2017年2月9日発売
酒浸りの生活を送るコペンハーゲン警察の捜査官トマス・ラウンスホルト、通称ラウン。ある事情で休職中の彼は、友人から頼みごとを持ちかけられる。二年前から行方不明になっているリトアニア出身の女性マーシャを探してほしいというのだ。家出か、それとも事件か?気が進まないながらも引き受けたラウンは、尋ね歩くうちに彼女の失踪に国際的な犯罪組織が絡んでいるのではないかと疑いはじめる。一方そのころ、若い女性だけを狙う猟奇殺人者が獲物を求めて街をさまよっていた…デンマークの人気サスペンス!
あのドラマチックな夜会から半年。白夜の季節の到来とともに、相続の手続きを終えたムイシキン公爵がモスクワに戻ってくる。炎の友ロゴージンと再会したとき、愛のトライアングルが形を変えはじめた。謎の女性ナスターシャはどこに?絶世の美少女アグラーヤの不思議な思惑は…。
水野忠邦の天保の改革を支えた鳥居耀蔵は、南町奉行の座を追われ、讃岐国にお預けの身である。奢侈禁止令で庶民に圧政を強いた鳥居に、般若同心・柚木源九郎は反撥。その鳥居が、かつての配下を束ね、謀略を仕掛けてきた。源九郎は、同僚の同心たちから「獅子身中の虫」を炙りだし、難局を乗り越えられるのか!?大人気シリーズ最終章。
宗次と同じ長屋に住む少女二人が、権力者に愛玩される珍犬、狆を近所の寺で拾った。その直後に、殺気漂う侍たちが寺に駆け込んで来たのを目撃した宗次は、悪い予感を覚える。そんな最中、大身旗本、筆頭大番頭の西条山城守貞頼一行が襲撃された。不気味極まりない全身白装束ー謎の“白忍び”の一団に!不穏に蠢く幕閣の権力争いを、武炎の剣で宗次が斬る!
夢伝心眼流最高師範皆伝の大剣客・式部蔵人光芳に、宗次と西条貞頼暗殺の下命が!大老・酒井忠清の勢力による、宮将軍招聘に反対する老中・堀田正俊一派への攻撃は苛烈さを増していた。穏密情報機関「白夜」の頭領・貫鬼四郎五郎高房は、正俊を狙い襲撃をかけるも、堀田家家臣の決死の一矢に討たれ絶命。悲壮な決意を秘める宗次と蔵人との最終決戦が迫るのだった。
北関東の山間にたつグループホーム「若葉荘」。そこには元天才少女小説家の世話人と、自在に歳を重ねた高齢者たち、車椅子暮しの元刑事らが暮らす。だが穏やかな日々は、その冬いちばんの雪の日、密室で発見された射殺死体の出現によって破られる。十七歳の住み込みスタッフ・綾乃は、一癖も二癖もある住人のなかで隠された因縁を解き明かし、真相に迫ることができるのか!?
伝えるべきプロポーズの言葉は、悲鳴にかき消された。フラッシュモブの最中、ひとりの女性が刺し殺されたのだ。直後、犯人と思しき男は自殺。しかし、その一年後に男の冤罪を主張したのは、傲岸不遜な警視正・安孫子弘だった。丹念かつ大胆な捜査の果てに、真犯人は存在するのか!?破天荒な名探偵が、五つの不可能犯罪に挑む連作ミステリー第二弾!
残業をすればするほど取られる税金が増える「時間外労働税」が導入された。残業時間は劇的に減って、社会のありようは変わりつつあった。だが、もっと働かせたい企業も残業したい労働者も多く、サービス残業という「脱税」は絶えないのだが…。根っから真面目な残業税調査官と熱血労働基準監督官が働く人たちのために奮闘する、リアルすぎるお仕事ミステリー!
お滝は、女衒にたぶらかされ、京の島原で遊女となった。童女だったころのお滝に憧れていたと、訪ねて来た男。その本性は!?(「かわたろ」)河童、雪女、ウブメ。画家で俳人の与謝蕪村が見聞きした妖たちの、こころに響く物語九編。幽霊となった武家のご新造と出逢った植木職人の宗七。宗七がたぐり寄せた、切ない結末とは…。(第三回小説宝石新人賞受賞作「梅と鴬」を収録)
一人の資産家が絞殺されて一千万円が奪われた。彼は、その金で「荒城の月」の作曲家・滝廉太郎の幻の原曲楽譜を買うつもりだったらしい。偽物で釣られ、金を奪われて殺されたのか?十津川警部の元を訪れた男の娘は、自らの手で犯人を捜し出そうとしていた。さらに、引退した贋作者が刺殺されて…。十津川が美術界の深い闇に迫る長編ミステリー!
