2014年1月11日発売
幼年 その他幼年 その他
「幼年」は、堀辰雄の『幼年時代』の影響の下に描かれ福永武彦の“幼くして失った母”という原風景である。そして“母”は、はかなく淡い観念として、この作家に、美しくも深く悲しい旋律を奏でる。意識と無意識、現実と夢の境を行きつ戻りつ、ロマネスクな二重奏組曲。福永文学の輝ける魅力をたたえた十編の作品集。
血の探求血の探求
1974年の晩夏。休職中の大学教授である“私”は、サンフランシスコのダウンタウンにオフィスを借りた。そこは元続き部屋で、内部には隣室につながるドアがあった。ある日、そのドアから精神分析のセッションが聞こえてきた。“患者”は若い女性で、養子のため自分の出自がわからず、アイデンティティの欠落に苦しんでいた。“私”は息を殺して、産みの母親について調べる患者の話に耳を傾け続け、やがてふたりに気取られないようにしながら母親捜しの手伝いを始める。彼女はなぜ養子に出されたのか。“血の探求”の驚くべき結果とはー。本文のほとんどが盗み聞きで構成された、異色かつ予測不可能な傑作ミステリ。
PREV1NEXT