2016年10月6日発売
念願叶って捜査一課の刑事に抜擢された七夕菊乃。しかし元アイドルという経歴のせいでお飾り扱いされてしまい、おまけに、驚異的な洞察力を持つ天才心理学者・草辻蓮蔵と、FBI出身で報告書の書き方に異様な執念を燃やす鬼才、「アンコウ」こと深海安公が繰り広げる頭脳戦に巻き込まれることに!初めて挑む密室殺人事件の捜査は、一体どうなってしまうのか!?「小説でしかできないことをやりました」と著者自ら語る、傑作長編ミステリ!
失業したとたんにツキがまわってきた。婚約相手との関係を年末のたった二時間で清算できたし、趣味の競輪は負け知らずで懐の心配もない。おまけに、色白で脚の長い女をモノにしたのだから、ついてるとしか言いようがない。二十七歳の年が明け、田村宏の生活はツキを頼りに何もかもうまくいくかに思われた。ところがその頃から街でたびたび人違いに遭い、厄介な男にからまれ、ついには不可解な事件に巻き込まれてしまう。自分と瓜二つの男がこの街にいるー。現代作家の中でも群を抜く小説の名手、佐藤正午の不朽のデビュー作。新装文庫限定「あとがき」収録。
マスターの作る懐かしい料理と居心地の良さを求める客で、夜な夜な賑わう“めしや”。ある日、常連客たちが次々と喪服姿で現れる。故人の思い出を語り合う中、範子だけは仕事のストレスを発散するために喪服を着ているのだという。範子は葬式で出会った男に惹かれていくが…。年上の彼女との結婚を母親に認めてもらえずに悩む蕎麦屋の息子、清太。お金に困った息子に呼ばれて上京し、見知らぬ男に大金を渡してしまった夕起子。ワケアリな客たちが今日も店にやって来ては胃袋を満たし、心の重荷を下ろしていく。世界でヒットした食映画の続編をノベライズ。
雪踏文彦。ひとは、みな、彼のことを親しみを込めて、せった君と呼ぶ。語り手である作家・島崎哲も、親友である彼をそう呼んだ。いつもどこかぼんやりしていたせった君は、幼少期から音楽の英才教育を受けていた島崎が嫉妬してしまうほどの才能に溢れていた。中学、高校と違う学校に通ったふたりは、大人になり彼がピアノを弾いている鎌倉のバーで頻繁に会うようになる。音楽のことしか、ほとんど考えていないせった君だったが、やがて恋をして、彼がつくる音楽にも変化が起こる。だがそんなある日、事件は起きた。
新国立競技場の工事現場で中谷は不思議な老人と出会う。老人は肉体労働に向いておらず仕事をクビになるが、現場を去る直前、大穴馬券を中心に託す。老人が姿を消した直後、工事現場では爆破事件が起こり、馬券は見事的中する。五千万円の大金を手にした中谷の前に、再び老人が現れ、彼が開発した市場予測システム「エアー」の代理人として、日本政府との交渉にあたるよう依頼される。「エアー」は人間の感情を数値化して、完璧な市場予測を可能にするもので、政府が握るビッグデータをインプットすることで、国家予算を潤すほどの巨額な利益をもたらすものでもあった。
長谷川平蔵が立案実施した人足寄場は、罪を犯した者たちに職業訓練を施し社会に復帰させる画期的な施設だった。伯父の平蔵を慕う阿比留平之助は、定掛与力としてその人足寄場に勤めることになる。その頃、鬼洗いの鉦七の押し込み強盗が起こり、逃走用の船の船頭に雇われて事情も分からぬままに捕まった、癸助の妹トミの周辺でも不可解な出来事が起こりはじめるー。わずかな手掛かりをたよりに、鉦七一味を追いかけていく平蔵と平之助。平之助の成長と活躍を描く、書き下ろし長編シリーズの第一作!
「脳卒中は手術をするな!」を提唱してマスコミの寵児となった脳神経外科医香山和之進。医学界の常識を覆し、患者からカリスマ的支持を受けている。東都新聞首都部の記者速水絵里子は彼が、都知事が進める湾岸国際医療都市構想の目玉となることをスクープしようと意気込む。しかし科学グループ先輩記者皆川沙也が香山の治療法に疑問を投げかけ二人は対立。一方、ネットのサイトには香山の治療で家族が亡くなったとの書き込みが出て…。果たして彼は天才なのか疑惑の医師なのか?相容れない二人の女性記者が真実を追う!あまりにもリアルな傑作医療ミステリー。
文豪・阿川弘之が残した昭和の極上エンタメ小説!自動車解体業=通称・ぽんこつ屋の青年と御嬢さん女子大学生が出会った。生活環境も考え方も違う二人がいつしか心惹かれてゆく。はたしてゴールやいかに?昭和30年代を舞台に交通戦争、女子大学生の急増、戦争の影など、昭和の世相や風俗を背景に、夢と希望を追い求める二人のラブストーリー!
木星に探査に向かったきり帰らぬ友人を追って火星から天空船で飛び立った青年は、彼の星で驚くべき事態に遭遇する(「空族館」)。第一短篇集『最終戦争』に、未発表作「空族館」と1960年代から70年代にかけて雑誌に掲載された単行本未収録短篇14作を増補。日本SFに多大な影響を与えた伝説的作家の想像力を堪能できる、文庫オリジナルのアンソロジー。
東京・谷中で三代続く今宮写真機店には、魔鏡に消えたカメラを探す男、スパイカメラを求める女性など、クセのある客ばかりが訪れる。認知症の老人が遺した写真や、何度も壊れてしまうカメラの謎など次々に舞い込む問題を、三代目店主の今宮とアルバイトの来夏が鮮やかに解決していく。ニコンF2、ライカM3、ハンザキヤノン…魅力的なクラシックカメラの名機とともに贈るシリーズ第二弾!
靖國神社にドローンが落とされた。そこには靖國本殿の爆破予告と“A級戦犯の分祀”をはじめとする要求が記され、日本政府は14日間のタイムリミットを突きつけられる。反日グループの犯行が疑われるなか、公安警察が重要参考人として目をつけたのは対馬出身の日本人大学生・清水。そして迎えた爆破予告当日、さらなる恐怖が日本を襲う。公安警察はその威信をかけ、靖國爆破を阻止するため奔走する!
毎年、時代小説の年間ランキングを発表してきた『この時代小説がすごい!』。時代小説読みのプロであるその選者たちが、今回短編時代小説のオールタイムベストテンを選出。日本のすべての短編時代小説から最も面白く、かつ現代の読者に読んでほしいと願うランキング第1位の「国を蹴った男」(伊東潤)をはじめ第5位までの作品を収録。時代小説を代表する名作短編が揃うアンソロジー!
たった一人の肉親である父親を失った、大学一年生の千尋。彼に残されたのは、父が経営していた尾道の古民家カフェ『夜咄堂』だけだった。すべてを処分しようと、夜咄堂を訪れた千尋を迎えたのは、自らを「茶道具のつくも神」だという見慣れない二人。戸惑いながらも千尋は、つくも神から茶道の指導を受け、父の思いが残された夜咄堂を続けることにするが…。切なさと温かさが交差する再生の物語。第4回ネット小説大賞受賞作!