2010年12月15日発売
友人の眞姫に誘われて、美香萌は同級生の川田歩と眞姫の兄の4人で鉱物採集にいく。心の中で小石を作ってしまう秘密の体質を持っている美香萌は、石に詳しい川田のことが少しずつ気になっていく。あり時、眞姫から川田が好きだと聞かされてー(「笑う石姫」)。他にも別世界へ誘う3作品を収録した、美しくも切ない珠玉の短編集。
杏羅町ー。地方都市の片隅に広がる妖しき空間に迷い込んだ三津田は、そこで古書店「古本堂」を見いだす。ある日、親友の飛鳥信一郎を伴って店を訪れた彼は、奇怪な同人誌『迷宮草子』を入手する。その本には「霧の館」を初め、七編の不思議な作品が収録されていた。“作家三部作”第二長編、遂に降臨。
謎と怪異は、同人誌『迷宮草子』から溢れでるようにー。尚も読み進める三津田と飛鳥信一郎の周囲の異変は激しさを増していく。解き明かさなければ破滅が待つ。二人は“本”の恐怖から逃れることができるのか。最終話「首の館」の扉が開く。著者の綴る異界の源がここにある。驚愕のホラー&ミステリ完結編。
十手と鑑札を返上し、岡っ引きから足を洗って十年。「泣きの銀次」も来年には不惑を迎えようとしていた。小間物問屋の主として細々と暮らしていたある日、銀次は監禁されていた娘を助ける。実は近頃、娘のかどわかしが頻発しているという。「下手人を捕らえるため手を貸して欲しい」と言われた銀次はー。
高麗の高僧・晦然が得意の絶頂にあったその日、彼を待ち受けていたのは二度の元寇で散った高麗の兵士たちの霊であった。供養のため倭国に渡った晦然は「一然書翰」を書き記す。この奇書が、三四五年の時を経て、徳川幕府と李朝を揺るがし、柳生一族をも混乱に陥れたのだった。
一族との縁組を断り、松平定信を敵に回した立花併右衛門。だが愛娘瑞紀はなんと縁談相手の旗本家に掠われてしまう。そして定信は将軍家斉の暗殺未遂事件の黒幕探しを併右衛門にあえて依頼する。併右衛門をかばい手裏剣を肩に受けた衛悟に殺到する刺客たち。人気爆発シリーズ白熱の第七弾。
球技はダメ、運動会も嫌い。そんな雪国の少年が知った「走る」喜び。全道中学選手権で優勝、高校の陸上部でも頭角をあらわす。仲間の死、インターハイでの瀬古利彦の快走。左足の怪我と、諦めきれぬ陸上への思い。そして出生の秘密。「少年」は3年間怪我と戦い、早稲田大学競走部に準部員として入部を許される。
親が死んでも葬式に出るな!早稲田大学競走部の名将・中村清監督は、自尊心が強く、思い出みが激しく、敵だらけの老人だった。果たして、早稲田は箱根路に臙脂の旋風を巻き起こせるのか。そして、主人公の実父母とは…。箱根駅伝の選手だった著者が走ることの魅力と運命の奇跡を描く、感動的長編。
秀吉の密命を受け、難攻不落と言われた三木城に、二人の男が忍び入った。片や、かつて主君に離反し「裏切り者」と呼ばれた涼山。片や、主家への忠誠に生きる寺本生死之介。二人はともに開城工作に暗躍する。やがて明らかになる涼山の真意とは。「三木の干殺し」を題材に、「正義」のあり方を問う本格戦国小説。
退廃が翳を落とす江戸市井の片隅に、人知れず生きる男と女。色と欲、そして仮借ない世相が時にやりきれない犯罪を呼び起こす。残忍な手口で殺された乱暴者の遺体から、意外な犯罪のからくりと、その憐れな動機が浮き彫りになる「大黒屋」など、芳醇な情緒と狂おしい哀感を湛えた傑作時代ミステリー六編。
深夜、ロスの展望台で発見された男の射殺体。後頭部に二発。怨恨か処刑かー。殺人事件特捜班での初仕事に意気込むボッシュだが、テロリストが関与している可能性が浮上。FBIの捜査介入に阻まれながらも、ボッシュはひたすら犯人を追う。十二時間の緊迫の捜査を描く、スピード感溢れる傑作サスペンス。
「あなたはとことん見下げ果てた人間です」私は二十ドルぶんの通貨を、デスクの向こう側に少し押し出した。「君は二十ドルぶん、彼のことを案じていた。しかし何を案じているのか、もうひとつよくわからない」行方不明の兄オリンを探してほしいー私立探偵フィリップ・マーロウの事務所を訪れたオーファメイと名乗る若い娘は、20ドルを握りしめてこう言った。いわくありげな態度に惹かれて依頼を引き受けることとなったマーロウ。しかし、調査を開始した彼の行く先々で、アイスピックでひと刺しされた死体が!謎が謎を呼ぶ殺人事件は、やがてマーロウを欲望渦巻くハリウッドの裏通りへと誘う…。村上春樹が「愛おしい」作品と呼び、翻訳を熱望した『かわいい女』、ついに半世紀ぶりの新訳なる。