2015年11月発売
軍政下のチリ、奇抜な空中詩パフォーマンスでその名を馳せた飛行詩人カルロス・ビーダー。複数の名をもつ彼の驚くべき生涯とはー。『アメリカ大陸のナチ文学』から飛び出したもうひとつの戦慄の物語。
五歳の葉月貴夫はその美貌ゆえ暴漢に襲われ、性器を切断された。性欲に支配される芸術に興味を持てなくなった彼は、若いころから美食を追い求めることになる。やがて自分が理想とするレストランを作るが、美女のスタッフが集まった店は「背徳の館」と化していく…。巨匠・筒井康隆が古今の日本語の贅を尽くして現代を描き未来を予言する、文明批評小説にして数奇極まる「聖人伝」。
幼い頃に家族を火事で失い天涯孤独の身となった木山慎一郎は友人も恋人もなく、自動車塗装工として黙々と働くだけの日々を送っていた。だが突然「他人の死の運命」を視る力を手に入れ、生活は一変する。はじめて女性と愛し合うことを知った慎一郎の「死の迫る人を救いたい」という思いは、無情にも彼を窮地へと追いやり…。生死を賭けた衝撃のラストに心震える、愛と運命の物語。
文学新人賞を受賞した加代子は、憧れの“小説家”になれる…はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドル。すべての注目をかっさらわれて二年半、依頼もないのに「山の上ホテル」に自腹でカンヅメになった加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる。大手出版社に勤める遠藤から、上の階で大御所作家・東十条宗典が執筆中と聞きー。文学史上最も不遇な新人作家の激闘開始!
激動の幕末。江戸で暮らす会津藩士の山浦鉄四郎は、質実剛健な会津士魂に馴染めず、天下国家を論じることもなく、ただ平穏な人生を望んでいた。そんなある日、家中の美しき薙刀の達人・中野竹子と出会う。互いを思いながらも、新撰組隊士となった鉄四郎は内乱の渦に呑まれていく。友が死に、自身が傷を負っても刀を振るうのは、竹子の元に生きて帰るためー。魂を震わす歴史長編。
「ソクラテスより頭の強い人間はいますか」聞き間違えた神託のせいで頭突き勝負が始まって(「ソクラテスの石頭」)。論理学の講義が苦痛で仕方がない未来の大王は…(「アリストテレスの論理が苦」)。若く美しい婚約者とモメた四十男のヘーゲルは思慮深すぎる手紙を書くが(「ヘーゲルの弁証法的な痴話喧嘩」)。哲学史に燦然と輝く巨星たちを笑いのめし、叡智の扉へと誘うユーモア小説。
巨大な波が押し流した町、空が落ちて壊れた土地ー災厄に見舞われた沿岸へ、舳先と艫が同じ形をした小さなフェリーは、中古自転車と希望を載せて進む。失恋したての青年、熊を連れた男、200人のボランティアと小動物たち。そして被災地では、心身を傷めた人々を数限りなく受け入れながら。東日本大震災の現実をつぶさに見つめた著者による被災地再生への祈りに満ちた魅惑の物語。
昭和48年、小学校3年生の裕樹は県境に建つ虹ヶ本団地に越してきた。一人ぼっちの夏休みを持て余していたが、同じ歳のケンジと仲良くなる「遠くの友だち」。あなたの奥さまは私の妻なんですー。お見合い9回の末やっと結婚にこぎつけた仁志が突然現れた男にそう告げられる「秋に来た男」。あのころ、巨大団地は未来と希望の象徴だった。切なさと懐かしさが止まらない、連作短編集。
文化二年の元日。年賀の挨拶で賑わう大黒屋の目下の話題は、信一郎とおりんの祝言の話と次の船団長の人選であった。そんな中、年賀客より武州・上州など関八州の田畑の荒廃と無宿者の増加という情報がもたらされ、重ねて「影」からは「八州探査」の指令が下った。天松、忠吉を供に上州高崎に入った総兵衛は、早速賭場に潜入する。盆茣蓙の奥には異彩を放つ異人の用心棒がいた…。
