2015年12月11日発売
なぜ、実弟・信行を殺さねばならなかったのか。なぜ、松平元康(後の徳川家康)と同盟を結んだのか。なぜ、藤吉郎を重用したのか。なぜ、本願寺との戦いを続けたのか。なぜ、林秀貞を追放したのか。なぜ、松永弾正の裏切りを許したのか。そしてなぜ、明智光秀が裏切ったのか。-全ては「私記」=日記にある。
過去と現在。記憶と現実。存在と不在。自己と他者。周到に仕組まれた言葉の奔流が、確かと信じられている輪郭をことごとく溶かし、境界を混じりあわせ、めまいにも似た乱反射を読む者に引き起こす。「読むことが、私の生きている証し」老練な読者たる著者が、最初期二作品を含む初期作品群から、現在の眼で選んだ短篇集、第三弾。
言葉の循環「考速」。世界は連なる「絵画」。命のざわめき「街を食べる」。毒はゆるやかに「みのる、一日」。物語の中で僕らは「さよならクリストファー・ロビン」。解けない問題「田舎教師の独白」。月の光を浴びて「塔」。騒がしい店内で「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」。記憶の交錯「きことわ」(芥川賞)。メレンゲの不安「波打ち際まで」。郷里で謎の言葉が「うらぎゅう」。亡き愛人の影「夫を買った女/恋文の値段」。現代文学の新たなる地平、シリーズ第八巻(最終巻)。
学問の家に生まれた父・菅原孝標と『蜻蛉日記』作者の妹にあたる母との女の手になる、平安中期の女流日記文学。物語への憧憬を育まれる少女時代。十三歳で父の任国上総から帰京。乳母や姉との死別。宮仕えや家庭生活で不如意な現実を生き、仏への信仰に傾倒、夫の急逝までの半生を回想する。晩年の諦観に至るまでの胸中の遍歴が鋭い感性で描かれる。
二〇一一年三月一一日、東日本大震災が発生。巨大津波の混乱の中、福島県いわき市でも無数の車が流された。その中に東京で同僚の議員秘書を殺害し、大金を奪い逃亡した男の車もあった。男の捜索を依頼された探偵神山健介は、足取りを追い被災地を北上する。過酷な状況下で、やがて炙り出される権力の影。男は何を目指して漂流するのか。辿り着いた地で知る、衝撃の真実。
隣の教室で偶然出会った女の子。想いを寄せるが、彼女のある噂を耳にし、自分から距離を置いてしまったー。心の奥底にずっと閉じ込めていた中学生時代の甘くもほろ苦い記憶。それを鮮やかに甦らせてくれたのは、愛娘が森の中で見つけた懐かしい花だった(「はじめて好きになった花」)。大切な過去、そっとしまっておきたい思い出を抱えて生きるあなたに贈る、珠玉のラブストーリー集。
画廊の女社長が殺された。赤坂署に捜査本部が設置され、警視庁捜査一課で加門昌也警部補が率いる第五係に捜査指令がでた。第一発見者で被害者との関係も噂される画家の広瀬が疑われるが、決め手がない。そんな中、関係者の何気ない仕種に、加門は注目する(「炎の代償」)。捜査一課、生活安全課…警視庁の各課の刑事たちが、靴底をすり減らしながら、とことん犯人を追う!
「祖母は真鍋さんのこと、ふしぎな人だよ、あの人と話すだけで何でも解決できるんだよって」-東京から流れ着いて半年、「やまびこ不動産」で働く真鍋智也は、温かい同僚と美しい自然に、自分を取り戻しつつあった。やがて真鍋の前には、亡き兄の所縁を辿る女性や、母親との関係に悩む少年など、迷いを抱える人々が現れて…。清涼な夏の八ヶ岳で、切なる想いが響き合う。
太物店『山形屋』の主は、店に置き忘れられた三十両の持主探しに嫌気がさしていた。貼紙をしても現われるのは偽者ばかり。ついに本人かと安堵するも、受け取りに来たのは代理の男だった。それでも主は男を信用するが、話を聞いた青柳剣一郎はあまりの大金と都合のよい話に不審を抱く。しかし、男はすでに行方をくらましていた。同じ頃、掬摸の死体が発見され…。
日々堂のお葉の元に山源の総元締源伍から文が届いた。だが、筆蹟があまりにも弱々しく、女ごの手になる文にみえる。いぶかるお葉は思い切って山源を訪ね、驚愕した。源伍は口も回らない状態で臥していたのだ。さらに縋りつくような目をお葉に向けて言葉を吐いた。家を飛び出したきりの息子源一郎を捜して欲しい、と(「花卯木」)-江戸に涙と粋の花を咲かす哀愁情話。
すこぶる男前で気ままな町場暮らし。「浮かれ鳶」と綽名される本多控次郎は貧乏旗本の次男坊である。弟七五三之介が奉行所与力に婿入りし、事件探索に手を貸すことに。真面目すぎる弟を相棒に、小石川養生所を襲う連続不審死の真相を探る。やがて、謎の密売人が控次郎の家族にまで牙を剥く。曲がった事を許さない控次郎の正義の剣が、世に蔓延る悪を討つ。
東京で暮らす月光のもとへ、故郷の京都に残した双子の妹・冬花が殺人罪で逮捕されたという連絡が入った。被害者は冬花の高校時代の同級生・川井喜代。妹がなぜあの女を?二十年前、冬花を弄んだ喜代が許せず二人を引き離したはずだったのに。帰省した月光は、冬花に思いを寄せる男・杉田とともに真相解明に乗り出す。だが、浮かび上がるのは成功者となった喜代の疑惑と悪行、そして孤独な人々を引きずり込む黒い罠だったー。
存在感を消してしまった少女。瞬間移動の力を手に入れた引きこもり少年。危険な発火能力を持つ、木造アパートの住人…どこかおかしくて、ちょっぴり切ない、超能力者×恋物語。恋愛小説の名手が描く、すこし不思議な短編集。
尖閣諸島に中国駆逐艦「石家荘」が接近、日本政府は海上自衛隊護衛艦「あきづき」を派遣した。中国国内の政治情勢悪化にともない、両国の情報戦が激化している矢先のことだった。一方、新型ソナー兵器開発に携わる海自技官木村美奏乃は、五年前に潜水艦事故で亡くなった婚約者の死の謎を追っていた。やがて、「あきづき」が魚釣島近海で消息を絶ち、緊迫する東シナ海へ、わが国初の女性首相御厨は、新型ソナー兵器を搭載した潜水艦「こくりゅう」投入を決定。木村も乗艦することになったが…。緊迫する日中関係はどうなるのか。婚約者の命を奪った事故の真相とは?沖縄トラフの海中を舞台に、最先端技術と頭脳を駆使した熾烈な戦いを圧倒的迫力で描いたミリタリー・サスペンスの傑作!