2012年発売
2010年の世田谷から、1992年のユーゴスラヴィアで、そして1945年8月14日の大阪でー。1945年に広島にいた祖父。大阪で生まれ育ち、2010年の東京で一人で暮らす36歳のわたし。無職生活を続ける友人の中井、行方不明の「クズイ」…。戦争や震災など過去の記憶と、65年前に書かれた作家の日記が交錯し、現実の時間が動き始める。読むものを深い思索へ誘う傑作小説。
密室状態の家で両親と兄が殺され、小学生だった彼女だけが生き残ったその事件は「僕」が12歳の時に起きた。「僕」は事件のことを調べてゆく。「折鶴事件」と呼ばれる事件の現場の写真を見る。そして…。巧みな謎解きを組み込み、エンタテインメントをのみ込む、渾身の長編。
青空、太陽、ステージ、楽器、森の濃い緑、風、テント、雨、レインコート、酒、ダンス、男と女、音楽ーロックフェスティバルの広大な空間と、そこに流れる濃密な時間をまるごと活写。掴みきれない“瞬間”をそれでも言葉で掴みとる、「夏フェス」小説。
情趣溢れる街並み、思わず息をひそめて見た美術館の絵画、ふとした出会い、大切なひととの思い出、自分を見つめ直した夜…。旅の情緒と、旅先の人間模様が、心温まる描写とともに美しく繰り広げられる七編の物語。
雨が降りしきる河原で大学生の西川が出会った動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが…。TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問ー次第に追いつめられて行く中、西川が下した決断とは?新潮新人賞を受賞した衝撃のデビュー作。単行本未収録小説「火」を併録。
隣接する老人ホーム「ひまわり苑」と「ひまわり幼稚園」は、理事長の思いつきで、相互交流を開始する。当初は困惑するものの、しだいに打ち解けてゆく園児と老人たちだが、この交流が苑と園の運営を巡り、思わぬ騒動を引き起こす。老人たちと園児らの不思議な絆、そして騒動の顛末を描いた感動と爆笑の長編小説。
原典『蜻蛉日記』ではあまり記されていない町の小路の女・冴野は、学も名もないながら、己のすべてを男に与え消え失せた美しい女であった。室生犀生は『日記』の書き手以上にこの女を愛し、犀星自身の消息を知らぬ生母の身の上に重ねて物語り、限りない女性思慕の小説とした。川端康成をして、“言語表現の妖魔”とまで言わしめた野間文芸賞受賞作。
第四のゲームで勝負を放棄し、戦人に自らの死を乞うたベアトリーチェ。心が壊れ生ける人形となった彼女の前で、絶対の魔女・ラムダデルタが新たなゲームの開始を告げる。真実は愛なき二人の魔女の手で弄ばれ、新たな駒・古戸ヱリカが1986年10月4日の六軒島に登場する。“探偵”は六軒島に閉ざされた秘密を無残に切り開くー。真実へのカケラは揃った。“展開編”ついに開幕。
“あなたの頭を悩ます謎を、カラッと解決いたします”-閑古鳥の啼く「謎解き専門」の探偵事務所に持ち込まれた七つの事件を、探偵・古谷が鮮やかに解決!密室状態の事務所から盗まれたあるものを見つけ出す「昇降機の密室」、駐車場の追突事件の真相を暴く「車は急に…」、急死した父親が残した秘伝のたれのレシピを探す「一子相伝の味」など、ミステリの名手による連作短篇集。待望のシリーズ第二弾。
「ああ辛い!辛い!もうーもう婦人なんぞにー生れはしませんよ。」日清戦争の時代、互いを想いながらも家族制度のしがらみに引き裂かれてゆく浪子と武男。空前の反響をよび、数多くの演劇・映画の原作ともなった蘆花(一八六八ー一九二七)の出世作。
嘘と偽り、裏切りと対立、計略と知謀…暗黒の世界で繰り広げられる少年たちの冒険物語。主人公トマス・ケイルを翻弄する運命が明かされてゆく!相次ぐドンデン返しの末の、予想だにしなかった驚愕の展開!三部作第一巻『神の左手』を読んでおらずとも楽しめる構成!いくつもの謎が渦巻く中、物語は破天荒なエンディングに向かって一気に加速する!この壮大な世界の秘密は最後に明らかになるのか?そしてケイルの愛と憎しみの行方は…。
小さいながらも平和な国、ポフィール国で大切に育てられてきたリリィ姫。しかし16歳の誕生日前夜、王国がとつぜん竜王に襲われる。皆が石に変えられていく中、王の機転でたった一人城から逃がされた姫だったが、ほっとしたのもつかの間、狼の群れが姫に迫る。絶体絶命の危機に彼女の前に現れたのは、無表情な美貌の騎士ランスロットであったー。
無事、アクアテラに帰還したシェルタは、自分に備わっていた強大な力の意味を知るために、父であり一族の長であるシンティリーオと向き合う決意をする。しかし父から告げられた真実は、シェルタの想像をはるかに超える衝撃的なものだった。そして同時に、シェルタの結婚話が持ち上がりー。秘されて育てられた意味、「水の一族」の起源、強大な力の理由、そして、「シェルタ」という名に込められた思い…。様々な思いが交錯する中、物語は核心に迫る。
いっぱいに涙を溜めた眼。救いを求める眼。そのとき僕は鬼の眼を見たのだ。闇に咲く光。記憶の底の人影。忌まわしい事件。暗い淵を見つめるそのまなざしの行方は?精神科医・天野不巳彦が遭遇した4つの怪しい物語。真相もまた深い淵の二重写しに…存在の不安を呼び覚ます、鬼才の恐怖譚。
この森にはね、蝮が出るのよ。誰も入っちゃいけないのよー伝統ある生田流箏の家に生まれ育った姉妹、京香と清香。二人の男の卑劣な罠によって、生来の激情が剥き出しになっていく姉。姉への複雑な嫉妬心から、自ら暗い罠に堕ちていく妹。そして、四年に一度の盛大な祭事“蝮をどり”の夜、聖なる森への入口が開くー愛と性を描き絆を描く渾身作。第二回団鬼六賞大賞受賞作。