2014年6月11日発売
若草色の暖簾ー口入れ屋「百合花」は、仕事を探す女性を専門にしている。出生、家庭、結婚など、さまざまな悩みを抱えて、女たちはこの店を訪れる。「百合花」の女主人・千恵は、父と弟を亡くしてから独り身を通してきた。しかし元婚約者の孝四郎に、裕福な商家の若い娘との縁談が舞い込む…。お千恵自身の生き方と幸せを問う、シリーズ第三巻。
虚無僧・胡空は、元越後村石藩の藩士で剣の達人。藩首脳の汚職を知ってしまい、追われる身となった胡空は、人目を避けて江戸の一隅に隠れ住んでいる。胡空の剣の腕と過去を知った廻船問屋の葭屋徳兵衛は、お上が手を出せない悪を始末する闇の稼業、『仕置き業』へと胡空を誘う…。ベテラン作家、岳真也の新境地。念仏唱えて悪を斬る!
新聞配達の早朝の町で、暗天に閉ざされた北欧の地で、染織家の妻と新たな暮らしを始めた仙台の高台の家で、そして、津波に耐えて残った小高い山の上でー「私」の実感をないがしろにしない作家のまなざしは常に、「人間が生きていくこと」を見つめ続けた。高校時代の実質的な処女作から、東日本大震災後に書き下ろされた短篇まで、著者自ら選んだ九篇を収録。
第一楽章「白日の序曲」の初稿発表より四十年の歳月を経て完成した「連環体長篇小説」-全四楽章のうち、旧作の新訂篇である第一楽章から第三楽章までを本書に収録。異姓同名の男女の織りなす四つの世界が、それぞれ独立した中篇小説でありながら、重層化され、ひとつの長篇小説となる。十五年戦争から、敗戦・占領下、そして現代にいたる、日本人の精神の変遷とその社会の姿を圧倒的な筆致で描破。
生れ育った町が忘れられず、人々は長い避難生活から海塚に戻ってきました。心を一つに強く結び合い、「海塚讃歌」を声を合わせて歌い、新鮮で安全な地元の魚を食べ、ずっと健康に暮らすことができる故郷ー。密かにはびこるファシズム、打ち砕かれるヒューマニズム。批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作。