2012年2月29日発売
豪雨で帰宅困難になった人たちの心模様を描く表題作はじめ、それぞれの日々の悲哀と小さな誇り、職場の人たちとのすれ違いや結びつきを丹念に描き出す6篇。働き、悩み、歩き続ける人たちのための物語集。
あたらしい生のほうへーひとつの命の誕生という奇跡をのせて、天体は回転しつづける。焼きまつたけとはもしゃぶ。西マリアナ海嶺のうなぎの稚魚。裏のお地蔵さん。石のうさぎ。園子と慎二。みんなのせて。赤ん坊の誕生という人生最大の一日。
迷宮のような建物〈夢宮殿〉、そこには、選別室、解釈室、筆生室、監禁室、文書保存所等が扉を閉ざして並んでいた。国民の見た夢を分類し、解釈し、国家の存亡に関わる夢を選び出す、この機関に職を得た名門出の青年マルク・アレムは、次第にその歯車に組み込まれていく。国家が個人の無意識の世界にまで管理の手をのばす、不条理で不気味な怖るべき物語。バルカン半島の国アルバニア発の幻想と寓意に満ちた傑作。訳者あとがき=村上光彦/解説=沼野充義
15世紀イタリア。中世以降、覇権をめぐってたびたび戦火が広がるなか、各国の君主たちは芸術を保護し、「ルネサンス」と呼ばれる古典の復興運動が巻き起こっていた。その時代に活躍した万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼が生涯をかけて解明し続けた、自然の洞察についての極意が詰まった遺稿の数々を漫画化。
河南省の板橋店で小さな宿屋を営む女将の三娘子は客に焼餅を食べさせ驢馬に変える妖術を使っていた。それを知った旅人が女将を騙し驢馬に変えて酷使するという唐代の怪異譚「板橋三娘子」について、その原話から成立の背景、伝播と変遷の実態を、広範な資料を渉猟し総合的に考察。原話の中国への伝来と翻案による怪異譚としての成立の背景を、関連資料の収集、舞台となった土地の歴史、物語と当時の風俗との関わり、人形を用いる幻術の特異性、さらに小説としての完成度など多面的に考察するとともに、中国の変身術が古代の自然観にもとづく「気」一元論に依拠することを明らかにする。