を狙う怪しい女が現れ…。親の愛、家族の温かさを思い出させてくれる傑作長篇。
霊帝が崩御すると、宮中で宦官の大殺戮が起きた。この混乱に乗じて力を得た董卓は独裁者となり、皇帝を長安へ移し、洛陽の都を焼き払う。各地の叛乱は中央を離れた独自の勢力となりつつあったが、強大な董卓軍に最初に戦いを挑んだ曹操は惨敗し、次に戦った孫堅が大勝した。劉備は北方の公孫〓(さん)の元で、黄巾軍に初めて快勝する。文庫版オリジナル書き下ろし『後漢と三国の仏教事情』(一)-秦の始皇帝と兵馬俑など。
董卓に大敗した曹操は、〓(えん)州を拠点に黄巾軍を味方に引き入れていく。だが徐州の陶謙に父を殺され、仇討ちに徐州へ大虐殺の軍を進めている間、〓(えん)州で叛逆が起き、窮地に追い込まれた。朝廷では董卓が謀殺されたが、董卓軍の将たちが幼帝を奪い合い、帝は都を出て逃亡する。孫堅は急死し、息子の孫策は袁術を頼って揚州へ赴いた。文庫版オリジナル書き下ろし『後漢と三国の仏教事情』(二)収録ー漢の武帝とシルクロードなど。
祝儀の席の席順をめぐる百姓同士の諍いがついに決闘にまで発展して大騒動になったところへやってきたのは…。表題作を始めとして、関八州の犯罪や揉め事が次々と持ち込まれるだけでなく、家では訳ありの娘八重のまわりに男の影がちらついてくる。おとこ十兵衛に心休まるひまなし。好評シリーズ第六弾。
12年前に夫の礼は失踪した、「真鶴」という言葉を日記に残して。京は、母親、一人娘の百と三人で暮らしを営む。不在の夫に思いをはせつつ新しい恋人と逢瀬を重ねている京は何かに惹かれるように、東京と真鶴の間を往還するのだった。京についてくる目に見えない女は何を伝えようとしているのか。遙かな視線の物語。
何それ、信じられない!病で余命わずかになった18歳年上の夫が、「自分が過去につきあった恋人たちに僕に死期が迫ったと知らせてほしい」と言うのだ。憤然としつつも夫の恋人たちに連絡をとった私は、彼女たちと心を通わせはじめ…たくさんの笑いと希望と、明るい涙を少しだけ。実力派女性作家が贈るチャーミングな恋愛小説。
口喧嘩無敗を誇り、いじめた相手には得意の火計(放火)で恨みを晴らすーなんともイヤな子供だった諸葛孔明。奇怪な衣装に身を包み、宇宙の神秘を滔々と説いて人を煙に巻くアブナイ男に、どうしてあの劉備玄徳がわざわざ「三顧の礼」を尽くしたのか?新解釈にあふれ無類に面白い酒見版「三国志」待望の文庫化。
かつて報道カメラマンとして鳴らした柴田雄司も今はファッション専門。だが学生時代の恋人と二人の子供を乗せた飛行機がアフガンに不時着し、以前親交を深めたゲリラ部隊に拘束される。彼女の長女が自分の娘だという事実を知った時、柴田は喪われた愛を取り戻すためにアフガン行きを決意した。愛と感動のクライマックス。『ミッドナイトイーグル』を凌ぐ恋愛冒険小説の傑作。
小学生の昂としずくは母親の夏子が心臓の病気で入院したため、夏休みを北海道で過ごすことになった。羽田空港から旅立ったふたりを待っていたのは、夏子と五年前に離婚した父・生野大慈とその妹の千恵。大慈は東京の動物病院で働いていたが、いまは故郷に戻り、獣医として野生動物救命所に勤務している。母親の病状を気にしながらも、北海道の大自然に心を動かされる昂としずく。ある日、カメラマンをしている千恵と出かけた森で、しずくは傷ついた仔犬を見つける。ウルルと名づけられた仔犬だったが、日本では絶滅したはずのオオカミに著しく特徴が似ていた。