2016年発売
男は、まだ見ぬ女の名前に焦がれていたー。後に、偶然の出逢いから結ばれる有津と佐衣子。薄紫のリラの花咲く初夏の札幌を舞台に、許されない愛の行方を流麗な文体で描いた長編小説。北のロマン・北海道編。
純子が本当に愛したのは誰だったのか?天才少女画家と呼ばれた純子が阿寒に消えてから20年。作家となった「私」は、彼女をめぐる4人の男たちに会い、その死の真相を探ろうとする。清冽な北国の空気が胸に痛い瑞々しい作品。北のロマン・北海道編。
昭和27年4月9日、日航定期便福岡行き「もく星」号は、羽田を離陸した20分後になぜか突然消息を絶った。それから13年後、密かに事故の真相究明に乗り出した中浜宗介らは、事故死した乗客のうち唯一の女性・相善八重子が、事故と何らかの関係があるのではと疑念の目を向ける…。筆者の代表作「日本の黒い霧」などと同様に、昭和の“謎”事件の真相を解明するため、記録的手法を導入して挑んだドキュメンタリータッチの長編小説・中巻。
「運命の、その日ー」成層圏上での巨大すぎるエネルギー体同士の激突は、地球大気圏に異変の波動を及ぼし、ついに人類の世紀は終わった…。だが、その一方で、太平洋の深海五千メートルでは、安西雄介ひきいる潜水空母アークに搭乗した四百有余名の「地球軍」が息を潜めて起死回生を目論んでいた…。神々の圧倒的な力の前に滅びゆこうとする人類の危機を描いた大河伝奇小説の第11弾。第1部「魔界誕生編」完結。
「僕が故郷に漠然と期待したのは避難港だった。ところが、それどころではなかった」-。東京から郷里の静岡県藤枝市に居を移した三十手前の小説家・及川晃一の日常的思索を描いた著者の自伝的小説の前編。日本人とは、市民とは、そして小説家とは何かを考え続けた、「内向の世代」の作家・小川国夫の深い懊悩が滲む秀作。朝日新聞に連載され、第5回伊藤整文学賞を受賞。
東京から故郷の藤枝に舞い戻ってきた及川晃一は、父の会社の事務員・三輪静枝と出会う。晃一の書いた小説を静枝が借り出して読んでいることを知り、二人の距離は急接近していくのだが、静枝にはすでに婚約者がいた。晃一に心を寄せつつも、結局、静枝は婚約者の求婚を受け入れ、会社を辞めて北へ旅立つ。だが、惹かれ合う二人は送別会の夜、ついに結ばれるのだった…。「内向の世代」の代表的作家・小説国夫の自伝的長編小説の後編。
大切なものを失うのはこれで二度目だ。イザベルの心は折れかけていた。また彼に奪われるの?スペンサー・チャッツフィールドーホテル王一族の息子で、女性の噂が絶えない彼に、イザベルは身も心も捧げた。だがすぐに弄ばれただけだと気づき、自ら別れを告げたのだ。彼の子を身ごもっていたというのに…。あれから10年。父のホテルを継承するというイザベルの夢を、スペンサーはやすやすと横取りしていった。しかも彼が新しいボス。その命令に背くことは許されない…。
エヴァは旅先のパリで幼なじみのフリンと7年ぶりに再会した。屋敷の使用人の息子だった彼は実業家として大成功し、今や女性たちの理想そのものの、魅力的な男性に変貌していた。恋に落ちたエヴァは彼にプロポーズされ、有頂天になる。私はなんて幸せなの。父とは正反対の伴侶と巡りあえるなんて。家族を出世の道具にした亡父を、エヴァは今も憎んでいるのだ。フリンのために着飾り、パーティを開いては客をもてなす毎日。ふと、彼女は気づく。夫はなぜ、ただの一度も“愛している”と言ってくれないのだろう。私は彼に…愛されているの?
