2013年9月発売
著書520作を超え、質・量ともに膨大な西村ワールドを築き上げた氏。あまたの短篇作品群から、函館・十和田湖・伊豆・京都等人気の観光地を舞台にした旅情ミステリーの選りすぐりを一冊に新編集。また、徳島・祖谷渓・与論島を舞台にした、本書が初めての収録となる短篇5作品をあらたに加えたファン待望の傑作集。
数々の難事件を解決してきた名コンビ、数学者の黒江壮と文芸編集者の笹谷美緒は、十五年という永すぎた春にようやくピリオドを打ち結婚した。幸せな結婚生活を送る二人のもとを美緒の親友・佳奈が訪れた。数日前に起きた殺人事件の被害者の妻・智恵美が、八年前に事故死した佳奈の兄の元妻だという。二人には生命保険がかけられていた。疑惑を向けられ、頑なに否認する智恵美だが…。
参勤交代の陰供として旅する若武者。その正体は、藩主の末娘、茜であった。男装して柳生新陰流を遣う茜は刺客に襲われた父の窮地を救うが、江戸入り後は奔放な言動で家老の塩谷隼人を困らせている。ある日、慎重な隼人に業を煮やした茜は、刺客を討つべく藩邸を無断で抜け出す。隼人が守りに徹してきた理由はただ一つ。人を斬ったことのない若者に無茶をさせたくなかったからだった…。
「いっせーのせっ!」-楽しげなかけ声とともに、女子高生54人が、新宿駅のホームから、電車に飛び込んだ。だがそれは、始まりにすぎなかった。自殺の連鎖は、またたく間に、全国に広がっていく。様々な憶測が飛びかうなか、やがて“自殺クラブ”の存在が、浮かび上がって…世界的映画監督・園子温による傑作小説。
離婚した父親が残していった黒くて大きな犬。僕にしつこくつきまとう同級生のサダ…やっかいな中学生活を送る僕は時折、犬と秘密の場所に出かけた。その茂みの奥には、悪臭を放つ得体の知れない“肉”が埋まっていて!?日本文学史上初の兄弟ユニット作家による第46回文藝賞受賞作/芥川賞候補作。
ヴェネツィアの教会の石段で、女性の死体が発見された。死体はカトリックの女性には許されない司祭の祭服を着て、腕には奇妙な模様のタトゥーがあった。憲兵隊の大尉カテリーナは捜査を開始する。その頃、米軍基地に赴任した少尉のホリーは、旧ユーゴ内戦時の記録の公開を求める女性と面会した。ホリーは記録を調べるが、やがてその女性の死を知る。カテリーナとホリーは協力し、ソーシャル・ネットワーク「カルニヴィア」の創設者ダニエーレとともに、二人の女性の死に潜む陰謀に迫る。壮大なミステリ三部作、開幕!
ブラッドベリの幻の作品集として名高い処女短篇集『黒いカーニバル』から精選した作品にウィアード・テールズなどのパルプ雑誌に発表された作品を加えた初期傑作選。深夜のカーニバルで、団長が乗った観覧車がくるくる逆まわりするたびに奇怪なことが起こる「黒い観覧車」、かつての想い人である少女を失った湖を男が婚約者とともに再び訪れる「みずうみ」など、叙情SFの名手が贈る恐怖と幻想にあふれた24篇の物語。
一介の大尉でありながら、第41海軍管区司令官としてチャンス星系へとやってきたクリス・ロングナイフとその一行は、司令部である宇宙ステーションに到着して愕然とした。歓迎団どころか、ひとっこひとりいない!動力反応炉も停止し、非常用電源で動いているだけ…数ある海軍管区のなかでも最低の辺境星区に左遷されたわれらがプリンセスだが、それでも司令官としての職務を果たそうと持ち前の機知と財力で奮闘する!?
でたらめな地図に隠された意味、しゃべる壁に隔てられた青年、川に振りかけられた香水、現れた住職と失踪した研究者、頭蓋骨を探す映画監督、楽器なしで奏でられる音楽…日常に潜む、幻想と現実が交差する瞬間。美学・芸術学を専門とする若き大学教授、通称「黒猫」と、彼の「付き人」をつとめる大学院生は、美学とエドガー・アラン・ポオの講義を通してその謎を解き明かしてゆく。第1回アガサ・クリスティー賞受賞作。
日露戦争で活躍した軍艦「日進」と「春日」。この二隻はアルゼンチンから日本に寄贈されたもので、その縁で来日したアルゼンチンの海軍軍人と知り合った一人の日本人女性が、ブエノスアイレスへと渡ったことは歴史上の事実である。そのふたりの間に生まれた、エヴァ・ロドリゲスが本書の主人公。早くに母を亡くした彼女は、ある事件をきっかけに自身の出生の秘密を知り、タンゴ・ダンサーとして、娼婦として生きていくことを決めた。 やがてエヴァは活躍の場を、ベルリンへと移し、老舗のタンゴ・バー「エル・スール」を拠点に踊り、国内外の要人たちと夜を共にする。そこで出会ったのが、昭和通商なる会社に勤める吉川公夫だった。日本陸軍の予備役であるという彼に運命を感じたエヴァは、その関係にのめりこんでいくが……実は、吉川の正体は諜報員であり、国際社会から孤立を深め、対ソ連、対アメリカとの戦争へと突っ走る勢力に必死の工作を繰り返し、時には多重スパイも辞さない危険な男だった。 愛する吉川のため、あるいは母のルーツで祖国・日本のため、エヴァは時にナチス政府の要人から、時にゲシュタポ(秘密警察)の高官から、ベッドの中で偽りの愛をささやき、情報を引き出すようなる。エヴァだけではなく、他にも同じような女スパイが、当時のヨーロッパでは暗躍していた。また吉川は、同じ志を持つ者たちと密かに通じ、エヴァにさえ知らせず、ドイツ国外でも精力的に活動を行うが、日本の対ソ・対米戦争への流れを止めることができず、やがて二人に別れがーー。 そして半世紀を経て、ベルリンの壁の崩壊後、年老いたエヴァから、その驚くべき人生を聞き取ることになったのは、ある日本人男性ジャーナリスト。その姿は近代史の闇をノンフィクション・ノベルに仕立て、世に問うてきた著者自身の姿にも重なる。エヴァが、吉川が本当に守ろうとしたものは何だったのか? 改めて平和な現代に問いかける傑作長編!
