2018年12月18日発売
本誌『幽』も、2004年の創刊から、今回で30号を数えることになりました。 思い返せば30年前の平成元年(1989)前後は、日本の怪談文芸やホラーにとって、大きな節目の時期でありました。 昭和63年(1988)には、本格的な国産モダンホラー/怪談文芸にいち早く先鞭をつけた小池真理子の長篇『墓地を見おろす家』が、平成元年(1989)には80年代伝奇バイオレンス興隆の双璧となった両雄の大作──菊地秀行『夜叉姫伝』と夢枕獏『上弦の月を喰べる獅子』が、平成2年(1990)には、稲川淳二『稲川淳二のここがコワインですよ』、木原浩勝&中山市朗『新・耳・袋』、常光徹『学校の怪談』という90年代以降の怪談実話シーンの方向性を決定づけることになる3冊が、そして平成3年(1991)には、90年代の日本ホラー興隆の呼び水となった鈴木光司『リング』、史上はじめてホラーで直木賞を受賞した高橋克彦『緋い記憶』、学術書でありながらその後の怪談文芸やホラー小説にも大きな影響を与えた高田衛『江戸の悪霊祓い師』……まさに、現代日本の怪談文芸は平成とともに始まった! と申しあげても過言ではないでしょう。 あれから30年──平成16年(2004)には史上初の怪談専門誌となった本誌が呱々の声をあげるなど、日本の怪談シーンは右肩上がりに、多様な展開を示して現在に至ります。 いま、平成が終わりを告げ、新たな時代が幕を開けようとするこの時期に、平成という時代に生まれた怪談小説・怪談実話・怪談漫画の全貌を展望する特集を企画した次第です。 『幽』編集顧問 東 雅夫
「自分が死んだらこの手紙を投函してほしい」と中学時代の親友・響子に託された「おたより庵」の店主・詩穂。やがて、彼女の死を知った詩穂は手紙を開封し、過去にまつわる事件に巻き込まれてゆく。町屋の並ぶ、どこか懐かしい町で「あの日の約束」が再び動き出す。店を訪れる者と、想いを伝えたい大切な誰かを繋ぐ、手紙ミステリー。著者初の単行本が、待望の文庫化!!
後宮で生きながら帝のお渡りがなく、また、けして帝にひざまずくことのない特別な妃・烏妃。当代の烏妃として生きる寿雪は、先代の言いつけに背き、侍女を傍に置いたことに深く戸惑っていた。ある夜、後宮で起きた凄惨な事件は、寿雪が知る由もなかった驚愕の真実をもたらす、がー。烏妃をしばる烏漣娘娘とは何か?烏漣娘娘がおそれる「梟」とは一体誰なのか?
リチャードの母カトリーヌが正義に会いたがっているという。謎の少女オクタヴィアの思惑を案じ、正義はリチャードと共に、カトリーヌが夏のバカンスで滞在している南仏プロヴァンスの屋敷を訪ねる。到着したリチャードと正義に、カトリーヌは敷地に隠された三十二個の石を探し出すゲームをするよう要請してきて…?大人気ジュエルミステリー、第8弾!
いやなことがあっても、お風呂に入ると癒されるー。そんな思いで一人、温泉旅行をしていた凛子。ところが目が覚めると不思議な温泉街で狗神と婚礼をあげたことになっていた!元の世界に戻るためには手切れ金を貯めて離縁しなければならないと言われ、夫である狗神が営む湯屋で下働きをすることに。様々なあやかしが訪れる湯屋・高天原で凛子が出会ったのは…?
青井東仙は十一歳のとき貧しさから逃れるように家を出て、江戸で偶然出会った絵師・松山翠月に才能を見出され、弟子となった。しかし、夜具も食事も着物も与えられ満たされた暮らしに次第に創作意欲をなくして破門されてしまうー。才能に溺れ、落ちぶれた絵師が再起をかける、大江戸人情譚!闇と現が隣り合わせの江戸で、東仙は再び夢を描く…。新・時代小説!新・時代小説2018年ノベル大賞受賞作!
人生猫あればラクあり!? 人気作家陣が描く、どこかにあるかもしれない猫と誰かの日々を5編収録! 猫専用の洋裁店を訪ねてくる猫たちの交流と、それぞれが選ぶ生き方(かたやま和華「猫町洋裁店」)。 「NO」と言えない地味な女性が出会った、ある小料理屋の『見えるひとにしか見えない』看板猫(水島忍「猫又の小料理屋さん」)。 イケメンで有能な同期から、海外出張の間、猫の世話をしてほしいと頼まれたOL(毛利志生子「七匹もいる!」)。 愛猫家の店長が営むカフェに通う、お嬢様が初めてのバイトに挑戦した結果…?(秋杜フユ「Cafeトラ猫のマスターは猫を愛しすぎている」)。 元捨て猫と、彼女にまつわる「ありがとう」の物語(前田珠子「ありがとう」)。
塾講師の仕事も婚活もドン詰まりな春見順子(31歳)。親の期待に応えようとガリ勉づくしの青春時代を送り、東大受験をしたが失敗し、その後もパッとしない生活を送ってきた。そんな彼女の前にピンクの頭をした不良高校生・由利匡平が突如現れ「俺を、東大に入れてくんない?」と言ってきたその日から、順子の人生が大激変!?ドラマ化決定!大人気コミックを小説で!
