2013年12月11日発売
深川、三好町。通りから一本それた路地に佇むのは、若草の暖簾が掛かる「百合花」。そこは“元”御家人の娘・千恵が切り盛りする、女が女として生きる仕事を探すための、女人専門の口入れ屋だ。「百合花」を訪れるのは、嫁ぎ先を追われた若い後家、事情があって大奥勤めに暇乞いをした女中など、ひと癖ある事情を持つ女たちばかりー。
寛文四年、夏。大川の畔で、一刀両断された渡り中間の死体が発見された。凄絶な斬り口に、下手人は“鬼”であるという噂が、江戸市中を駆け巡る。強すぎる正義感で、縄張り外の事件に首を突っ込む性癖から“うろつき”と渾名される定町廻り同心の空木勘久郎。彼は、“鬼”を追う道行きで、自らが“鬼”と名乗る蓬髪の浪人・陰井善規と邂逅する。
湯女に入れあげて、父親に追い出された呉服屋の若旦那、惣二郎。そんな惣二郎、刀は持てぬが侍には引けを取らぬ。女には甘いが男には手厳しい。習い事に凝ったり、人妻に惚れたりで、騒動に巻き込まれる天才の惣二郎に降りかかる事件とは!?火事と喧嘩は江戸の華!いよっ、見事なお手並み、粋だねっ若旦那!!
エリート医師が、鏡に囲まれた部屋で自殺した。その後、医学部受験を控えた一人の青年が失踪した。正義感に溢れる検事・志藤清正は、現場の状況から他殺の可能性を見破り、独自に捜査を進める。その頃、東池袋署の刑事・夏目信人は池袋の街を歩き、小さな手がかりを見つめていた。二転三転する証言のなかで、検事と刑事の推理が交差する。乱歩賞受賞が描いた、人間の心、とは。連続ドラマ『刑事のまなざし』の夏目シリーズ極上の感動長編!
六十歳を過ぎての結婚から、八十三歳の死まで、自らの「老い」と「病」を見つめた、晩年二十年にわたる珠玉の短篇を集成。三十歳年下の女性との結婚に至る葛藤と顛末を描いた「彼」「老残」。その後の結婚生活の波瀾を記す「老坂」。病と向き合う「海浜病院にて」「七十歳」。死を身近に感じる「夕映え」、そして絶筆「死に近く」-最期まで文学への情念の炎を燃やし続けた「私小説家」川崎長太郎の真髄に迫る。