2017年1月11日発売
明治二十六年、杉山潤之助は、旧知の月輪龍太郎が始めた探偵事務所を訪れる。現れた魚住という依頼人は、山縣有朋の影の側近と噂される大物・漆原安之丞が、首のない死体で発見されたことを語った。事件現場の大邸宅・黒龍荘に赴いた二人を待ち受けていたのは、不気味なわらべ唄になぞらえられた陰惨な連続殺人だったー。ミステリ界の話題を攫った傑作推理小説。
ぼくらが公園に行くたびに見かける男の人の名前は「よみさか」。ジャンケンに負けたぼくが初めて声をかけた日、友達のタクミがいなくなった!(「すれちがう」)小説家の俺は稀代の殺人犯・佐藤誠について調べていた。これから会う人は、彼の真実に最も近しい名探偵だ。(表題作)変わらぬ日々にもがく人々の姿を通して、郷愁と感傷の先に待つ、かすかな希望を描く青春小説。
平安時代、一条天皇の御代。京の都に鬼が出没し、貴族の娘たちが攫われる騒ぎが頻発していた。源頼光から解決の命を受けたのは、剛勇名高い坂田公時だった。公時は、次に攫われるのは藤原為時の娘・紫式部と目星をつける。美貌の才女は、自らが囮となって鬼に対峙するのだがー。公時と酒呑童子、さらに陰陽師・安倍晴明も加わった凄絶な闘いの行方やいかに!!
上野公園の不忍池から、子供の手首が発見された。唯一の手がかりは人差し指付け根に残る骨折の痕。M署の刑事・如月七と相棒の土橋は、被害者がシングルマザーに育てられていた少年であることを突きとめる。さらに消息不明の母親が偽名を使っていたことが判明して…。母子に何があったのか?謎が謎を呼ぶ展開と息づまるサスペンス。人気シリーズ第二弾!
海に転落した車の中から、大財閥・火枝家の一族である広治と若い女の遺体が発見された。これは、心中に偽装した殺人なのか!?捜査を進める過程で、片山は火枝家の娘・みゆきと婚約することになる。みゆきが「死の館」と称した火枝家の屋敷で、次々と事件がー。大財閥の複雑な人間関係に隠された真相とは!?そして、片山が本気になった「恋」の行方は…。
若い芸術家の憧れの的である美貌の人妻・竜崎亜矢子。彼女は夫・重隆との愛なき結婚に苦しむ“名家の囚人”であった。カメラマンの奈津井久夫は亜矢子に惹かれながらも見合い結婚をした。取材で出向いた青森県十三潟で男の死体に遭遇した奈津井は、その写真で脚光を浴びる。亜矢子への憧憬をカメラに託す奈津井だが、彼女は新聞社勤務の久世俊介と…。彷徨う愛の行方は!?
心の通い合わない結婚をした奈津井。妻との関係が悪化する久世。亜矢子への思いを断ち切れない二人の男たち。それでも三人は微妙な愛情関係を保っていた。だが、海外に単身赴任していた亜矢子の夫・重隆が帰国したことで、三人の危うい均衡は崩れていく。都会を漂う孤独な男女の愛の終着点は!?圧倒的な人間洞察力と筆力で、愛の虚無と憂愁を描く恋愛サスペンス!
落語と推理小説は昔から深い縁があった。明治期、黒岩涙香が探偵小説を紹介する前に、かの大名跡、三遊亭円朝が、なんと翻訳ミステリーを高座にかけていたのだ。また、大乱歩は英人落語家、快楽亭ブラックの探偵小説に注目、以後多くのミステリー作家が落語を題材にさまざまな作品を発表してきた。本書は古典的名作から気鋭の秀作まで、ハズレなしの八編を収録!