駆け込み寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に、寺を出て普通の暮らしに戻ったはずのお妙が火付けの罪で捕縛されたという報せが入る。お妙を救えなかったことに傷付き悩む橘屋の女主人お登勢はー。(「雨の萩」)お登勢をはじめ橘屋の用心棒・塙十四郎や慶光寺の主、寺役人にまで未曾有の危機が次々に訪れる。手に汗握る出色の四編を収録した、著者の代表シリーズ第十弾。
ファンクラブ会誌「三毛猫ホームズの事件簿」で、毎号書き下ろされているショートショート。「封印された贈りもの」「幽霊の忘れ物」「シンデレラの誤算」「テレビの中の恋人」など。会員から募集したタイトルを元に、創作された二十七の物語。ミステリーはもちろん、サスペンス、ファンタジー、ラブストーリー…。赤川ワールドの魅力が、ぎゅぎゅっと詰まった一冊。
裁判官だった高島裕子は、同僚たちとの集団破廉恥行為によって逮捕された。だが、取引を持ちかけられる。無罪放免の条件は!?なんと、参議院議員選挙への立候補!見事、当選した彼女たちにさらなる特命が待っていた。永田町特区警察の議員刑事。警察権の及ばない国会議事堂内、さらには永田町、霞が関の巨悪を炙り出すための秘密組織だ。その標的とは!?
江の島に「ねこもりさん」と呼ばれる女たちがいた。それは島の猫の世話をするという、とある食堂の隠れた仕事。 1912年のすみゑ、1967年の筆、1988年の溶子、そして2017年の麻布。一家の女たちが、ねこもりとして生きたそれぞれの人生は、新しい命を結び、未来を繋いでいく。あなたの血にもきっと流れている、百年の物語。 目には見えなくても、そうとは知らなくとも、私たちの中には確実に、母から、祖母から、脈々と引き継いだものが存在するのだ。それが今の自分を作っていると思うと、なんだか自分自身が愛おしくなってくる。--大矢博子(書評家)
「死ぬ日まで空を仰ぎ 一点の恥辱(はじ)なきことをーー」 清冽至純な詩篇を残し、戦争終結の半年前に日本の獄中にわずか27年の生涯を閉じた尹東柱。時局がら生前は1冊の詩集を出すこともかなわなかったが、関係者によって守りぬかれたハングル書きの詩稿は戦後になって出版され、韓国の国民的詩人となった。近年では日本でも毎年追悼行事が開かれるなど、日本人にも広く愛され親しまれている。 本書では、尹東柱の日本とのかかわりを中心に、日本留学中に治安維持法違反で逮捕・投獄され、1945年2月に“謎の獄死”をとげるまでの詩人の足跡を実証的に辿り、いくつかの知られざる事実を明らかにしつつ、また遺稿や蔵書を読み解き新たな視点からの作品解釈も試みながら、詩人の孤高の詩精神に改めて焦点を当て、その人、その文学の核心に迫る。 著者はNHKディレクター時代の1995年、「NHKスペシャル」で尹東柱のドキュメンタリー番組『空と風と星と詩ーー尹東柱・日本統治下の青春と死』を手がけ、以来二十余年にわたり尹東柱を独自に追い続けてきた。本書はその長年にわたる調査・研究の集大成。 はじめに 第1章 『病院』から『空と風と星と詩』へーー詩人誕生の秘蹟にあずかった日本語のメモ 第2章 「半韓」詩人がつづった「我が友」尹東柱(前編)--尹東柱と交際した日本詩人・上本正夫 第3章 「半韓」詩人がつづった「我が友」尹東柱(後編)--モダニズムとの邂逅と乖離 第4章 同志社の尹東柱。京都で何があったのか?--発見された生前最後の写真を手がかりに 第5章 福岡刑務所、最後の日々(前篇)--疑惑の死の真相を追って 第6章 福岡刑務所、最後の日々(後編)--永遠なる生命の詩人 第7章 そして詩と、本が残ったーー所蔵日本語書籍から見る尹東柱の詩精神 尹東柱略年譜 あとがき