2017年1月27日発売
本書は、自閉症スペクトラム障害である著者が自身の半生をもとに描いた、自伝的小説である。幼い頃から「なんだか変わった子」と言われて育ってきた心良が、小学校入学とともに出会ったのは、理不尽な暴力教師「鈴本」だったー。次々に訪れる様々な試練。誰にも理解されない障害を抱え、もがきながら、戸惑いながら、全てのものと闘いながら、それでも必死に生きていく。自閉症スペクトラム障害の少女の「闘いの軌跡」。
発達障害の当事者が、自らの壮絶な体験を克明に描いた衝撃作。第二弾にあたる「思春期篇」の舞台は海外。両親の勧めで、海外に留学することになった心良。温かいホストファミリーとの交流の中で、あるべき家族の姿に気づくが、それが新たな葛藤を生むことになる。「性別意識の目覚め」「自我の分裂」そして「『死』に対する畏怖と関心」…。思春期の様々な変化とともに、疾風怒涛の激情に翻弄される日々。新天地で、彼女を待ち受けていたものとは…。
菊山尚泰は一九二四年、朝鮮の貧しい農家に生まれ、一八歳の時に「夢の国」を目指し日本に出稼ぎに来た。鉱山で働くうちにその腕力だけで頂点に立ち、どんな荒くれ男たちからも恐れられる存在になった。終戦後、菊山は夜の街の用心棒、債権回収業から金貸しになり巨額の富を得て成金に…。一九五九年、菊山に待望の息子、翔太が誕生し幸せな日々を過ごしていたが、妻が突然出奔すると菊山の人生が激変した。
不倫相手との子どもをひとりで産むと決意し、古ぼけた海辺のラブホテル「コート・ダジュール」に住み込みで働くことになった光海。オーナーの老婆・頼子さんは上品で優しいが、ある日、ホテルの一室で行っているという怪しげなミサに光海を誘う。子どもの父親の家庭をぶち壊したと告白した光海だが、いっぽう頼子さんも過去に大きな「罪」を犯していた…。女であることの生々しい痛みと、連綿と続く命の連鎖を直視する問題作。
“私はあなたが嫌いです。”陰湿な手紙が届き、落ち込むあゆみ。心配した太一郎がレストランへ連れ出す。太一郎が席を外した隙に知らないおじいさんが近づいてきて…表題作ほか、書き下ろし「田崎麻子の特技」、新あとがきを併録。