ならず者の弥蔵が遺体で見つかった。「慶光寺」御用宿「橘屋」の十四郎は、遺体の傍らに落ちていた鈴が以前、駆け込みをした女の付き添いで来たお春の物ではないかと危惧する。そして、お春は町方の手に落ち、岡っ引は罪を認めないお春に迫る。そこには我が子への母の想いが。涙なくしては読めない母子の情愛を描いた「東風よ吹け」など全四話を収録したシリーズ第九弾。
奥歯の痛みで口中医を訪ねたおたねは、風采の上がらない安斎と名乗る男と出会う。二人の子を亡くして失意のうちに生きる安斎は、夢屋の手伝いに入ることになるのだが…。大地震、大あらしに続き、安政の江戸を襲う「コロリ」と呼ばれる恐ろしい流行り病。たび重なる厄災に立ち向かい、支え合いながら生き抜こうとする人々の姿が胸を打つ、好評シリーズ第四弾。
父の跡を継ぎ、上絵師として身を立てたい律だが、ままならず落ち込むことも多い。幼馴染みの涼太への想いも、深く胸に秘めるばかりだ。しかし副業の似面絵の評判は上々で、引きも切らず注文が舞い込んでいた。そんな折、母を殺めた辻斬りの似面絵そっくりな男に出会うのだがー。仕事に恋にひたむきに生きる女職人の姿を鮮やかに描く、待望のシリーズ第二弾。
南町奉行所の定町廻り同心を辞め、いまは船頭として生計を立てる沢村伝次郎が、同心時代に小者として使っていた音松が殺しの疑いで捕えられた。冤罪を訴える音松の疑いを晴らすべく、疫病神と言われていた浪人の殺しを調べ始めたが、真の下手人を追い詰めたとき、伝次郎の身にも危機が迫る。シリーズ史上屈指の剣戟と人情話が詰まった待望のシリーズ第十六弾。
汐崎藩に公儀の普請が押しつけられるー。財政難の状況で藩にとって空前の危機となる。それを回避できると老中・青山忠裕が出してきた条件は、名刀・備前長船の献上だった。駿河国汐崎藩の御刀番・左京之介は長船を手に入れようと走るが、そこに沼津藩水野忠成の横やりが!五郎正宗の遺恨で汐崎藩を潰さんとする水野に、どうする、京之介。人気シリーズ、第六弾。
時は、天保九年。大飢饉と悪政により、江戸には窮民が溢れかえっていた。強請りたかりを生業にする茶坊主・河内山宗俊は、時の老中・水野忠邦に捕らえられ、ある謀略を持ちかけられる。幕府の金で私腹を肥やす不届き者から、金を根こそぎ奪えという。狙いは、大御所・徳川家斉の側近中の側近、中野碩翁の隠し財産十万両に定まった。しかし贅を尽くした中野屋敷の金蔵には、危険なからくりが何重にも仕掛けられている。無謀も無謀の大博奕に、河内山は選りすぐりの悪党たちを呼び集めた。予測不能の騙し合いの果てに浮かび上がる、真の目論見とはー?新たなダーク・ヒーロー堂々誕生!息苦しい世に風穴穿つ、比類なきエンターテインメント!
継母を亡くし、血の繋がらない姉・詩帆とふたりで生きていくことになった俊平。隣で眠る義姉の姿にかつてない激情を覚え、それからずっと詩帆にだけ想いを寄せていた。結ばれることのない、許されない関係。やがて義姉は結婚し人妻となってしまった。義姉夫婦の初夜を盗み見た俊平は詩帆の媚態に釘づけに。そんな俊平が、大学の俊輩でアイドル的存在の茉莉亜から告白される。義姉の反応を確かめたいという誘惑に逆らえず、彼女と付き合うことになるのだがー?
生田流箏曲天道会の家に生まれた美人姉妹・京香と清香は四年に一度の祭事“蝮をどり”を目前に二人を支配しようとする箏奏者・笠原と禰宜・稲川の卑劣な罠に堕ちる。姉に嫉妬心を持つ清香は稲川の甘い誘惑に身を売り、笠原に呼び出された京香は計ったように現れた稲川に追いつめられ、二人の巧みな淫戯で嬲られてゆく。祭事当日、舞台が炎上し、姉妹を見守ってきた使用人・政巳は京香の手を取り蝮の棲む森へ踏み入る。京香の本能は剥き出しとなりー。団鬼六賞大賞受賞作が遂に文庫化!