2010年2月10日発売
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。
彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進めるー軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化。
時は幕末。開明派の藩主・鍋島閑叟の下で「技術立国」を目指した佐賀藩は、ヨーロッパ産業革命の原動力となった蒸気機関の国産化を目論んでいた。中心となって奔走したのは佐野常民。類稀な行動力と、意外や涙で人心を動かす熱血漢であった。のちに日本赤十字社を設立することになる、熱き男の半生を描いた歴史長篇。
同じ車両の乗客が2人とも殺人犯である確率は1億分の1…。新宿発村上行の快速「ムーンライトえちご」で隣合わせた女性客。彼女の紙袋から漂う怪しいにおいの正体とは(「危険な乗客」)。振り込め詐欺、連続放火、交換殺人etc.日常の裂け目に潜む犯罪を描く、46万部突破の人気シリーズ「-者」スピンオフ短篇集。
未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。取材者として肉薄した前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいた。そこに舞い込んだ、女性からの奇妙な依頼。12歳で亡くした息子、等が“超能力”を有していたのか、真実を知りたい、というのだ。かくして滋子の眼前に、16年前の少女殺人事件の光景が立ち現れた。
旧家・朝比奈家に嫁いだ苑香は才色兼備の完璧な嫁。やがて、彼女がツキをもたらしたかのように、朝比奈家は隆盛を見せるが、夫の妹・真希は、苑香にいいしれぬ違和感を覚える。そして、苑香を嫌悪する者は、なぜか次々と姿を消す。はたして彼女は何者なのか。ホラーと心理サスペンスが融合した傑作長編。
自他ともに認める時代小説好きの三人が、“人生を変えるほどの衝撃を受けた”短篇小説を二篇ずつ選んだアンソロジー。菊池寛「入れ札」、松本清張「佐渡流人行」、五味康祐「桜を斬る」、藤沢周平「麦屋町昼下がり」、山田風太郎「笊ノ目万兵衛門外へ」、池宮彰一郎「仕舞始」。一度は読みたい選りすぐりの名作、全六篇を収録。
武蔵を心の師とする剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを片時も忘れられない香織と、勝利にこだわらず「お気楽不動心」の早苗。相反する二人が、同じ高校に進学し、剣道部で再会を果たすが…。青春を剣道にかける女子二人の傑作エンターテインメント。
一枚の絵が「もし贋物なら、見た瞬間、苦味を感じ、本物なら甘みをおぼえる」という天才美術コンサルタント・神永美有が、短大の美術講師・佐々木昭友と二人で鑑定にまつわる五つの難題に挑戦。ボッティチェッリ、フェルメールから江戸時代の涅槃図まで、古今東西の名品たちが問いかける。美術とは何か。