日本新報記者・南康祐に、大手IT企業が不正献金をしているという政治家リストがメールで届く。真実なら政界を揺るがす大事件だが、送信者に心当たりがない。甲府支局時代に誤報を飛ばし、会社を窮地に陥れた過去がある身として、慎重にならざるを得ない。だが、本社に戻った今、特ダネを物にしたい思いは募り…。一通のメールから政治の闇を炙り出して行く記者が掴んだ真相とは!傑作事件小説。
会社員の小柴は、毎年2月に釧路へ旅行し、行方不明の恋人ゆみを探している。今年も『SL冬の湿原号』に乗り、乗客を丹念に撮影。レンタカーに戻ると見知らぬ女の死体があり、容疑がかかる。7年前ゆみの失踪時も疑われた過去があった。小柴と同級生の十津川警部は、彼の写真を手がかりに捜査を始め、3Dカメラ開発が絡んでいると…。人気のSLが走る釧網本線を舞台に描く長編旅情ミステリー。
幕末、文久元年の大坂。弥吉は河内から、緒方洪庵の適塾を目指し市中に出る。尊王攘夷思想に染まった彼は村の仲間から洪庵の暗殺を任じられていた。しかし、潜入した適塾で、自らを顧みず患者のために尽くす洪庵に接するうち、弥吉の心に迷いが生じる。故郷の仲間の無謀な決起を知り、弥吉がとった行動は。動乱の世に懊悩しつつも自らの信じる道を歩まんとする若者を活写した、鮮烈なる時代小説。
「同世代と会うと、つい病気自慢大会になっちゃう」そんなお父さん。「風邪くらいで休めないのは私も同じよ!」とお母さん。「眠剤効かねえマジ病む」と娘さん。それぞれ事情もおありでしょうが、皆さんいったん落ち着いて、この本読んでみて。元医師による本格的な医療ものから、短編の名手による不条理ものまで、本当に面白いですから。えっ症状は良くならない?それは病院に行ってください。
オレが通う高校は、いわゆる「底辺校」だ。偏差値は下位だけど、女生徒のスカート丈の短さだけが最上位にランクしている。平凡なオレは、ひょんなことから番長へとまつりあげられ、国籍不明の友人2人が常に脇を固め、同級生に恐れられていた。ある日、初恋の純子が慶應大学を目指すという話を耳にし、甘いキャンパスライフを夢見て、オレの高校生活は一変!笑えて、最後に熱い涙がこみ上げてくる痛快青春小説。
東京浅草。診療所の医師・真野麟太郎は、大先生と呼ばれ近所の人々に慕われている。ある日、手首を切った女子高生・麻世が治療にやってくる。麻世の心の傷を知った麟太郎は、一緒に暮らすことを提案。麻世は、家事をすることを条件に同居人になるが…。虐待、認知症、癌など、診療所に持ち込まれる病気や患者の問題に、真摯に向き合う医師と型破りな女子高生が織りなす切なくて温かい下町物語。
健全な国土のため、地縛霊を説得して立ち退かせるのが専門の幽冥推進課で、臨時職員として働く夕霞。過疎の村に一人残る老人が抱える未練や、就活に失敗した女子学生にとり憑いた恐ろしい死神など、難題が続く業務に体当たりで取り組む夕霞だが、相棒の火車先輩が妖怪としての力を失い、消滅の危機が迫って!?この国に暮らす人々が遺した想いを描く、笑えて泣ける心霊お仕事コメディ第3弾!
私立金田大学は、留年も中退もお咎めなしのおおらかな大学だ。そんな大学に通う社本勇の所属サークルは、メンバーがやめてしまうことで有名だった。そして、中退したクセの強いOBたちが部室を訪れ、お酒片手に語りまくる。そこに寝泊まりする勇は常に睡眠不足。勇がサークルで出会った後輩との初恋に浮かれる裏で、中退者たちはある画策をするのだがー。ラストまで目が離せないブラック“サークル”コメディ!
25年前に起きたホテル爆破事件。その救出劇で一躍、国民的な英雄となった“少佐”を、取材することになったテレビ局リポーターのケーラ。彼女には、3年前に隠遁した彼を公衆の面前に引き出す、ある秘密があった。晴れて取材は成功。しかし、その直後、二人は銃撃される。少佐の息子、ジョンは拉致するようにしてケーラを保護し、銃撃事件の真相を追おうとするが…。興奮度MAXのサスペンス!
ジョバンニの旅は終わってもカムパネルラの旅は続く…。あの「銀河鉄道の夜」を今夜、カムパネルラが語りなおします。長野まゆみデビュー30年記念小説。