2014年5月9日発売
昭和二十一年、浅草の劇場・ミリオン座に拾われた万歳芸人の善造、活字好きな戦災孤児の武雄、万年映画青年の復員兵・光秀。年齢も境遇も違う三人と財閥令嬢を自称する風変わりな踊り子のふう子は、共同生活を始める。戦争で木端微塵になった夢や希望を取り戻しながら、戦後を生き抜く人々を描く傑作長編。
幼馴染みの倉田ミズ、三浦誉、恵悠は廃校になった中学の最後の卒業生。揺らぐ三角関係の中心には、去年の夏休みに変死体で発見された担任教師をめぐる秘密があった。夏が再び訪れ、廃校舎に隠した罪の記憶が三人を追いつめてゆく。ほの暗い恐怖を漂わせながら、少年少女の切ない関係を瑞々しく描く傑作青春小説。
米沢の下級藩士・雲井龍雄。安井息軒が主宰する三計塾きっての俊才と謳わる。藩から探索方を拝命し活躍するが、幕末狂乱の嵐は奥羽列藩にも及ぶ。やがて一方的に会津鎮撫の挙に出た薩摩に龍雄は激しく憤り、「討薩ノ檄」を懐に奔走するがー。二十七歳の短く激しい生を生きた悲劇の志士を描く異色長篇。
弱電会社の社員の夫とともに娘を連れてパリから日本に戻った永子。同居する姑や小姑とのトラブル、娘の教育問題…外交官の両親をもち海外暮らしが長かった永子は日本的な気苦労のまっただ中におかれる。そんな中、陰ながら永子を支えるひとりの男の存在で心は揺れ動く。家庭という迷宮の光と影を描き出す、傑作人間ドラマ。
投げ銭でおなじみの岡っ引、江戸の名探偵・銭形平次。少し間の抜けた子分のガラッ八を相棒に、難事件を鮮やかに解決。お上より十手捕縄を預かりながら、善意の下手人は許し、偽善者をやりこめる。推理と反骨、人情の名作捕物小説シリーズから傑作を厳選。美しい妻・お静との馴れ初めを描く表題作など八篇とエッセイを収録。
人里離れた女学校で孤児として育ち、教師となったアナベルは、意地悪な校長と先生たちに囲まれた不遇な日々を送っていた。ある日、王室の貴婦人が突然学校を訪れ、見たこともないほど美しい赤い靴をふとアナベルに差し出す。靴はアナベルの足にぴったりだった。それを見た貴婦人は、なんとアナベルを幼い公爵の家庭教師に指名。思いがけずアナベルは公爵家で働くことになった。豪奢な城には、公爵に無関心な後見人サイモンも暮らしていた。アナベルのひたむきな愛情と明るさに、臆病だった公爵は無邪気な子供らしさを取り戻していく。そして、冷たく閉ざしていたサイモンの心には、忘れていたぬくもりと情熱がめばえ始めていた。ところが、アナベルと公爵が何者かに命を狙われて…。RITA賞受賞作家が贈る“シンデレラの赤い靴”シリーズ開幕!
ロンドンで半年間の仕事を終え、カースリーの村にようやく戻ってきたアガサのもとに、初の探偵仕事が舞いこんだ。依頼人はハイキングクラブの女性。仲間が貴族の領地で殺された事件を調べてほしいという。さっそく手がかりを求めて貴族の屋敷を訪ねると、そこに待ちうけていたのは鼻持ちならない執事。「素人探偵」と一蹴され、いつも強気なアガサも上流階級の雰囲気のなかで調子がでない。そこへ助け舟を出してくれたのは、愛しの隣人ジェームズだった。夫婦と偽って捜査をすることになり、かりそめの夫婦生活を送るふたりに意外な心境の変化が訪れる。いっぽう、肝心の捜査は嘘つきだらけのクラブ仲間や貴族、くだんの食えない執事に翻弄されるばかりで!?