2016年発売
年が明けて昭和37年、順調に伸びていた「中古車のハゴロモ」の売上が突如低迷しはじめた。伸仁は高校生になり、身長は熊吾を超えた。熊吾は、質の悪い情夫と別れられないでいる森井博美と再会し、不本意ながらその手切金の金策に奔走することになる。仕入担当の黒木は「ハゴロモ」の不自然な入出金の動きを嗅ぎ取った……。運命という奔流は抗いようもなく大きく旋回しはじめる。
騙されて江戸に来た13歳の少女・お末の奉公先「鱗や」は、料理茶屋とは名ばかりの三流店だった。無気力な周囲をよそに、客を喜ばせたい一心で働くお末。名店と呼ばれた昔を取り戻すため、志を同じくする若旦那と奮闘が始まる。粋なもてなしが通人の噂になる頃、店の秘事が明るみに。混乱の中、八年に一度だけ咲く桜が、すべての想いを受け止め花開くー。美味絶佳の人情時代小説。
同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セックスがないことに悩み、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。みひろに惹かれている弟の裕太は、二人がうまくいっていないことに感づいていたがーー。抑えきれない衝動、忘れられない記憶、断ち切れない恋情。交錯する三人の想いと、熱を孕んだ欲望とが溶け合う、究極の恋愛小説。
不意にさしかけられた傘の下で、男の優しさにずっと浸っていたかったーー。大店の跡取り息子に尽くし抜いて捨てられた長屋娘と、娘の悲しみを見つめるもうひとりの男の目。男女のやるせなさに心震える「雨の底」。密かに持ち込まれた商家夫婦への不可解な脅迫文が、隠居暮らしの慶次郎を、愛憎渦巻く事件の暗がりへ再び導く「横たわるもの」ほか、円熟の筆が紡ぎだす江戸人情七景。
日本にはかつて正義と悪2人の天才がいたーー! 大物実業家・羽柴壮太郎に届いた一通の予告状。差出人の名は「二十面相」。羽柴の健闘もむなしく、家宝のダイヤモンドは思いもよらぬ華麗な手法で目の前から姿を消してしまう。勇敢な少年探偵、小林の活躍で何とか取り戻せたものの、肝心の二十面相はいまだ野放し。そのときまるで運命に導かれるように、一人の大探偵が東京駅に降り立った。劇的トリックの空中戦、ここに始まる!
悲哀にみちた人間ドラマ。温かな余韻が残るラスト。 『傍聞き』『教場』を超える、傑作ミステリ集! バレーボール全日本の女子大生・彩夏と、彼女を溺愛する医者の姉・多佳子。彩夏の運転で実家に向かう途中、ふたりはトンネル崩落事故に遭ってしまう。運転席に閉じ込められた妹に対して姉がとった意外な行動とは……(「涙の成分比」)。 命を懸けた現場で交錯する人間の欲望を鮮やかに描く、珠玉の六編。 「いつか“命”をテーマに医療の世界をミステリとして書きたいと思っていました。自分にとって集大成と言える作品です」--長岡弘樹
入社一年目、ザ・文学少女山田友梨が配属されたのはなんと、青年漫画誌「ヤングビート」。大物作家を激怒させ、長寿連載「解決屋一平」はまさかの終了。童貞が主人公のエッチ漫画「いまだ、できず」の人気は急降下。雑誌を牽引する大ヒット作「キヨのひらく箱」には激しく心を動かされるが、作者とは一回も会えない。イタくて深い、新感覚!青春感動物語。25歳の新鋭が放つノンストップストーリー。
外縁都市グラムENDの掃き溜め“猥路”。世界と隔絶された超最低なこの場所から、空に焦がれて一匹の溝鼠が外に出た。名はマリア・ローズ。何も持たないマリアは、外の世界で言葉を、友を、仲間を手にしていくー「僕が連れていく。きみたちを、外へ。死んじゃだめだ。生きよう」マリアは大切な人たちを守るため、人を喰らい街を破壊する“化物”に立ち向かう…!!美しく誇り高いマリアと仲間たちの最高な物語、新たなる幕開け。
15年の時を経て起きた、一家惨殺事件。謎が解決したと思いきや、新たな謎が……。イマドキの刑事と伝説の元刑事の迷コンビが謎を追う。予想もつかないラストが待ち受ける、衝撃の警察ミステリー!
