2017年9月発売
伽羅に似た香りの鬢付け油が大人気の『錦屋』。その主・卯三郎は、何でも金の力で他人のものを奪い取ると評判だ。ある日、腹を真一文字に斬られた男の死体が見つかった。青柳剣一郎は、男が錦屋を探っていたと知り、卯三郎が本物の伽羅をつかっているのではと疑う。さらに、錦屋の用心棒が相次いで襲われ、大盗賊が伽羅を狙っていた話を耳にする。欲望渦巻く争いの行方は!?
老中田沼意次の窮地を救った与力葛篭桃之進は、なぜか左遷され道中手形を扱う閑職、西ノ丸留守居役へ。ある朝、骨壺を抱えた旗本の妻女八重が実家の大垣までの手形を求めてきた。手続きの不備を理由に追い返すと、なんと八重は桃之進との不義密通を夫に告白し、姿をくらました!濡れ衣を訴えつつ八重の突飛な行動を探る桃之進だが、狂犬の如き夫に命を狙われ…。
浪人の子市松が父の死後、瀬戸物商身延屋の小僧となって一月余り。ある日、人のいい身延屋の主夫婦は、見世の前で行き倒れた物乞い夫婦を手厚く保護した。その夜、何者かの影が番頭、手代を刺し殺し、いよいよ市松ら小僧の眠る部屋の障子に手をかける。慌てて押入に隠れた市松は、信じられない惨劇を目撃したー。人が“鬼”と化す不穏な江戸で、激闘が幕を開ける!
貧乏旗本の次男坊ながら「浮かれ鳶」と綽名される本多控次郎は、すこぶる男前の情に厚い剣客である。その控次郎がごろつきに絡まれた馬喰兄妹らを救い出す。兄妹は控次郎とも因縁ある旗本へ早駆けの駿馬を届ける途中だった。だが、その旗本が襲われ、代わって控次郎が出走。背後に賭け金を巡る、どす黒い陰謀が蠢いていた。控次郎の正義の剣が、巨大な悪を成敗す!
両親の死後、女手ひとつで妹弟を育てた二十五歳のお吉は、とびきりの甘味好き。働いていた菓子処が暖簾を下ろすと、ひょんなことから、読売書き見習いに。人気者のお気に入りの菓子を紹介するため、歌舞伎役者の市川團十郎と尾上菊五郎に初取材すると、團十郎の亡き父との思い出の一品を捜すことにー。健気なお吉とほっこり甘い菓子が、心をときほぐす人情帖開幕。
永禄八年、上杉輝虎(謙信)が義を掲げ、下総国臼井城に侵攻を開始した。総勢一万五千といわれる上杉軍に対し、臼井の兵は二千ほど。後ろ盾となる北条家からの援軍は、わずか二百五十余であった。抗戦か降伏か、紛糾する城内をまとめるため、北条の武将松田孫太郎は道端の易者を軍師に仕立てた。白井浄三である。ところが、浄三は想像を絶する奇策を次々と画策し…。
あとどのくらい私たちはこうやって肌を合わせられるのですか。世間から隔絶された場所で生かされている美しい少女たち。快楽に溺れながらも、真実の情愛を求める彼女たちに救いはあるのか?儚くも美しい恋愛小説集。
小説を愛してやまない文芸編集者の澤野逸郎は、文芸誌“小説○○”の編集長になった。妻と双子の娘に囲まれ、幸せの絶頂かと思われたが、気づけば編集部には鬱が蔓延、作家とのトラブルも続き、やがて大量の薬に溺れるようになる。時を同じくして、部下である新人編集者の豊嶋と不倫関係が始まった。薬と肉欲にまみれた逸郎を、不幸の連鎖が襲う。その行き着く先はー。
彼には野望があった。それは旧日本軍が保有した連合艦隊すべてのプラモデルを作り上げること。決して捜査の先陣を切ったり、本部の方針に逆らったりすることじゃない。なのに、事件解決の手がかりが勝手に降ってきて…。田中署長に、平穏な日々はいつ訪れる!?一読、にやり。軽快な筆致の傑作ユーモア警察小説。
通称・包丁部、いわゆる料理部は運動部が盛んな男子校において弱小この上ない。存続の危機に直面する中、抜群の料理の腕を誇る部長・翔平と、イケメンで話術に長ける副部長・颯太に挟まれて、元陸上部で今や包丁部エースの大地がいよいよ新入生勧誘に乗り出す。がっつり飯と伝統の豚汁に魅せられた男子高校生が繰り広げる垂涎必至のストーリー。
寂れた団地で人々の心の隙間を埋めるように広がる新宗教“ゆかり”。大企業スザクに勤める六三志は、自社の顧客を守るため、教団潰しを命じられた。ところが若き教祖・禅祐は、宗教を用いて金儲けをたくらむ頭脳派。信者の前で正体を暴こうとする六三志の告発をかわしてしまう。教団の存亡を賭け、どちらが住民の支持を得られるのか、激しい心理戦が始まった!気鋭の放つ傑作長編ミステリー。
高校を卒業した葵は、舞事、念願の京都府立大学に合格した。清貴も京大大学院を卒業し、ようやく2人の仲も縮まるかも…と思っていた矢先、なんとオーナーの一言で、社会勉強のため清貴は京都の街の外に修業に行くことになった。最初の修業先は、八幡市にある松花堂美術館。大学が休みの日、葵は同級生の香織と一緒に、こっそり清貴の様子を見に行くが、そこで思わぬ事件が3人を待っていた!?-大ヒット・キャラクター小説、第8弾!
『美女と野獣』のような恋を夢見る女子高生ひなたは、クラスメイトの塚田くんに絶賛片想い中。ある日、カラスに襲われていた子猫を助けるが、その正体は塚田くんの親友で失踪していた学校一のイケメン・祐星だった!魔女によって猫にされた祐星が人間に戻るためには、愛する人とのキスが必要だという。そんな彼と同居するはめになったひなたにも、次第に魔女の手が迫り…!現代版『美女と野獣』の物語。
大手事務所から独立し、芸能事務所を立ち上げた佐々木賢治は、唯一の所属タレント・前川奈央を売り出すべく、六本木を夜な夜な歩き回る毎日。狙うは日本音楽大賞の新人賞だ。奈央は大手化粧品のキャンペーンガールに選ばれるなど、順調に階段を上っていったが、ライバルの芸能事務所から思わぬスキャンダルを仕掛けられてしまう。己の才覚と下半身を武器に、芸能界をのし上がる男を描く、書き下ろしショービズエロス。
早瀬美枝が週末の夜に思いがけず再会したのは、7年前の教え子だった。当時の忌まわしいできごとは、美枝の中では甘美な記憶になって残っていたのだが(「指の記憶」)。妻の性生活への不満をその女友達から打ち明けられた高倉は、真実を探ることに(「イケない女」)。そのほか、6年前に別れた元妻との不思議な逢瀬など、6編の艶めく作品を収録した珠玉の傑作官能短編集。
吉田伊知郎の唯一の慰めは、勤め帰りの至福の一杯。長年連れ添った妻に去られたやるせない記憶は、いつしか彼を大人の男に成長させていた。今宵もひとり酒を楽しむ伊知郎の前に、悩める美女が現れる。盃を重ね、飲むほどに酔うほどに心と体を開いていく二人。切なくも淫らな夜が更けてゆくー。人生のほろ苦さ、男女の愛しさを情緒豊かに描く“遅咲き大型新人”、渾身のデビュー!