2010年発売
お前は、運命を信じるか?東京を仕事場にする天才スリ師。彼のターゲットはわかりやすい裕福者たち。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎ーかつて一度だけ、仕事を共にしたことのある、闇社会に生きる男。木崎はある仕事を依頼してきた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。もし逃げれば…最近、お前が親しくしている子供を殺す」その瞬間、木崎は彼にとって、絶対的な運命の支配者となった。悪の快感に溺れた芥川賞作家が、圧倒的な緊迫感とディティールで描く、著者最高傑作にして驚愕の話題作。
両親の離婚により転校することになった音和。野川の近くで、彼と父との二人暮らしがはじまる。新しい中学校で新聞部に入った音和は、伝書鳩を育てる仲間たちと出逢う。そこで変わり者の教師・河合の言葉に刺激された音和は、鳥の目で見た世界を意識するようになり…。ほんとうに大切な風景は、自分でつくりだすものなんだ。もし鳥の目で世界を見ることが、かなうなら…伝書鳩を育てる少年たちの感動の物語。
一九四四年八月。舞台は第二次世界大戦終結直前の、ニューヨーク。「ビートを生み出した殺人事件」として知られるルシアン・カーとデヴィッド・カラマーの事件を軸に、「作家以前」のケルアックとバロウズが、ふたりで章ごとに書きつないだ幻の共作。
スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。ただし、それは私の体を、であって、心では決して、ない。--痛切な抒情と鮮烈な文体を駆使して、選考委員各氏の激賞をうけた第二十二回文藝賞受賞のベストセラー。
四国・四万十川の大自然の中、貧しくも温かな家族に見守られて育つ少年・篤義。その夏、彼は小猫の生命を救い、同級の女の子をいじめから守るために立ちあがった…。みずみずしい抒情の中に人間の絆を問う感動の名篇。
兄に借りた色鉛筆を教室に忘れてきた蜜蜂は、友人のアリスと共に、夜の学校に忍び込む。誰もいないはずの理科室で不思議な授業を覗き見た彼は教師に獲えられてしまう……。第二十五回文藝賞受賞のメルヘン。
銀色と黒蜜糖ー。白い野ばら咲く庭に住みついた2匹の美しい猫と同じ名前を持った2人の少年は何者なのか?目覚める度により深い眠りにおちてゆく少年月彦。その不思議な夢の中で繰り広げられた真夏の夜のフェアリー・テール。
熊野の山々の迫る紀州南端の地を舞台に、高貴で不吉な血の宿命を分つ若者たちー色事師、荒くれ、夜盗、ヤクザらーの生と死を、神話的世界を通して過去・現在・未来に自在にうつし出し、新しい物語文学の誕生と謳われる名作。
1965年の春休み、ラジオから流れるベンチャーズのギターがぼくを変えた。“やーっぱりロックでなけらいかん”-。四国の田舎町の高校生たちがくりひろげる抱腹絶倒、元気印の、ロックと友情と恋の物語。青春バンド小説決定版。直木賞、文芸賞受賞作。
葬式に雇われて人前で泣く「泣き屋」とその好敵手「笑い屋」の不吉な〈愛〉を描くデビュー作はじめ三篇を収録。特異な感性と才気漲る筆致と構成によって、今日の松浦文学の原型を余すところなく示す第一作品集。
高校卒業を目前に控えたあつよしに、大自然に抱かれたこころ豊かな暮らしと、そしてまた、大いなる川と別れ、旅立つときが、ついにやって来た…。映画・テレビドラマ化され、圧倒的感動を呼んだ好評のシリーズの第四部。
大ベストセラー『アブサン物語』の感動をもう一度!愛猫アブサンの死から一年、著者の胸に去来するさまざまな想いを哀切に綴る表題作他「カーテン・コール」「墓」「妻が大根を煮るとき」「夏猫」「壷」等、猫が登場する傑作五篇を収録。
今世紀フランスを代表する作家ユルスナールに魅せられた筆者が、作家と作中人物の精神の遍歴を自らの生きた軌跡と重ね、パリ、アレキサンドリア、ローマ、アテネ、そして作家終焉の地マウント・デザート島へと記憶の断片を紡いでゆく。世の流れに逆らうことによって文章を熟成させていったひとりの女性への深い共感、共にことばで生きるものの迷いと悲しみを静謐な筆致で綴った生前最後の著作。
桃子は大学に入りたての十九歳。小説家のおばさんのマンションに同居中。口うるさいおふくろや、同性の愛人と暮らすキザな父親にもめげず、親友の花子とあたしの長閑な〈少女小説〉は、幸福な結末を迎えるか?
「これを読んだらもう死んでもいい」(清水アリカ氏)とまで言われ、10代・20代の圧倒的支持をうけつつ、文学的にも異例の評価をえた中原昌也、衝撃の第一作品集。一度読んだらやめられない、二十一世紀のための文学。
水天宮の段々坂に鈴の音が鳴ると、ぼくの兄さんとよく似た少年が現れる。歳の離れた姉さんは言う。ぼくには六歳で死んだもう一人の兄がいたのだと。兄さんは作り話だと笑うのだが…著者が初めて子どものために書下ろした珠玉作。