「婚約者が来て会いたがっていると、彼にそう伝えて」ソフィーは自分の名前も告げず、オフィスの受付嬢に迫った。ルカは幼なじみの許嫁の存在をきっと覚えているはず。故郷シチリアで別れた後、彼とはもう5年も会っていないけど。ビルの最上階の社長室に君臨するルカに気後れすまいと、今日は身ぎれいにして、ホテルのメイドの身の上は隠している。そう、彼に頼みを聞いてもらうためならなんだってするわ。余命少ない父に、娘が幸せであると信じてもらいたい。つかの間でいい、偽りの芝居に協力してほしいだけなのだ。
イモジェンはパリのムーラン・ルージュで出会った異国の皇太子ナディールと恋に落ち、情熱的な逢瀬を重ねた。やがて彼女は妊娠し、ナディールにその事実を告げるが、彼からの返事は耳を疑うほど残酷なものだった。DNA鑑定を受けろですって?こんな侮辱は初めてだわ。1年2カ後、ロンドンのカフェで働くイモジェンの前に、突然ナディールが現れた。とっさに幼子を隠そうとした彼女に、ナディールは憤然と宣告する。「その子に対する義務は果たす。君と結婚することで」
役員秘書のレイチェルは会社主催のチャリティパーティで、招待客リストに載っていない、魅力的な男性レオに声をかけられた。何事も計画どおりに進めたいタイプのレイチェルは一瞬とまどうが、どうやら彼は欠席者に頼まれ、断れずにやってきたらしいとわかる。話をするうち、レオの人柄やユーモアに惹かれ、「君をもっと知りたい」という甘い言葉に誘われるまま、気づけば自宅で彼と熱い夜を過ごしていた。ああ、私の今夜の計画に、こんなことは含まれていなかったのに…。一夜限りの関係と割り切って翌朝には別れたふたりだったが、7週間後、妊娠検査薬を見つめ、立ちすくむレイチェルの姿があった。
公室付きのナニーとしてモンテドーロ公国へ来て2年。当初、黒縁眼鏡をかけて地味で目立たなかったラニは、今や美しい女性に生まれ変わっていたーある男性に恋をして。大晦日の舞踏会で皇太子マックスから踊りに誘われたのをきっかけに、その夜、以前より胸に秘めていた彼への想いを遂げたのだった。だが、数年前に不慮の事故で妃を失った彼がいまだに亡き妻を愛し、今後も独身を貫くつもりでいることは国じゅうに知られた事実だ。マックス自身の口からも、二度と結婚はしないと聞いたことがあった。しょせん、私はしがないナニー。皇太子に愛されるはずがない…。ラニは身を引く決意を固めると、仕事を辞め、そっと宮殿を去った。
社交界にデビューして数年になる伯爵令嬢のクレッシーは、いつまでたっても嫁ぎ先が決まらず、肩身の狭い日々を送っている。5人姉妹の中でいちばん不器量なわたし。一生花嫁にはなれないのかしら?そんなある日、娘を政略結婚の駒としか考えていない父親から、とどめを刺すような命令が飛んできた。“今年はもう社交界に顔を出さず、弟たちの家庭教師をしろ”しかたなくやってきた田舎の屋敷で顔を合わせたのは、信じられないほど美しい男性、ジョヴァンニ・ディ・マッテオ。クレッシーは熱い視線を送ってくる彼に戸惑いながらも魅せられる。彼が身分を偽って英国に来たイタリアの伯爵家の御曹司だとは思わずに。
実家で静養中の双子の妹になりすまして、ロンドンへ向かったアナベル。妹に冷淡だという侯爵家の御曹司ジャイルズに仕返しするつもりだったが、到着早々、彼が息をのむほどの美男子と知って驚く。にわか仕込みの作法を身につけ、最新流行のドレスに身を包むと、いつものおてんばなアナベルは、優美な“ロザベル”に。一躍社交界の花となるや、貴族の御曹司たちからの花束や贈り物が届き、アナベルは本来の目的も忘れてシンデレラ気分にひたったー忍び寄る邪悪な男の影に気づきもせず。いち早く異変を察知したのは、“内気なロザベル”の変貌ぶりを苦々しげに見ていたジャイルズで…?
