2015年9月4日発売
ジャンルを越え、小説の面白さをとことんまで追求した画期的アンソロジー。間に合うか? 時間こそが最大の敵! 第4回配本、第20巻『疾走する刻』は、刻々と迫る時間との闘いに挑む主人公たちの物語、9編! ●編集委員 逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏 「冒険の森へ」では、長編36編については、ゆるやかなクロニクルを形成させたつもりだ。 福井長編は2000年8月刊であり、かろうじて20世紀に間に合った。 それにしても、馬に乗って疾走する作品がないのはなぜか。 ロケットが宇宙空間を駆ける作品もない。 ないはずはないのだが、時すでに遅し。 あ、疾走といえば「走れメロス」を忘れていたぞ。 邪悪に敏感なメロスは、暴虐無謀なるこの「冒険の森へ」に激怒しているはずだ。 [収録作] 【長編】 宮部みゆき「スナーク狩り」 福井晴敏「川の深さは」 【短編】 海音寺潮五郎「男一代の記」 佐々木譲「鉄騎兵、跳んだ」 【掌編】 眉村卓「走る」 景山民夫「ポルシェが来た」 中島らも「自転車行」 船戸与一「深夜ドライブ」 北方謙三「高速道路」
親の都合でオーストラリアに引越し、現地の小学校に通うことになった真人。言語の壁を乗り越え逞しく成長するが──。『さようなら、オレンジ』から2年。注目を集める新人作家の、新作長編!
突然、アメリカ空軍がDACT(異機種間模擬格闘戦訓練)を申し込んできた。さきの戦技競技会で飛行教導隊を倒したチームと戦いたいのだという。指名された風谷修、鏡黒羽、漆沢美砂生、菅野一朗らのF15イーグルが対峙するのは、アメリカの至宝、世界最強のステルス戦闘機との呼び声高いF22ラプター。なぜアメリカ空軍は性能を隠したいはずであるステルス戦闘機との訓練を申し込んできたのか。アメリカの思惑に航空自衛隊が翻弄される!
朝から妻に小言を言われ、満員電車の席とり合戦に力を使い果たす高橋は、どこにでもいるサラリーマン。しかし会社の開発事業が頓挫して責任者が左遷され、ところてん式に出世。何が議題かもわからない会議に出席する日々が始まった。そんなある日、見知らぬ老女にパンをもらったことから人生が動き出し……。他、神戸の焼肉、姫路おでんなど食べ物をめぐる、ちょっと不思議な物語三篇。
死者たちが生前の記憶を仮想人格として保って暮らす電脳空間、すなわち死後の世界。ここで私立探偵を営む朽網に持ち込まれる難事件は、現実世界の歪みが投影されたものなのか? 「暴力」「犯罪」の概念があらたに登場。近々、殺人」が可能になるなんて噂もあったり……。警察なんかあてになりゃしない。SFハードボイルド・ミステリー『優しい煉獄』の続篇にしてシリーズ初の長篇!
ポストに入っていた一枚のビラ。「家事力、主婦力、主夫力を発揮させましょう」夫と結婚して十五年。家事が、「力」だなんて!美菜子はビラに導かれるようにハウスキーパー事務所を訪れると、いきなり実力を試されることに。そこへ電話が鳴った。常連客で作家の那須河先生が、死ぬしかないほど家がぐちゃぐちゃだという。ユニフォームを渡され美菜子もチームメンバーと共に急いで那須河宅へ!
名門譜代大名の堀田正信が幕府に上申書を提出した。内容は痛烈な幕政批判。よしみを結ぶ徳川光圀は絶句する。正信と対立する老中筆頭松平信綱の胸中はいかに。将軍家綱の知るところとなれば厳罰は必定だ。幕閣に走る激震を危惧した光圀は織江緋之介に助力を頼む。将軍家剣術指南役・小野忠常の息子にして、義と勇を持つ若侍。巧妙に張り巡らされた信綱の謀略を前に伝家の胴太貫が閃く!
鋳掛け屋の太兵衛の葬式に東町奉行所与力がやってきた。かつて太兵衛は奉行所の付同心をしていたという。ある捕物の夜、盗人の隠れ家へ踏み込もうとした時、螢捕りにきた息子の仁助が太兵衛に声をかけ、捕物は失敗に終わった。太兵衛は出仕に及ばずということになり鋳掛け屋となったが、町の情報を番屋に知らせていたのだ。曳き人足となった仁助がとった行動は…。連作シリーズ。
「にゃん」となくのは黒猫ではなく、城を吹き飛ばすほどの雷を操る雷獣!?けれどもあまり怖くはないがー「クロスケさんはまだ小さいだけなのです!」…。あやかしを取り締まる“妖怪改方”の刀弥は、まだまだ未熟な雷獣クロスケと、雷獣が懐いて離れない許嫁の統子とともに不可解な事件を一刀両断!天狗が山から下りてきたり、幽霊と天ぷら対決をしたり、お江戸は毎日大騒ぎ!
いじめから、ひきこもりとなった二十四歳の麻生人生。頼りだった母が突然いなくなった。残されていたのは、年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに」マーサばあちゃんから? 人生は四年ぶりに外へ! 祖母のいる蓼科へ向かうと、予想を覆す状況が待っていた????。人の温もりにふれ、米づくりから、大きく人生が変わっていく。
清廉な山中で行われるトレイルランニング。没頭する彼は山に潜む危険をまだ知らなかったーー「ランナーズハイ」。登山客の度重なるマナー違反に、山小屋で働く女子大生は愕然とする。しかしそこは命を預かる場でもあったーー「ハルカの空」。個性溢れる山岳救助隊員と相棒の“犬たち”が登山客と向き合うとき、そこには人生の悲喜交々がある! 「ビバーク」は単行本未収録作品。--解説・馳星周
「死ぬ運命を忘れるな」と電話の声は言った。デイム・レティ(79歳)を悩ます正体不明の怪電話は、やがて彼女の知人たちにも広がっていく。ある者は疑心暗鬼にかられて犯人探しに躍起となり、ある者は悠然と受け流し、ある者は彼らの反応を記録して老年研究の材料とした。謎の電話が老人たちの生活に投じた波紋・登場人物ほぼ全員70歳以上の複雑な愛憎関係を、辛辣なユーモアで描いたイギリス小説の傑作。
享保19年。京から華務職として呼び寄せられた蓉は、公家の生まれながら、華麗な生活とは無縁の貧乏姫。口は悪いが二枚目の従者・鷹矢を従え、右も左もわからない江戸での暮らしをはじめたのだが……。 2015年9月刊。
寛政の改革の後、五島列島のはずれの島で、母の手ひとつで武士の子として育てられた青志郎は不思議な老人と出会い、獣拳道(じゅーくんどー)という秘拳の修行に明け暮れていた。そんな日々に突然訪れた母の死。遺言に従い、夢を探すために旅立った彼が命を救った謎の女とともに徒手空拳で立ち向かう先は…。純情青年時代小説。