江戸城の台所人、鮎川惣介は天性の鋭い嗅覚でこれまで数々の難事件を解決してきた。その協力者である幼馴染の親友、御広敷添番の片桐隼人が念願かなって授かったのは、なんと双子の男女であった。が、隼人の母親の心ないひと言から大騒動に。一方、惣介は家斉から西の丸への異動を命じられ、複雑な心境に。西の丸の御膳所では想像を絶する「いじめ」が展開されていた。惣介は、いじめ解消に知恵を絞るが…。
船宿「川澄」の船頭である霧太郎は、南町同心の浦部から手札を受けて、小網町界隈を縄張りとする岡っ引きでもあった。その浦部から今年の二月に米屋の主を殺害し、四百七十両を奪った盗賊の探索を命じられる。犯行後、その町内から姿を消した綱七の行方を捜し、男と繋がる棒手振をつきとめた霧太郎。その倉吉が住んでいた長屋のなかを調べてみると、柱に見覚えのある「御札」が貼ってあることに気づくが…。
謎の暗号文を苦心のすえ解読したリーデンブロック教授と甥の助手アクセル。二人は寡黙なガイド、ハンスとともに地球の中心へと旅に出た。そしてそこで三人が目にしたのは…。前人未到の地底世界を驚異的な想像力で自在に活写したヴェルヌの最高傑作を、圧倒的な臨場感あふれる新訳で。
どん底の境遇のなかで謹厳実直に物を書き続けて三十余年。不意に多少の財産を手にしたライクロフトは、都会を離れて閑居する。四季折々の自然の美しさに息を呑み、好きな古典文学を読み耽りながら、自らの来し方を振り返る日々-味わい深い随想の世界を心に染みる新訳で。
パーキング・エリアで、人の指先が発見された。事故?それとも…。自動車警邏隊の女性警官クロハは、ネット上に手がかりを残して消えた一人の男の存在に気づく(表題作)。夜の幹線道路で起きた凄惨な衝突事故。運転手はともに死亡していた。現場の痕跡からクロハが見抜く衝撃的な真実とは?(『雨が降る頃』)。『プラ・バロック』以前のクロハの活躍を描くシリーズの原点。
一人の自殺志願者が、多量の血痕を残し姿を消した。男は毎日一人ずつ旧友に電話をかけ、相手が出なければ首を吊る「死のゲーム」をしていたらしいのだが…。やがて、彼の幼馴染が次々と謎の死を遂げ始める!仲間の一人だった作家は、事件を追ううち、心の奥に封印された少年時代の忌まわしい記憶へと辿り着く。錯綜する推理の先に立ち現れる驚愕の真相とは?三転四転する推理!炸裂する三津田マジック!!
中学の新米教師・片野厚介は、クラスの少年たちからとある写真を見せられる。立入禁止の神社の森に、金色に輝く豪華絢爛なお宮と、狛犬に似た狼像があるというのだ。森の探索を始めた厚介たちに、謎に男、怪しい白装束の集団、そしてとびきりの美少女が近づく。彼らの目的はいったい何なのか?謎に迫る厚介たちは、やがて森の奥に哀しい物語を見つけ出す…。
小石川養生所で旅の浪人が息を引き取った。その浪人が残した狛犬の「阿」の絵が刻まれた銅板。南町奉行所隠密廻り同心の乾蔵人は、その謎に挑むことに(「仕置屋の女」)。悪名高い歴史上の人物、河内山宗春の騒動を史実を交えて描いた「河内山異聞」ほか、冷静でいて人への優しさが溢れる熱血漢・乾蔵人の活躍を描いた大人気シリーズ第四弾。無外流の剣が煌めく!
盗人と武士。身分は違うものの、竜吉と及川左京は、酒を酌み交わし意気投合した。二人は再会を約束したが果たされなかった。左京が突然病死したのだ。その後、左京の朋輩二人が深編笠の侍に立て続けに斬られた。左京は病死ではなく、朋輩四人が殺めたのだと竜吉は確信する。竜吉と同心・尾上源蔵は、それぞれの思いを胸に、深編笠の侍の正体を追い、真相を暴く!文庫書下ろし、長編時代小説。