2016年3月9日発売
1950年、あるSF雑誌に無名の新人の短篇が掲載された。異様な設定、説明なしに使われる用語、なかば機械の体の登場人物が繰り広げる凄まじい物語…この「スキャナーに生きがいはない」以来、“人類補完機構”と名づけられた未来史に属する奇妙で美しく、グロテスクで可憐な物語群は、熱狂的な読者を獲得する。本書はシリーズ全中短篇を初訳・新訳を交え全3巻でお贈りする第1巻。20世紀から130世紀までの名品15篇を収録。
第二次世界大戦末期。中部イタリアのピアノーサ島にあるアメリカ空軍基地に所属するヨッサリアン大尉の願いはただ一つ、生きのびることだ。仮病を使って入院したり、狂気を装って戦闘任務の遂行不能を訴えたり、なんとかして出撃を免れようとする。しかしそのたびに巧妙な仕組みをもつ恐るべき軍規、キャッチ=22に阻まれるのだった。強烈なブラック・ユーモアで、戦争の狂気や現代社会の不条理を鋭く風刺する傑作小説。
昇進のために部下の出撃回数を増やす大佐。兵士を救わない軍医。身内にも敵がいるなか、仲間はあっけなく戦闘で死んでいく。ヨッサリアン大尉はあらゆる手段を用いて自分のいのちを守ろうとするも、キャッチ=22の壁が立ちはだかる。誰もが正体をつかめないのに、誰をも支配する軍規は、逃れられない悪夢を生み出し続ける。アメリカ文学に新たな地平を切り開き、今なお熱狂的な支持を得る戦争文学の名著。
「わたしはあなたを見ている」心理療法士のわたしは、不気味なメッセージを受け取った。それをきっかけに、家中の電気が突然切れたり、飼い猫が姿を消したり。誰かがわたしを監視しているのだろうか。そしてついに、家の近くで担当する患者が遺体で見つかる。わたしは警察に疑いをかけられたうえ、触れられたくない過去まで掘り起こされるー人の心を知り尽くした心理療法士が極限状態に追い込まれる迫真のサスペンス。
岡山発ひかり九八号が東京駅に到着。車掌長の安田は、グリーン車の洗面台に大金が入った財布と名刺入れ、高級腕時計が忘れられているのに気づいた。翌日、持ち主と思われる田島久一郎の他殺体が発見され、十津川と亀井の捜査が始まった。田島の妻・亜木子は田島の女癖の悪さに悩んで自殺していたのだ。続いて田島の浮気相手と思われる女の他殺体が阿武隈川の河原で発見され、容疑者が浮上するが、鉄壁のアリバイが…。(「ゆうづる5号殺人事件」)他、寝代特急富士、北斗星等を舞台に描いた傑作短篇5篇!!
気分屋で無気力な父親が、セキコは大嫌いだった。彼がいる家にはいたくない。塾の宿題は重く、母親はうざく、妹はテキトー。1週間以上ある長い盆休みをいったいどう過ごせばいいのか。怒れる中学3年生のひと夏を描く表題作のほか、セキコの同級生いつみの物語「サバイブ」を収録。14歳の目から見た不穏な日常から、大人と子供それぞれの事情と心情が浮かび上がる。
「でもわたしは美しい死体にはなりたくない」-“美しき死”へ少女たちを塗りこめ、観賞用の素材に変えようとするこの世界のあまたの罠から逃れるために、窓の外へと飛びだした“わたし”の行く末はいかにー。ことばの力で生きのびていく少女たちのためのもうひとつの“聖書”。著者の代表作にして性と生と聖をめぐる少女小説の傑作が、あらたに書き下ろされた外伝「声のおとずれ」を伴って、いま蘇る!
未発表の珠玉作品「美しい手」「“青”を売るお店」をはじめとする名短篇15篇を厳選。男たちが商店街でくりひろげる「日の出通り商店街いきいきデー」、椰子の実を40年頭上にのせる高僧の話「ココナッツ・クラッシュ」、ロックファンならずとも感涙の「ねたのよい」、親子の情愛を描く「お父さんのバックドロップ」など笑いとホラーと抒情の傑作集!
本所亀沢町にあるおけら長屋は、今日も騒がしい。密かにお染のあとをつける大工の又造。その意外な理由とは。花見で浮かれる長屋の連中をよそに、一人沈む万造。ひょんなことから五十年前の真実が明らかに。八百屋の金太に嫁取りの話が!?お糸と文七の祝言が近づく長屋のあちこちで難事が発生。折しも流行病が西方から江戸へ、そして本所にも…。笑って泣ける大人気連作時代小説、シリーズ第六弾。
すべては、一人の男が失踪したことから始まった。-関東の裏社会を二分する十四会の会長・今切の足取りが外出先が途絶えた。若頭補佐の君島から捜索の移頼を受けた裏社会専門の探偵・時園は、今切の行方を追う。会長・今切の失踪で得をするのは誰か。関係者らを洗う時園に「今切のものと思われる小指が十四会に届いた」との一報が入った。-男たちの矜持と憎悪、そして哀しき過去が激しく交錯する長編小説。
あれは、そういうことだったのか…。なぜか鮮明に刻まれたこどもの頃の記憶。大人になった今だからこそ、本当の意味に気づくことがある。-三歳の私は、なぜ欲しくもない「特急こだま号」の玩具をねだったのか。六歳の時の夏休み、「あの崖」の近くで過ごした情景は、たのしい記憶のはずなのになぜ私を苦しくするのか。まだ洗練されていなかった昭和と現在が交錯する短編集。
昭和の新宿。「雨の日だけ営業」と噂される、元神主・水上櫂の探偵社をめぐる物語ー。幼馴染の慎吾が「近ごろ、会社に間違って届く郵便物が多くて、受付の女性が困っている」と櫂に相談した数日後、その女性は失踪して…(表題作)。◎友の死を悼みつづける女の真意を見抜く「沈澄池のほとり」。◎破格の待遇で募集されたカメラマン採用試験の謎に迫る「好条件の求人」など、四作品を収録した連作短篇推理小説。
刑事だった父は、本当に冤罪を生んだのかー。京都府警捜査一課の川上祐介は、妻を殺したと自白しながら、黙秘に転じた被疑者に手を焼いていた。そこへ、京都地検から「不起訴」の連絡が届く。それを決めた担当検事は、父が違法捜査を疑われて失職した際に別の家の養子となった弟の真佐人だった。不起訴に怒る祐介に、真佐人は意外な一言を返す。刑事と検事の信念がぶつかる連作ミステリー。文庫書き下ろし。