2014年3月11日発売
浅草寺裏手で仏壇・仏具を商う浅深屋半兵衛は、裏稼業として張形などの淫具を扱っている。秘伝の淫道を口授する集いに加わった半兵衛は、名門松村家の綾姫より密命を受ける。綾姫の義妹、観月院を還俗させてほしいというのだ。半兵衛は特製の淫具をあつらえて、観月院を性技で昇天させ還俗を決意させたが、この依頼の裏にはある大名家の秘事が隠されていた…。第二回団鬼六賞優秀作受賞作家が描き出す、時代官能の傑作!
原子力発電所をかかえる閉鎖的な地域社会のなかで起きた一件の不審火。原発の危険性と経済的依存との葛藤を劇的に描きつつ、“原爆文学”と“原発文学”とを深く結びつけた記念碑的労作「西海原子力発電所」。チェルノブイリ原発事故を受け、核廃棄物輸送事故による被曝と避難生活がもたらした生活の破壊と人間の崩壊を予言した「輸送」。3・11原発事故を経験した現在から、先駆的“核”文学はいかに読み解かれるか。
農園を経営する砂田家の長男・謙太が誘拐された。長野県警の城取警部補は、知事の特命で捜査に派遣された信州大学の四月朔日教授とともに現場へ。離婚して家を出た謙太の母親が「リュウにならなきゃいけない」と呟いていたとの証言を得る。それを聞いた四月朔日は、信州に伝わる泉小太郎伝説の龍のことだと断言するが…(表題作「龍の行方」より)。古くから伝わる五つの民話が事件の鍵を握るー?
笑いあり、涙あり。テンポのいい会話と肩の凝らない文体で、「新しい時代小説だ!」と大好評を博した『本所おけら長屋』の続編がついに登場。お騒がせコンビ万造・松吉に、振り回される大家の徳兵衛、わけあり浪人・島田鉄斎に左官の八五郎、おかみさん連中……。「人情に厚く、おせっかいで大間抜け」な江戸っ子パワーはさらに倍増。▼婚礼を控えた久蔵とお梅を思うあまりの万松(万造・松吉の略)のおせっかいが大波乱を巻き起こす「だいやく」、万造と迷子の勘吉との胸に迫る交情を描いた「まよいご」、鉄斎の元主君・高宗が長屋を訪れて大騒動になる「こくいん」など、読みだしたら止まらなくなる力作6篇を収録。▼前作以上に、笑える、泣ける、温まるの江戸落語さながらの世界を、小説で表現した意欲作。『永遠の0』の百田尚樹氏をして「あかん、泣いてもうた!」と感嘆せしめた絶好調の連作時代小説シリーズの第2弾、満を持しての登場。▼文庫書き下ろし。
警視庁捜査三課のベテラン刑事・萩尾秀一はなぜ真犯人は別にいると思ったのか?浅草署留置係の小西逸男が最後の最後に見た光景とは?警視庁通訳捜査官の城正臣と保安課の上月が切り込む犯罪の全貌とは?そして、残酷な犯人への怒りを自制する所轄刑事課の吉川圭一。個人の尊厳と社会の秩序のために、世間は何を求めたのか?警察小説の第一線を走る著者による、新鮮な驚きに満ちた珠玉の短編集。待望の文庫化。