2016年7月発売
将軍家と縁続きである“葵の若”こと勝田慎之助は、直心影流小太刀の遣い手ながら、父の死により寺の住職となっていた。が、突然、「上様をお守りせよ」との予期せぬ命を拝する事態にー。諸藩をも巻き込み、将軍の座を狙う御三卿の田安宗武と一橋宗尹。“公人朝夕人”の後見人となった慎之助は御側御用取次の大岡忠光、九代家重を陰で警固する葛西衆らとともに天下の大乱を防げるのか!?
名同心の父をもつ植草平助は、もらい泣きをするほど人が良いが、立身出世に興味なく、とにかく厄介事は御免蒙りたい、一風変わった定町廻りの見習い同心。なんとしても手柄を立てさせ、ゆるい主人を小馬鹿にする同僚どもを見返したいと機をうかがう小者の佐吉におだてられつつ、今日も市中見廻りならぬ、寄席廻りに精を出す。そんなふたりに、ある日とうとう不思議な殺しが降りかかり…。
「と、鞆の浦へ行きな…」妙な電話を受けた「軽井沢のセンセ」こと作家の内田。それはホテルで知り合った、広島出身の間宮という老人の声に似ていた。ところが間宮が翌朝から行方不明に!知り合いの浅見光彦に助けを求め、駆けつけてもらう。しかし間宮は戻ってきたのだ。内田の知らない別人の姿で!四日後、殺人事件が鞆の浦で起こり、浅見は現場へ向かう。著者登場の旅情ミステリ。
音無黙兵衛は初美を護るために中山道を往く。しかし敵に囲まれてしまい、僧兵と共に籠城戦を決意した。復讐の火を灯す横山佐十郎、伊賀者の忍ら難敵が次々と黙兵衛に襲いかかる!謎に包まれた初美の過去が明らかとなる中、それでも黙兵衛は初美を護りきることができるのか。因縁の相手・横山佐十郎との対決の刻、迫るー。大人気「無言殺剣」シリーズ第五弾!
上杉景勝の大軍の前に佐々成政は苦吟していた。堅城として名高い富山城に籠もって上杉家の家老・直江兼続の攻城に対抗するも、わずか四日を以て落ちる。一方、諏訪の真田砦を足がかりとした幸村のもとには、当代一流の武芸者たちが続々集結していた。周囲の徳川領を切り取り勢力を伸ばした真田の去就が、天下の情勢に少なからぬ影響をもつようになった。幸村は甲府に向かって進発した。
北陸新幹線・上越妙高駅の完成記念式典に出席した十津川警部。新幹線開業の功労者である吉岡浩一郎の捜査が目的だった。吉岡は戦時中、航空機の開発に携わり、戦後は国鉄に勤務していたが、十年前東京・青梅の山中で殺されたのだ!故郷の柏崎では、吉岡を悪くいう者は皆無。そんな折り、吉岡の孫娘が、遺品の中から見つけた一枚の写真を持ってきたことから事件は予想外の展開を…。
「ギフト」と書かれた段ボール箱が発見された。中には体液のついた毛布。そして子供の小さな赤いスカートが入っているー。ASV特務班。通称「α特務班」はDVや虐待等の犯罪に特化し、所轄を渡り歩きながらそのスキルを伝える特任捜査チームである。夏目凛子を要として、スレンダー女刑事、元マル暴のベテラン刑事ら個性的な面々が姦悪な犯人を追う!
サンフランシスコ、夜。小柄でブロンドの美しい女がカフェに入ってきた。コーヒーを飲んだあと、自分は文無しのうえハンドバッグをどこかでなくしたという。店で働くハリーは、ヘレンと名乗る酔いどれの女を連れ出し、街のホテルに泊まらせてやる。翌日、金を返しにやって来たヘレンと再会したハリーは、衝動的に仕事をやめヘレンと夜の街へ。そのまま同棲を始めた二人だったが、彼らの胸中に常につきまとっていたのは、死への抗いがたい誘いだった。巨匠初期の傑作、遂に登場!