騙されて全財産を失ったダーシーは、住み込みのナニーに雇われ、大富豪コリンの瀟洒な邸宅を訪れた。出てきたのは、澄んだ青い瞳と官能的な異国の訛りをもつ男性。まあ、なんてすてきな人なのかしら。コリンは妻の死後、幼い娘の育児に追われているという。彼の魅惑の眼差しに翻弄されながらも、ダーシーは毎日ひたむきに働いた。愛らしい赤ん坊と父親は、天涯孤独のダーシーにはまぶしい存在だった。病気で子供を産めない悲しみが、ときおり胸を刺すけれど…。だが、ついに彼と至高の一夜をともにした翌朝、彼女は衝撃の事実を知る。なんとコリンは、身分を隠した地中海の国の王子だったのだ!
世界的に有名な大企業の最高執行責任者、ジェイソン・リンハーストが私の夫ですって?メレディスは突然の知らせに耳を疑った。2年前、メレディスは嵐のような激しい恋におち、結婚式を挙げたーとてつもなくセクシーな“ジェイソン”が、何者かも知らぬまま。だが翌朝、二人は急ぎすぎた結婚を白紙に戻し、それきり別れたのだった。あのとき私が処分したはずの書類が、役所に提出されていたということ?動揺したメレディスがジェイソンのオフィスを訪ねると、結婚がスクープされたせいで破談になったと、彼は怒り心頭だった。「離婚する前に、君にしてほしいことがある」彼は獲物を狙う猛獣のごとく目を光らせ…?!
ピッパはひそかに憧れていた実業家キャムに誘惑され、めくるめくひとときを過ごした。夢の一夜のあと、いまだ興奮さめやらぬ彼女のもとに、キャムから思いもよらない連絡が…なんと、避妊に失敗したというのだ!呆然とするピッパだったが、やがて妊娠が判明。キャムは子どものために形式的な結婚をしようと言うが、ピッパはそんな関係はとうてい受け入れられない。冷酷にも「きみも子どもも愛したくないんだ」と言うキャムに、張り裂けそうな想いで、ピッパは彼のもとを去るが…。
5年前、身寄りのないテッサは初恋の人ポールに振られた。彼は無神経にもテッサの書いた熱烈な恋文を友人に回覧し、町中の笑いものにされた彼女は故郷を飛び出したのだった。今テッサはロンドンで職業女性としての一歩を踏み出している。能力、体格、容貌すべてにずば抜けた上司のオームに認められ、彼のチームの一員として働けることに生き甲斐を感じていた。ところがある日、次の仕事の出張先が故郷の町だと聞いて、テッサは激しく動揺する。もしもポールに再会したら…あんな仕打ちを受けたのに、また惹かれてしまったらどうしよう。沈んだ彼女の様子に気づいたオームは、思いがけない提案をする。
レイシーが12歳のとき、最愛の父が再婚した。ファッション雑誌から抜けだしたような美女ミシェルが、莫大な富と地位を目当てに父の後妻に収まったことは明白で、彼女はレイシーを厄介払いとばかりに修道院へ送り込んだ。卒業を目前にしたある日、思いがけずミシェルが迎えに来る。父の容態とともに事業の経営が悪化し、破産を免れるには、レイシーに有力者のもてなしをさせて出資を募るしかないという。だがギリシアの石油王といわれるトロイ・アンドレアキスは、妖艶なドレスで飾り立てられた、まだ少女のようなレイシーを見て、一夜の接待などではなく、妻になることを要求したのだった。
時は一九七〇年代。田舎町に住むヤンチャで無茶な男子高校生と町の駐在さんが繰り広げるイタズラ合戦、第二十五弾は、中学校時代のママチャリが登場する「ラフマニノフの憂鬱」を収録。ママチャリは、隣の小学校にも名をとどろかせる神童の息子として有名だった。入学後、すぐに学級委員長に就任。策士の才能は早くも発揮され、同級生からのいやがらせも撃退してしまう。そんなママチャリが仕掛けた奇跡のようないたずらとは?「ぼくたちと駐在所の12ヶ月戦争」「オハヨー!カーちゃん」マンガ入りショート「おおらか!千葉くん!」も収録した、笑いと感動の物語。