二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。 晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくがーー。
【第22回日本ホラー小説大賞〈優秀賞〉受賞後第一作】 === 「ナバリ・イズミ神話大系」とも呼ぶべき独自の、魅力的な宇宙観。その新たな切り口から噴出する、新たな謎〈ミステリー〉と恐怖〈ホラー〉に戦慄せよ。 --綾辻行人 === 僕の姉は「取り替えられた」魔物なのか? 「マガイ」のおぞましい真実とは 「山に棲む『紛(まがい)』という魔性の獣が里の子供を攫って喰らい、己の子とすりかえる」「『紛』の子は見かけは人間だが、長ずるに従って徐々に獣の本性を表し、里に災いをもたらす」 現代社会では迷信扱いされる民話だが、鞍臥の人たちは今でも、心のどこかで信じている。なぜなら、あたしがその「マガイの子」だからだーー。 いまは東京で美大生をしている坂見風哩は、8年前に「お山」で従兄が惨殺された現場に立ち会っていた。従兄の死体は獣に食われたようだったが、風哩には事件時の記憶がない。腫物のように扱われる田舎を出たものの、不穏な出来事が周りで続いている。セクハラ教授とのトラブルで訪れた風変わりなスクールカウンセラーとの話で、夢に見る「マガイ」のことをついしゃべってしまい……。 一方、まだ鞍臥に住んでいる高校生の弟・怜治は、8年前に姉を助けてくれた円藤老人が、砂原という謎の研究者と最近共にいるのが気になっている。砂原ら「聖泉協会」の人間は「お山」の「磨崖仏」を調べているというのだが……。
希望、葛藤、想いーー 鹿の子がつむぐ物語。 ついに完結。 陰陽師家に縁づいた霊力なしの娘・鹿の子。 霊力はないが菓子を作らせれば天下一品。 神の御心をも落とす。 そしてついた呼び名は「かまどの嫁」--。 陰陽師家では今日も世継ぎ作りに余念がない。 最も縁がない側室、 かまどから離れられない鹿の子は、 ついに月明との恋を実らせることができるのか?! 心温まる和菓子と恋の物語、最終巻!
目を覚ますと、そこは見知らぬ世界。日本とは似ても似つかない異世界。その根底に流れる理は魔法。けれどコモンウェルスの第三王女、ヤーナ・ソブェスキとして生まれ変わった『彼女』は至極怠惰に現状を満喫すらしていた。…ロスバッハにパラダイムシフトの『銃声』が木霊するまでは。既存秩序は、ヤーナの安穏たる高等遊民生活の基盤は、革命を告げる銃声と共に飛散する。王位継承者の弟を支える立場として、歴史の表舞台に立った彼女は悟らざるを得ない。軍事力なき王家の権威は、いかほどの輝きを持ち得ようか?生き残りたければ、蛇とでも、悪魔とでも、握手しなければならない。己の故郷に迫りくる大洪水。それすなわち、後世の歴史書に曰く『銃魔大戦』。怠謀が絡み合う政略の行方は??有能ななまけものの未来はいかに!?カルロ・ゼン原作のフリーゲームを自らノベライズ!
2007年のゲーム発売以降、高い人気を保ち続け、アニメ制作も発表された「Dies irae」。その初となる公式ノベルが満を持してついに登場。誰も知らなかった新たな物語が動き出す!
なんて小さな都だろう。私はここが好きだけど、いつか旅立つときが来るーー。おっとりした長女・綾香は31歳、次第に結婚への焦りを募らせる一方、恋愛体質の次女・羽衣は職場で人気の上司と恋仲になり、大学院で研究に没頭する三女・凜はいずれ京都を出ようとひとり心に決めていた。生まれ育った土地、家族への尽きせぬ思い。奥沢家三姉妹の日常に彩られた、京都の春夏秋冬があざやかに息づく、綿矢版『細雪』。
欲望と殺意の果てに現れる、むき出しの人間の姿。迫真のクライム・ノヴェル。ヤクザ、ホステス、不動産業者、町役場の出納室長。欲望と思惑は複雑に絡み合い、互いを取り返しのつかない地点へと追い詰める。情事と裏切り、そして二つの巧妙な殺人の後、彼らの目に映った世界とは? 八〇年代半ば、バブル期の和歌山を舞台に、怒濤のスリルと静謐な思索が交錯する。著者の新たな到達点を示す傑作長篇。
生い立ちに問題を抱え周囲に心を開けない女性小学校教諭と、無自覚なままに人が見抜かれたくないことを言葉で射抜いてしまうカメラマンの青年・葛城。人と交わることが苦手な二人は傷つきながらも惹かれ合うが、葛城は山に撮影に出たきり姿を消してしまい…(「水に立つ人」)。選考委員全員が○を付けた、第93回オール讀物新人賞受賞作を含む鮮烈なデビュー作。
警視庁組対四課に所属する米沢英利に「女を捜して欲しい」とヤクザの若頭補佐が頼み込んできた。米沢は受け取った札束をポケットに入れ、夜の街へと繰り出す。“悪い”捜査官のもとに飛び込んでくる数々の“黒い”依頼。解決のためには、組長を脅し、ソープ・キャバクラに足繁く通い、チンンピラをスタンガンで失神させ、時に仲間であるはずの警察官への暴力も厭わない。罪と正義の狭間で、たったひとりの捜査が始まった。
ディストピアではない。これが現実だ。星野智幸の代表作を4テーマに分類。単行本未収録の作品等とあわせた初の自選作品集〈第1巻〉 私はなぜ権力になびくのか。人々が政治に求める欺瞞と暴力をえぐる「在日ヲロシヤ人の悲劇」、大幅改稿「ファンタジスタ」、短篇三篇の他、単行本未収録「先輩伝説」を収録。 「何度でも読み返されるべき小説。この社会の酷薄さ(リアル)を知るために。星野さんはずっとひとりで、最悪を想像し、現実の醜さを暴き、警鐘を鳴らし続けてる。」-中島京子氏(作家) 在日ヲロシヤ人の悲劇 ファンタジスタ ててなし子クラブ われら猫の子 味蕾の記憶 先輩伝説