エルフの国ウェストランドを守護する生命の樹エルクリスが枯れはじめた。長い戦いのあと訪れていたつかの間の平和はふたたび破られ、不穏な影が忍び寄る。封じられていた魔物どもが、首領ダグダ・モーアの指揮の下、“結界”を越えて世界へと侵入を開始したのだ。エルフの姫アンバリーと勇者の孫であるウィルは、エルクリス再生という重大な使命を帯びて、世界の命運をかけた危険な旅へと出発するー。
時は文久元年。田舎の村を出た若者・弥吉は、決意を胸に大坂へ向かう。蘭学者の緒方洪庵が開いた適塾に潜入し、折を見て「暗殺」することが彼の使命だった。しかし実際に洪庵の人柄に触れるうち、考えが変わっていく。一方、郷里の村では、尊王攘夷の急進派「天誅組」に加わるため、村人たちが動き出す。弥吉は挙兵を止めようと奔走するがー。「正義」とは何か。壮大な成長物語。
白衣を着てコック帽をかぶった北町貫多は、はじめての飲食店でのアルバイトにひそかな期待を抱いていた。日払いから月払いへ、そしてまっとうな生活へと己を変えて、ついでに恋人も…。労働、肉欲、そして文学への思い。善だの悪だのを超越した貫多17歳の“生きるため”の行状記!
アウシュヴィッツ強制収容所に、囚人たちによってひっそりと作られた“学校”。ここには8冊だけの秘密の“図書館”がある。その図書係に指名されたのは14歳の少女ディタ。本の所持が禁じられているなか、少女は命の危険も顧みず、服の下に本を隠し持つ。収容所という地獄にあって、ディタは屈することなく、生きる意欲、読書する意欲を失わない。その懸命な姿を通じて、本が与えてくれる“生きる力”をもう一度信じたくなる、感涙必至の大作!
京都の輸血センターで検査技師として働く迪子は、恋人と別れた後既婚者である上司、阿久津に強く惹かれていく。初夏から野わけの候の、美しい京都を舞台に、不倫の愛につきまとう喜びと苦しみ、底知れない虚しさを、卓越したリアリティーで描く。
太平洋を南下する潜水空母アークを目がけて一本のミサイルが飛来した。それは、月面に基地を構え地球の覇権を狙うWWSA『ネオ・テラ帝国』からの威嚇だった。クトゥルーらの“ダーク・パワー”と、WWSAの両者からの脅威に挟まれた「地球軍」は隷属か反攻かの決断を迫られる。結成以来の危機にさらされるなか、知将・加賀四郎は“敵は月面にあり”と、宇宙への進軍の決断を下し、北斗多一郎たちを月面攻撃特別コマンドとして、急遽送り込むのだが…。
関東大震災と第二次世界大戦という二つの歴史的大事件に挟まれた16年間ー画家・桂が片時も忘れえなかった昔の恋人・三枝夫人との再会と、すれ違った愛の行方を追い求め描いた作品。世界が激しく揺れ動いた時代、日本という風土に生まれ育った芸術家の思索、苦悩、そして愛の悲劇を通して人生の深淵に迫った力作である。完成までに十年の歳月を費やした福永武彦の文学的出発点ともいえる。解説は芥川賞作家であり、福永武彦の長男でもある池澤夏樹氏。
これから親友の結婚披露宴がホテルで盛大に執り行われる。借り物のドレスに身を包んだエマは、不安と闘っていた。じつは彼女は妊娠していた。おなかの子の父親は、ブラジル随一のホテル王、ルーク・マルセロスーまさかこんな場所で彼と再会する羽目になるなんて!ルークとはロンドンで夢のような一夜を過ごしたが、愛人になるよう迫られ、エマは傷心のまま姿を消したのだった。でも、やっぱり黙ったままではいけないわ。はっきりと告げなければ。この子は私が一人で立派に育てると。