若だんな、そんなに頑張ってだいじょうぶ?両国を仕切る親分の提案で、大店の跡取り息子三人が盛り場での稼ぎを競うことに。体の弱い一太郎は、果たして仕事を見つけられるのか。妖と恋人たちが入り乱れるお見合い騒動、記憶喪失になった仁吉、生きがい(?)を求めて悩む幽霊…兄やたちの心配をよそに、若だんなは今日もみんなのために大忙し。成長まぶしいシリーズ第12弾。
奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。二人は「兄妹」を誓い、寄り添い合って成長したが、いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末はー。南島の濃密な空気と甘美な狂おしさに満ちた禁断の恋物語、待望の文庫化。日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。
文化祭公演を終えて引退する予定だった先輩たちと演劇地区大会出場を決意した都立駒川台高校演劇部。一丸となって脇目もふらずーのはずが、次々起こる脚本見立て盗難事件、密室ケチャップ汚れ事件に作品パクリ疑惑事件。他校ライバルも出現、イケメンの西野先輩とも急接近!舞台監督の毎日は謎と刺激がありすぎる!!地区大会は突破できるの?ドキドキ楽しい青春ミステリ第2弾。
創薬チーム、それは原因不明の難病奇病に苦しむ者の最後の望み。主治医からの依頼を受け、限られた時間内に病のメカニズムを解明、対応する新薬を創造して患者を助けるのが彼らの役割だ。調査担当の薬師寺千佳と化学合成の鬼才・遠藤宗史。ふたりは、数々の難題をクリアして得た成果で、ある女性を救おうとしているのだがー。化学×人間ドラマ。ミステリの新たな扉が開かれる。
ヒトの脳下垂体と睾丸を移植された犬が名前を欲し、女性を欲し、人権を求めて労働者階級と共鳴し、ブルジョワを震撼させる(「犬の心臓」)。繁殖力を高める生命光線を浴びて、大量発生したアナコンダが人々を食い荒らす(「運命の卵」)。奇想天外な空想科学的世界にソヴィエト体制への痛烈な批判を込めて発禁処分となった、20世紀ロシア語文学の傑作二編を新訳で収録。
「きさまは恋に落ち、自分の王国を手に入れる」皇帝軍の兵士だったとき、おれは死神を見た。死神の手を逃れたおれは、深い森の中でひとりの少女に出会う。おれたちは恋に落ち、そして…。元兵士の若者が深い森で出会う男装の美少女、狼の怪物、城に住む魔女。文豪アンデルセン最初期の作品に、カーネギー賞受賞作家サリー・ガードナーが新たな息吹をもたらす。不思議と怪奇が詰まった美しくも不気味な物語。
「当店には各種、極上のケーキがそろっております」紫一色に染められたケーキショップの、八ページにわたるメニューに並ぶのは“よろけヴァイオリン”“惚れ睡蓮”そして“陽気な骸”…。パティシエがコレクションする“あるもの”と引き換えに、メニューにはない特製ケーキを頼んだ男の運命は?連作「12人の蒐集家」と中編「ティーショップ」を収めた東欧の鬼才ジヴコヴィッチによる、愛らしくも不気味な世界。摩訶不思議なファンタスチカの世界へ、ようこそ。
狐憑きと噂される花魁、川に消えた子供、息子を探す山姥…。浅草川に浮かぶ島、日本橋は箱崎。汐と水が入りまじり、色々なモノが流れ集まり川が三つに分かれるところ。この川辺にある若狭屋には、ちょっとさみしい魂がふらりとやって来る。にんげんもあやかしも隔てなくー。ここはこの世とあの世をつなぐ不思議な船宿。女将が出合う、八つの愛おしいあやかし話。